「旦那の実家に帰りたくない……」
 そんな妻たちの悲痛な思いを、世の旦那様たちはどれくらい理解しているのだろうか。夫の両親を始めとした家族との相性が悪いという声は昔から聞かれるのだが、意外と苦痛に感じることの一つに義母からの“面倒なプレゼント”があるという。


趣味が合わない義母からの“面倒なプレゼント”

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 都内に住む岩本久美子さん(仮名・39歳)は、帰省のたびに義母からバッグや洋服をプレゼントされ、辟易するという。

「最初に断っておきますが、お義母さんとはすごく仲がいいんです。すごく先進的な考えを持っていて、子育てや仕事の話をしていると思わずハッとさせられることもあるくらい。でも、1つだけ合わないことがあって……。それが洋服の趣味なんです」

 岩本さんは外資系のコンサルで働いており、仕事ではブラウスにジャケットといった服装が多いそうだ。だが、普段着はノースフェイスなどのアウトドア系ファッションを好んで着ているという。

「義母の好みはいわゆる“わかりやすいブランド”なんですよ。でっかいロゴの入ったシャネルとか大好きで、バッグも一目見てどのブランドかわかるようなものばかり。だから、ファッションは私とはまるで正反対なんです。でも、実家に行くたびに着古したり使わなくなった洋服やバッグを『これ、よければ使って』ってプレゼントされまして……。でも、仕事でそんなシャネルのロゴの入った服着てクライアントのとこなんて行けないし、普段着はアウトドアやスポーツ系の服装が好きなので、正直もらっても困るんです」

ブランド品は数十万円もするが…

 もちろん義母のブランド品はすべてホンモノ。それら“プレゼント”は安くても数万円。中には数十万円のものも珍しくない。

「今年の年末はシャネルのマトラッセを持ってきて、『これ、もう使わないから使って』って。
シャネルのマトラッセって一番小さいものでも90万円くらいしますからね。さすがに『そんな高価なものはさすがにいただけません。本当にごめんなさい』って震えながら断ったんです」

 だが、岩本さんは断り切れずに数多くのブランド品を義母からプレゼントされており、自宅の押し入れは埋まりつつあるという。

「ほとほと困っています。着たくないなら売っちゃえば?ってよく言われるんですが、忘れた頃に義母から『この前あげたジャケット、着てる?』ってチェックのLINEが来るんです。ジャケットやバッグは娘や夫の誕生日にちょっとイイお店にごはんを食べに行くときに使って、まるでアリバイ写真のような写真を送るようにしています」

もっとも困るプレゼントはスカーフ

 こうしたプレゼントの中で、もっとも困るものがあると岩本さんは苦笑する。

「スカーフですね。義母はエルメスなどのブランド物のスカーフを何十枚も持っていて、それを帰省のたびに私にプレゼントしてきます。でも、スカーフなんて今どきの30~40代の女性って使わないじゃないですか。ハンカチにするわけにもいかないし……」

 このプレゼント攻勢については旦那も呆れ顔だ。何度か旦那から義母に「もう置き場もないし、久美子も好きな服を買ってるから」と説得したのだが、義母は一向に聞く耳を持たないという。

「同じ趣味の人だったらすごく嬉しいんでしょうけど、趣味異なる服やバッグってもらっても本当に困るんですよね。売ろうにも売れないし……。
旦那からは『本当に置き場がなくなったらオレが売る』と言われていますが、帰省のたびに増えていくハイブランドの数々に頭が痛いです」

 押し入れの中には百数十万円にも上る義母からのプレゼントが眠っているという岩本さん。義母は御年65歳でまだまだ元気にブランド物を買い漁っているという。岩本さんの悩みはしばらく続きそうだ。

食べ物の趣味が合わないツラさ

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 続いて話を聞いた三田美樹さん(仮名・43歳)は義母と食の好みがまったく合わず苦労しているという。

「私はお菓子やスイーツが全般的に苦手というか興味がないんです。よく友達なんかがインスタでわざわざ鎌倉とかまでスイーツを食べに行ったのをアップしていたり、有名な和菓子を1時間並んで買ったなんて話してきても、『あ、そうなのね……』って思うくらい。甘い物よりはどちらかというとしょっぱい派で、スイーツよりも煎餅のほうが好きなくらいです」

 しかし義母は、ことあるごとに有名なお店や入手困難なスイーツを買って、三田さんたち家族に振る舞うという。

「年末は31日に帰省して三が日を過ごすのが例年の慣わしなんですが、その期間は毎日、日替わりで義母のセレクトするお菓子が出てくるんです。これが本当にキツい。大晦日に実家に着くと、まずはおやつ、それから夕飯を食べるとデザート。元旦は雑煮を食べた後に茶菓子が出てきて、初詣から帰ってくると必ずおやつにおしるこを作ってくれます。こんな調子で、実家にいる間はずっと義母セレクトの甘いお菓子やスイーツが出てくるんです」

何度も苦手と伝えているが……

 実は三田さん、お菓子やスイーツがそんなに好きではないことは何度も義母に伝えているのだが、どこ吹く風か、義母はどう脳内変換されたのか「息子の嫁はスィーツやお菓子が好き」と思い込んでいるというから困ったものだ。

「私だけでなく、夫も甘いものはそんなに好きじゃないんです。
娘と息子はお菓子は食べるのですが、コンビニで売っているようなポテトチップスやアイスといった手軽なものが好きで、義母が買ってくる凝ったものは苦手のようで……。旦那や子供たちは遠慮がないので、義母が用意したものに『オレ、甘いのはもういいよ』とか『ポテチ食べた~い!』って言うんです。そうなると義母はムッとした顔をするんですが、その後に必ず私に『じゃあ久美子さん、私たちだけで食べちゃいましょう』って。私は『ちょっと待ってよ!』ってなります」

 しかも義母はこの“年末のイベント”に並々ならぬ気合いと労力を費やしていると、三田さんは話す。

「夫の実家は埼玉県の本庄市なんですが、義母は年末年始のためにわざわざ都内や横浜まで行ってスィーツやお菓子、ケーキなどをまとめて購入してくるんです。だったらそのときに都内の我が家に寄ってくれたら帰省しなくてもいいじゃん……と思ってしまいます。お菓子やスイーツ、甘い物は女子供はみんな好きって思わないでほしいですね」

 義母との関係は良好であっても、“価値観のすれ違い”は避けられないもの。とくに「好意の押し売り」は、受け取る側にとっては重荷となることもある。

 旦那の実家への帰省を“我慢の行事”にしないためにも、家族同士でも本音で伝え合える関係性が築けるといいのかもしれない。

文/谷本ススム

【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター
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