東京の上野でスナックを営む大谷麻稀です。会社員を辞め、未経験の水商売で独立してから早2年。
日本屈指の飲み屋街で、昼も夜もさまざまな人間模様を見てきた私が、今夜のお酒がちょっぴり美味しくなるコラムをお届けします。
「自分は飲み慣れてる良客だ」

『日刊SPA!』で私や他のお姉様方のコラムを読み続け、マナーに配慮した飲み方を実践してきた皆さまは、きっとスマートに飲まれていることでしょう。「俺は客だぞ!」と偉ぶることなく、お店や他のお客様への気遣いを忘れずに飲まれていること、素晴らしい! 今回は、さらに好かれるために覚えておいてほしい“意外なポイント”をお伝えします。

「カラオケのデュエット」は違法? スナックで“良かれと思って...の画像はこちら >>

①カラオケデュエット

「カラオケ一緒に歌おうよ」

そう言ってキャストにマイクを向けるお客様は珍しくありません。実はこれ、お店によっては違法なんです。スタッフがお客さまのカラオケに対して合いの手やデュエットをするのは、風営法上の「接待行為」であり、風俗営業の許可が必要になります。

カウンター越しの接客で、深夜午前0時(一部の地域では午前1時)以降も営業しているガールズバーやカウンター型のスナック等は、風俗営業に該当しません。

「自分たちだけでなく、お店の女の子も楽しんで欲しい」

そんな素敵な気持ちから言ってくださっているのはわかりますが、違法行為を勧めるのは控えましょう。

②キープボトルを飲ませる

「一緒に乾杯していいですか?」

夜のお店ではよく聞くセリフ。どうせおねだりされるならと、先回りして「君もこのボトル一緒に飲む?」……ダメです!

お客様がキープボトルを注文してくださると、女の子にバックが入るお店もあります。クラブやラウンジ、それと指名で入っている場合のキャバクラなどです。

それらのお店では、一緒にボトルを減らすことで女の子にも利がありますが、基本は「女の子に飲ませる」と言うのは、キープボトルではなく1杯毎のドリンクを指します。こちらは確実に女の子のインセンティブになるので、感謝されるでしょう。

③タクシーで家まで送る

アフターの帰り、始発までは時間がある。そんな時、「遅くまで付き合ってもらったんだから、責任持って帰さなきゃ」……その気遣いはありがたい!

ですが、「家まで送るよ」このセリフが出ると、女の子のテンションはダダ下がり、警戒心が芽生えます。
せっかく楽しかったアフターであっても、この後タクシーの中で口説かれたらどうしよう……。家バレしたらどうしよう……。

容姿端麗であったり社交的な女性ほど、しつこく言い寄られて苦労した経験があります。また、その心配はなかったとしても、本来であれば、やっと仕事が終わり、ぼーっとSNSを眺める時間に使えるはずの帰路の時間も、「接客」の延長。つまり残業となり、完全にオフモードになることはないでしょう。

よほど仲良くて、女の子側から「家バレしても気にしない!」と言ってくれていない限り、タクシー代を渡して現地解散、がスマートで無難だと思います。

④“その場で食べなきゃ行けない系”の差し入れ

本来喜ばれるはずの差し入れでも、渡し方やモノによっては歓迎してもらえないこともあります。X(旧Twitter)で、「客 差し入れ」と検索してみてください。「ダイエットしてるって言ってるのに、何考えてるんだ」、「店のスタッフ(黒服)に横流しした」という趣旨のポストが沢山ヒットします。

そうです。女の子の全員が全員、甘い物を好きなわけではないし、予定外のカロリー摂取をしたくないという場合も往々にしてあります。「もらってる立場で偉そうに!」そう思うかもしれませんが、ただプレゼントをいただいているだけでなく、お客様は、「その場で美味しそうに食べて、ありがたがってくれる」という見返りも、求めていますよね?

求めていなかったとしても、そうしてくれる方が、プレゼントした側としては嬉しいでしょう。
数百円のコンビニスイーツでその真意を感じるから、女の子からすると「ありがた迷惑」に捉えられるわけです。

とはいっても、嬉しい差し入れもあります。それは、ヘルシーなもの、持って帰れるもの、他のお客様やキャストに分けられるもの。反対に、カロリーが高い、その場で食べることを求められている(出来立てで食べた方が良いもの)、他の人とシェアしづらいものは歓迎されづらいです。

いいですか、夜のお店の女の子への差し入れは、コンビニスイーツはリスキーです。何が適切か分からなかったら、インスタント味噌汁や、トクホのお茶の方が確実にありがたがられます。

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こういう記事を書くと、「水商売の女のくせに要求が多い」と、夜のお店に縁がなさそうなおじさま達からお叱りを受けるのですが、どうせ同じお金を使うのであれば、迷惑がられるよりも、好かれて感謝された方がおトクなものです。この記事を最後まで読み、実践してくださった皆さまは、きっと今夜も楽しいスナックライフを送れるでしょう。

<TEXT/大谷麻稀(まきぱん)>

【大谷麻稀(まきぱん)】
上野にてスナックを経営する28歳。大好きなお酒にコミットするべく鉄道会社を退職し、ほぼ未経験の世界へ転身。TOEIC910取得。趣味は海外一人旅。

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