飽食の時代、寿司・焼肉・カレー・スイーツなど、あらゆるものが好きな時に食べられる日本。そんな状況にあって、徹底的に同じものを食べる人も存在する。
「年間4000種類のアイス」を食べて研究しているアイス研究家、シズリーナ荒井さん(41歳)もその一人だ。
アイスまみれの生活、その実態が知りたい。もちろん毎日食べて体調や体型に影響はないのかも気になるところである。本人の口から直接語ってもらおう。

「年間4000種類のアイス」を食べる41歳男性を直撃。「“初...の画像はこちら >>

1歳で「ガリガリ君」を食べた

「年間4000種類のアイス」を食べる41歳男性を直撃。「“初アイス”は1歳でガリガリ君」…健康診断の結果や体重の変化も教えてもらった
1歳で‟初アイス”を食べたときの一枚
シズリーナ荒井さんは、これまでに6万個のアイスを食べてきた。その素養は、物心がつく前からあったという。

「私の“初アイス”は、1歳1ヶ月のときに食べた『ガリガリ君』ソーダ味です。本来なら早すぎる年齢だと思いますが、母が『6つ上の兄にだけあげるのはかわいそう』と判断して私にも与えたんです(笑)」

当時の様子はビデオにも残っており、お母様が「1歳でアイス!?」と躊躇するような声を上げながらも与えていたという。これが、のちにアイス研究者となる人生を暗示していたのかもしれない。

小学生時代もアイスが好きだったが、自分の好みが特別とは思っていなかったという。

「親に『アイスは1日1個まで!』と怒られていた記憶があります。つまり、それ以上食べていたんですよね。立て続けに3個食べていたら怒られました(笑)」

1週間で120個…「人生で初めてアイスが嫌いになりかけた」

アイス研究家としてメディアに初めて登場したのは2017年。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』という番組だった。


「ソフトクリームとアイスクリームは原材料がほぼ同じなのに、ソフトクリームのほうが濃厚で風味も豊かに感じますよね。これは温度の違いで、ソフトクリームはマイナス7℃、アイスクリームはマイナス18℃以下。だから、市販のアイスをマイナス7℃にしてソフトクリームのように食べよう……という内容をお話しました」

家庭用冷凍庫は通常マイナス18℃程度。荒井さんは、アイスを冷蔵庫に移し、商品ごとにマイナス7℃になるまでの時間を調べた。

「『明治エッセルスーパーカップ 超バニラ』なら70分、『雪見だいふく』は35分、『ピノ』は30分、『アイスの実』は23分です」

この検証が話題を呼び、メディア出演が増加。2020年には『マツコの知らない世界』(TBS系列)にも出演。しかし、準備期間中に「アイスが嫌いになりそうになった」ことも。

「最初は電子レンジの解凍機能で試したり……何度も失敗しています。放送直前の1週間で120個、1日17~18個のアイスを検証して食べまして。さすがに人生で初めてアイスが嫌いになりかけました(笑)」

健康診断の結果は?

「年間4000種類のアイス」を食べる41歳男性を直撃。「“初アイス”は1歳でガリガリ君」…健康診断の結果や体重の変化も教えてもらった
健康には人一倍気をつけているそうだ
年間4000種類ものアイスを食べると聞けば、健康面も気になるところだ。

「年1回の健康診断も問題はありません。毎月、血液検査や眼圧測定などの簡易健診も受けていますが、どの数値も良好です」

定期的に健康管理を行う姿から、アイスの専門家としての責任感もうかがえる。

「私が病気になると、『アイスのせいだ』と思われて、メーカーさんにも迷惑がかかります。
当然、アイス自体が悪者扱いされてしまいますからね。だからこそ、健康維持にも真剣に向き合っています」

日々の運動も欠かさず、まさに「アイス業界を背負っている」と言えるほどの姿勢だ。とはいえ、シンプルに飽きることはないのか?

「ないんですよ。皆さんも白ご飯を毎日食べても飽きないですよね? 私にとってのアイスは、それと同じ存在。『rice』の中に『ice』が入ってますしね(笑)」

ただ、学生時代にさかのぼれば、アイスの食べ過ぎで体調に異変が起きたこともあるという。

「剣道部に入っていたんですが、夏の暑い日の練習時にクールダウンしようと『アイスボックス』や『クーリッシュ』を何個も一気に食べ過ぎたんです。すると、寒気がしてきて…熱を測ったら高熱が出ていました(笑)」

「カレーメシ」にアイス?

網羅的にアイスを食べているシズリーナ荒井さんだが、アレンジレシピの考案にも余念がない。誰でも手軽に試せる王道のアレンジを聞いた。

「おすすめは、サーティーワンのチョコレートアイスに山椒をかける方法。和風チョコミントのような味わいになります。ほかのチョコアイスだと山椒に負けてしまうんですが、サーティーワンはコクが深くて合うんです」

一方、試すには少し勇気の必要そうなチャレンジングなレシピも。

「日清食品の『カレーメシ』に森永乳業の『ピノ』を2個入れて混ぜると、スパイシーさはそのままにコクが増して美味しいですよ」

アイスの“声”に耳を傾ける

「年間4000種類のアイス」を食べる41歳男性を直撃。「“初アイス”は1歳でガリガリ君」…健康診断の結果や体重の変化も教えてもらった
シズリーナ荒井
こうしたユニークなレシピには「食べ物を遊びに使うな」といった批判もあるという。

「ふざけているわけではなく、私はアイスを“食材”として見ています。
だから、そのまま食べるだけでは魅力の一部しか感じられていないと思うんです。どうすればもっと魅力が広がるか、アイスの“声”に耳を傾けて考えています。ちなみに、“Voice”の中にも“ice”が入っています(笑)」

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これから梅雨を経て、本格的に夏が到来。アイスが美味しい季節だ。ともすれば定番商品を選びがちではあるが、シズリーナ荒井さんの開拓精神を見習って、今年は新商品をたくさん試してみたいところだ。

<取材・文/Mr.tsubaking>

【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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