Mrs. GREEN APPLEファンが「ミッキー邪魔!」
“夢の国”で、衝撃の事件が発生しました。3人組バンド「Mrs. GREEN APPLE」が7月1日に東京ディズニーランドのパレードにサプライズ参加したところ、ミッキーマウスに隠れてミセスの姿が見えないことに不満を持った女性ファンの一人が、「ミッキー邪魔!」と吐き捨てる動画が拡散されたのです。
この「ミッキー邪魔」が「X」のトレンド入りすると、今度はディズニーファンが「ミセス邪魔」とやり返す事態に発展。
ディズニーランドで「ミッキー邪魔!」とは、ドジャースの試合で“大谷邪魔!”と言うようなものです。これだけでもただならぬ状況だと理解できるでしょう。
にもかかわらず、「ミッキー邪魔!」と言った彼女には、その前提が全くなかった。“ミッキーとコラボするミセス”ではなく、ただミセスにのみ価値を見ている。
そのように、周りの状況を見失わせるほどに熱狂させるアイコン。そこにMrs. GREEN APPLEの特殊な人気があるのではないでしょうか。
Mrs. GREEN APPLEの“特殊な人気”とは?
ミセスは日本の音楽シーンを代表するグループです。先だって開催された、“日本版グラミー”こと『MUSIC AWARDS JAPAN』で最優秀アーティスト賞を獲得し、大トリを務めました。ヒット曲の「ライラック」はストリーミング累計再生回数6億回を突破。自身が主催する「CEREMONY」というフェスでは、音楽だけでなくファッションやカルチャーを融合し、ミュージシャン、俳優、タレントなど、各ジャンルからゲストを集めた総合イベントも成功させています。そして大森元貴は役者としてドラマや映画への出演も果たしている。今後もその流れは続いていくでしょう。
このように地上波の情報番組でミセスの名前を聞かない日はないと言っていいほどの活躍ぶりです。間違いなく、いま彼らを中心にエンタメが動いているのです。
さらに、ファッションやメイクを含めたビジュアル、そして多くの人の人生を肯定する歌詞のメッセージなどから、多様性を受け入れることの大切さを打ち出している社会的な存在でもあります。
Mrs. GREEN APPLEが抱える“今後の課題”
つまり、Mrs. GREEN APPLEはひとつのバンドというよりかは、複合企業のようなものなのです。その活動から何らかの思想性が生まれ、彼らの存在がカリスマ化していく。だから、ディズニーランドでパレードを見たファンも何のためらいもなく「ミッキー邪魔!」と言ってしまったのですね。確かにそれはひどい言いがかりではあるけれども、ミセスのビジネス展開としては完全に成功しているのです。音楽、総合カルチャーイベント、ファッション、メイク、発言、芝居、全ての活動はMrs. GREEN APPLEという看板にオーラを与えるためのものだからです。そして、ついにはミッキーマウスを凌駕した。
まさしく、ミセスの勝利です。
しかしながら、オーラというのはやっかいなものでもあります。なぜなら、当人たちを実物以上に大きく見せるものだからです。
いまのところは、この「実物以上に大きく見せる」戦略がハマっていると言えるでしょう。わかりやすく言うと、ミセスのやっていることや言っていることには何か深い意味がありそうだ、とファンに思わせることができているということですね。
ですが、永遠に自分たちを大きく見せ続けることはできません。それは、彼らが若いからこそできることであって、年を取っても自分を大きな存在だと証明しなければならないのは、大変に酷な話です。
というわけで、いつかはミセスもこの成長戦略から撤退しなければならないことになります。課金するように備え付けられたカリスマの維持費は、恐ろしく高くつくのです。
遠い未来に、「ミセス邪魔!」と言われるときまで彼らは生き残っているのか?
それこそが、本当の勝負なのだと思います。
文/石黒隆之