多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。だが、業務内容や職場環境など、人により理由はさまざまだが、せっかく就職したにもかかわらず、すぐに退職してしまう人もいる。
新入社員が入社して1ヵ月が経過。研修期間が終わり、徐々に会社の雰囲気にも慣れ、「社員」らしい佇まいとなってくる頃だ。
GW明けに辞めた新入社員たち
川上純さん(仮名・40代)は、飲食関連の会社で採用担当をしている。飲食業界では、入社してからのギャップが大きくすぐに辞めてしまう人が多いと話す。「基本的に土日祝日は休めないこと、出勤時間が遅いぶんだけ退勤時間も遅くなることを、面接時には必ず伝えています」
新入社員にとって、学生時代の友人たちと同じタイミングで休めないことが、「休みが少ないこと」と錯覚してしまうケースがあるからだという。そのため、川上さんは、休日と勤務時間については、十分に理解してもらうように心がけている。
学生時代の友だちと休みが異なるのがしんどい
しかし、なかには納得しない新入社員もいるそうだ。「新入社員Aは、4月中旬頃から『大学時代の友だちと休みが異なるのがしんどい』と不満を漏らしていました。すっかりやる気を失っているように見えました」
GWの最終日、川上さんはAに閉店作業後のゴミ出しをお願いした。
ゴミ出しに行ったまま10分以上戻ってこない
結局、Aはどこにもおらず、従業員全員で店の周りを探すことになったという。川上さんは、「もしや!」と胸騒ぎを感じ、更衣室に向かった。すると……。
「Aのロッカーには、先ほどまで着ていた制服がぐちゃぐちゃに入れられており、荷物もありませんでした」
店長や人事担当からAに連絡をすると、「休みが取れなくてしんどいからこのまま退職したい」と申し出があり、店から消えたまま翌日付けで退職となった。
ゴミ出しに行ったまま消えた新入社員がいたことは、何年経っても語り草になっている。
“イタリア11日間の旅”で恋に落ち、GW後に退職
「Bは、ある旅行会社が企画した“イタリア11日間の旅”というプランに、一人で参加していました。GWに旅行へ行くことは自由ですので、楽しんできてという気持ちでした。しかし、Bは旅行から帰ってきた直後に、突如退職届を出したんです」
あまりにも突然のことで驚いたと話す戸田さん。Bに辞めたい理由を問うと……。
「イタリア旅行で知り合った参加者と意気投合し、恋仲になったそうなんです。
どうやらBの婚約者の親が有力者だったそうだ。そのため、婿養子に入ることになったと戸田さんは説明をうけた。
会社よりも“有力家の婿”という将来性に賭けた新入社員
上司や人事部の課長からは、「Bは会社から期待されている。将来性を捨てなくても……」と言われたそうだが、「婿という将来性に賭けました」と答えた。戸田さんは、開いた口がふさがらなかったと振り返る。
「何年後かに人づてで聞いたのですが、Bは親族、親戚、社内、取引先、友人などの関係先や周囲の評判も良く、彼を悪く言う人もなく、公私ともに順風満帆ということです」
退職のタイミングの善し悪しはともかく、B本人が幸せでホッとしていると話す戸田さん。「他人の幸せは、私の幸せですから」と締めくくった。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。