エスパニョールからバルセロナへの“禁断の移籍”は、31年ぶりとなる。
そんな同選手は、“ペリコ(ファンの愛称)”が願いを託す次世代の希望であり、すでに英雄的な存在でもあった。先月24日の最終節ラス・パルマス戦に勝って残留を決めた(引き分け以下で降格だった)わけだが、試合後には本拠地『RCDEスタジアム』に集まったサポーターがピッチになだれ込むと、ジョアン・ガルシアは担がれ崇められた。それは、この守護神がいなければ降格していたことを、誰もが理解していたからに違いない。
だからこそ、同じ街の“永遠の宿敵”への移籍、それもクラブのフィロソフィーのなかで育まれたカンテラーノによるものとなれば、当然のように、“愛”は“憎しみ”へと変貌を遂げる。そのことは、選手本人も重々承知しているようで、自身の公式SNSに公開したメッセージにて「理解されるのは難しいことを知っている」とし、「それを求めているわけでもない」などと語っている。
「15歳から僕の家だったクラブと道を分つときが来た。この間、僕は毎日フットボール選手として、人間として、常に謙虚さと努力を忘れず、エスパニョールのゴールを守ることの誇りを胸に、日々成長しようと努めてきた。このクラブのためにすべてを捧げ、このエンブレムを最大限の献身で守り、このユニフォームを着る意味に恥じないようにね」
「この決断が、みんなに理解されるのは難しいことを知っている。
その上で、ジョアン・ガルシアは「フットボール以外にも、たくさんのものを持って出発する。友情、価値観、学び、そして忘れられない思い出…。(昇格POを制した昨年の)6月23日のあの夜のような、生涯忘れることのない思い出をね」としつつ、エスパニョールで過ごした日々において、常に支えてくれたペリコに対する感謝を口にした。
「そして何よりも、ファンのみんなに感謝している。最初の日から、たくさんの愛情を受け取ってきた。最も困難なときは、みんなのサポートが僕を前へと進ませてくれた。みんなのおかげで、僕は大きな何かの一部になったと感じることができた」
「感謝の気持ちで胸をいっぱいにして、この旅を終えようと思う。素晴らしい瞬間もあれば、辛い瞬間もあったけど、それらすべてが僕を成長させてくれた。僕は持てる力のすべてを尽くして、このユニフォームを守り抜いた。それは永遠に、僕の誇りだ。これから新たな挑戦が始まる。
来シーズンに『RCDEスタジアム』で浴びるのは、愛の声援ではなく、憎しみのブーイングとなるだろう。それでも、すべてを覚悟した上でバルセロナへと行くことを決断したジョアン・ガルシアは、キャリアの第2章をどのように描いていくのだろうか。
なお、昨夏までエスパニョールでチームメイトだったFWケイタ・バルデ(現:モンツァ)は、ポッドキャスト『El After de Post United』にて、「数日前、カタルーニャで彼と会った。幸運を願っている」とした上で、「バルセロナからオファーがあれば、当然迷うだろう。外から話すのは簡単だけど、人生には一度しか来ない列車もあるんだ」と強調している。
【感謝】退団に際してコメントを残したジョアン・ガルシア