Y2Kファッションとは、2000年代前半に流行したスタイルを現代風にアレンジしたもので、ルーズソックスやへそ出しトップス、厚底ブーツといったアイテムが特徴的だ。浜崎あゆみ、倖田來未、ブリトニー・スピアーズなど、当時のポップカルチャーの象徴から大きな影響を受けている。
そんな中、2023年8月に渋谷にオープンした「LOALO GALMAKE STUDIO」も話題だ。ギャルメイクやギャルファッションを実際に体験できるメイクスタジオで、かつてギャル文化を楽しんだ世代だけでなく、外国人観光客を中心に“日本カルチャー体験の場”としても人気。
なぜ、ギャル文化は国境を越え、世代を超えて人々を惹きつけるのか。店長を務めるふきてぃすさんに話を聞いた。
「ギャルの聖地」に体験の場を…メイクスタジオ誕生の裏側

ふきてぃす:コロナ禍が落ち着いて、また外国の方が日本に増えてきた時に、日本の文化の一つの“ギャル”を体験して欲しい。
ギャル体験をして「ギャル、可愛い、楽しい!」って自ら体験することによってよりギャルを好きになってもらいたいという思いと、「渋谷ってギャルの聖地なのに、意外とギャル体験ができる場所がないな」って思って、これは面白い!と思いこの店をオープンしました。
——店長になったのには、どのような経緯がありましたか?
私自身、美容系の専門学校を卒業してすぐに黒ギャル雑誌『LOALO』のモデルを始めたんですけど、ありがたいことにフォロワー数が一番多くて。メイクも得意だったから、「メイクスタジオの店長、やらない?」って声をかけられて。即答で「やります!」って引き受けました。

ふきてぃす:私、9歳年上のお姉ちゃんがいるんですけど、そのお姉ちゃんが浜崎あゆみさんが大好きで。
あと、私って兄弟が多くて末っ子だったので結構、過保護に育てられたんですけど、その反動で「もっと自由に、ギャルみたいになりたい!」ってなったのもあります。でも、お母さんもおばあちゃんもフリフリやキラキラの服が好きなので、もともとギャルの血が流れていたのかもしれません(笑)
国境も世代も超えるギャル文化

ふきてぃす:ターゲットを絞らず、本当に色々な方が来てくれますね。外国人観光客はもちろん、小学生やカップル、性別問わず来店されます。サラリーマンの方が来たり、お子さんが保護者同伴で来てくれることも。いま、小学生ギャルモデルの『KOGYARU』というメディアがあって、小学生にもギャルファッションが人気なんです。小学生の女の子で「ママとの約束で宿題を終わらせて連れてきてもらった!」という子もいました。
——訪日外国人のお客さんが多いと聞きましたが、どの国からの来店が多いですか?
ふきてぃす:台湾や韓国からのお客様が特に多いですね。YouTubeで紹介してくださる方も多くて、本当にありがたいです。ただ、以前、韓国のYouTuberさんが来店したときに、言葉の違いからちょっとしたトラブルが起きちゃって……。
その様子がそのまま動画にアップされて、軽く炎上してしまったことがありました。それをきっかけに、「もっとちゃんと外国の方とコミュニケーションを取らなきゃ!」となって、今では翻訳機を使って、しっかり対応するようにしています。
——実際に体験された外国人のお客様からは、どんな感想をもらいますか?
ふきてぃす:「日本のギャルになれて嬉しい!」「こんなメイク初めて!」「可愛くなった!」と、皆さん本当に喜んでくれます。
——日本人ではどういうお客さんが来ますか?
ふきてぃす:20代の私のファンの方や、30~40代の男性ファンもいらっしゃいます。あとは、40代の昔ギャルだった女性も多いですね。「自分たちの時代のギャルメイクよりも今のギャルメイクの方がキレイ」って言ってくれることも。また、昔ギャルに憧れていたけど親や学校が厳しくてできなかった、という方もいます。
——ギャルメイクに興味を持つ外国人が多い理由は何だと思いますか?
ふきてぃす:海外にはない文化だから、見て驚きや可愛さがあるんだと思います。日本の「Kawaii」は一つのカルチャーとして、キラキラ・フリフリ系は全世界共通でウケますし、それが凝縮されているのが日本のギャル文化だと感じます。海外にも日本のギャルを真似た“ギャルサー”が増えていて、特にツインテールやフリフリのミニスカファッションの「姫ギャル」が多い印象です。
——ギャルの時代感や文化を再現するために工夫されていることはありますか?
ふきてぃす:メイク道具は今のものが多いですが、当時のヤマンバメイクを再現するためにハイライトやアイシャドウ代わりに舞台役者さん用のメイク道具を使うこともあります。衣装や小物はネットや、当時のギャル服をメルカリで購入することもありますね。
——ギャル文化に対して偏見を持つ人も一部いますが、それに対する思いはありますか?
ふきてぃす:「自分が良ければいい」かなと。男性ウケや女性ウケを意識するのではなく、自分自身が納得できる「自分ウケ」が一番大切だと考えていますね。
Y2Kブームと令和ギャル

ふきてぃす:今の令和のギャルが想像する「20年前のギャル」、それがY2Kブームと繋がっていると感じます。海外のお客様から「Y2Kっぽくしたい」というリクエストもいただきますし、スタジオも壁をピンクにしたりと、Y2Kの流行を意識した演出もしています。
——最後に、店長が感じる「令和のギャル」について教えてください。
ふきてぃす:平成ギャルは「ギャルはこう!」というルールがあったように思いますが、令和のギャルはもっと自由度が高いと感じます。たとえば、眉毛の細さにしても、平成のときのようにギャル=細眉というルールがない。みんながそれぞれ自分らしいギャルを楽しんでいる、と思いますね。
25年ぶりにガングロギャルに大変身! ギャルメイクの進化と「自分ウケ」マインド

リクエストしたのは、もちろん“ガングロギャルメイク”。というのも筆者、実は25年前、まさに全盛期のガングロギャルだったのだ。だからこそ、令和のギャルメイクがどう変わったのか、めちゃくちゃ気になるところ。

さらに感動したのが、ファンデの塗り方の丁寧さ。
続いてアイメイク。これが意外とシンプル。昔のように濃いシャドウをガッツリ塗るわけではなく、白いアイシャドウをベースに、目の下にはぷっくりとした白い涙袋。平成時代は白ライナーを引くだけだったが、令和のギャルは立体感重視。
アイラインは上下しっかり引いて、バサバサの束感あるつけまつげをオン。リップはほぼ白に近い薄いピンク。仕上げに金髪ウィッグとギャル服に着替えたら……ギャル爆誕!
鏡を見て、思わず絶句。
「え、これは……バンコク深夜のテーメーカフェ前にいるレディーボーイ!?」

メイク後はプリクラを撮りに渋谷の街へ。

……やっぱり、ギャルって、いつの時代も最高ですね。
【ふきてぃす】
黒肌美女雑誌「LOALO」専属モデル兼「LOALO GALMAKE STUDIO」店長。
Instagram:@fukitanaka、TikTok:@1225fuki
<取材・文/カワノアユミ>
【カワノアユミ】
東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。