待望のゴールはチームを救う一発だった。サンフレッチェ広島は28日、明治安田J1リーグ第10節で川崎フロンターレをホームに迎えて2-2で引き分けた。
FW加藤陸次樹はフル出場で同点ゴールをマーク。今シーズン初得点を決めてチームの無敗に貢献した。

 1点を追う75分、MF満田誠がペナルティエリア前に持ち上がってクロスを入れる。ふわりとしたボールに目の前のFWピエロス・ソティリウも反応していたが、加藤は「ピエロス選手が触るかなと思ったけど、触らないことに賭けて走り込んだ」と自分の直感を信じた。

 ボールはソティリウを超え、待ち構えていた加藤が左足で押し込んでゴールネットを揺らした。その瞬間、待ちに待った背番号51の今季初ゴールにホームサポーターの歓喜が爆発した。
だが、本人は喜びもほどほどにすぐ自陣へ戻り、主審のゴール確認を待っている間も、「勝ちに行こう」と視線はすでに逆転を目指していた。

 今季はJ1開幕から9試合連続でスタメン出場し、どの試合も80分以上プレーしてきたが、不発続きで苦しんでいた。それでも、「マジで吹っ切れていた」と加藤はチームの勝利のために戦う決心だった。

「点が取れないなら、もうチームのためにできることをやるしかないし、その中で点はそのうち取れるだろうと思っていた。ホームだったし、勝利がみんなのためになるなと思ったので、チームのためにできることを意識していた」

 試合を通じて前線で体を張り、走り続け、攻撃をつなぎ、サイドでチャンスメイクし、攻守にわたってチームのために戦った。すると、逆転を許して苦しい展開となった直後に同点弾。
劇的なタイミングでの今季初ゴールでチームを救った。試合後の加藤は、「ホッとした」と初得点に安堵した様子だった。

「ゴールの瞬間は落ち着いていたので、自分らしくない得点だった。いつもなら初ゴールは思い切って振り抜いて決める感じだけど、今日は落ち着いてゴールを決められた」と得点シーンを振り返り、「広島のサッカーは失点しても一人ひとりがビビらずに前にどんどんボールを運ぶし、その(失点後の)瞬間にチャンスが来たので、決めきれて良かった」と胸を張った。

 ミヒャエル・スキッベ監督も試合後の会見で「ここまで非常に苦労した部分があったので、これで少し肩の荷が下りたと思う。ゴールを量産する選手なので、これからはどんどんやってくれると思う」と話し、ストライカーのさらなる活躍に期待を寄せている。


 広島はリーグ戦開幕10試合無敗を維持したものの、3試合連続ドロー。チャンスを多く作れている中で勝ち切れない試合が多く、加藤は「広島のサッカーはチャンスがめちゃくちゃ多いので、その分決められなかった時に気持ち的にも体力的にも代償が大きい。今日も(守備に)戻りきれない部分が多くて、危ないシーンがたくさんあった。でも、決めきれれば、勝てると思うので、そこにこだわらないといけない」と得点への意欲を燃やす。

 次節は5月3日、アウェイでのアルビレックス新潟戦。ゴール連発と4試合ぶりの勝利を誓う加藤は、「(初ゴールを決めて)かなり安心しているけど、勝てなかったので。
チームとしていい状況ではないけど、次勝てば一気にいい状況に持っていけると思う」と話し、次はチームを勝利に導く得点を狙う。

取材・文=湊昂大