そこで、すこし日本にゆかりのある外国人に「日本の印象」を聞くことで、我々が忘れかけていた日本の素晴らしさに改めて気づくことができるかもしれません。
カナダ・モントリオール出身のダン・メイアー(55歳)と妻である筆者が、長年住んでいたカナダ・バンクーバーから海を越えて、千葉県に空き家を購入して移住したのは2024年4月のこと。筆者が日本へ帰省するたび一緒にこの国を訪れたダンは、日増しに「日本に住みたい!」という思いが強くなったようです。
ところが、いざ生活するとなると、日々の光景が旅行とは違った視点で見えてくるようになります。たとえば、スーパーでの買い物や車で移動するときなども、私たち日本人にとっては当たり前のことが、彼にとってはすごく新鮮だったり、不思議に感じたりするようで、ほぼ毎日のように筆者は質問攻めに遭うことに……。
スーパーで聞こえる“叫び声”の正体とは?

一緒に叫び声のする“現場”へと向かうと、そこには商品棚に商品を並べながら「いらっしゃいませーーっ!」と元気よく仕事をこなす若い男性の店員さんがいたのです。仕事熱心なその店員さんの声は、まるでカンフー映画の武闘シーンの「アチャー!」という叫び声を彷彿させるほど甲高く、さらに商品棚を見つめたまま叫ぶ姿はダンの目に奇妙に映ったようです。
確かにカナダのスーパーマーケットでは「Hi,(こんにちは)」と声をかけられることはあっても商品棚に商品を陳列しながら叫ぶようなことはなかったような……。
“憧れ”の満員電車で大喜び

「うわっ、まずい時間に来てしまった」
そう思った筆者ですが、ダンは違ったようです。SNSで見た光景がまさに自分の前で繰り広げられていることに興奮状態。電車が到着した瞬間、ホームに並んでいた人たちは一気に電車に乗り込み、その流れに乗って私たちも乗車。
おしくらまんじゅう状態の車内で、さすがにダンもさぞ不快に感じているだろうと思いきや、「ねえ、僕たちオイルサーディンの缶詰みたいだね(笑)」と満面の笑顔を見せる始末。また、身長190センチのダンはぎゅうぎゅう詰めの車内でも周りの人たちより頭がひとつ抜きん出ていたことで、あまり苦にならなかったようです。
日本人の礼儀正しさに感動

女の子は私たちの車に気づいて一度立ち止まったものの、ダンが車を一時停止させて女の子を先に行かせるために手を横に振りながら「行っていいよ」と合図。すると女の子は足早に走り渡ると、くるっとこちらを向いて丁寧にお辞儀をしてくれたのです。女の子の礼儀正しい姿にダンはかなりハートを鷲掴みされ、胸キュン状態だったようです。
日本では、ほとんどの家庭で子供の頃から他人、または物への感謝を忘れないよう教えられてきます。同じようなシーンがカナダだと、「サンキュー」の合図で手を挙げるか、または無視してそのまま渡る。
日本の何が好きなの?

「だってみんな礼儀正しいし優しいんだよ。それに街も清潔で安全だし富士山や江ノ島とか行ったけど、日本にはそれ以外にもとっても美しい景色がたくさんあるでしょ。それになんと言っても食べ物の味と質が飛び抜けて素晴らしいんだ。日本に住めてうれしく思うよ」
<取材・文/Masumi Maher(海外書き人クラブ)>
【Masumi Maher(海外書き人クラブ)】
2024年に長年住んでいたカナダ・バンクーバーを後にして夫婦で日本に移住。現在、千葉県で購入した築古の空き家を夫婦でリフォームしながら暮らす日々。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員