メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。
もはや時代遅れなのに、なぜか身に着けてしまうアイテム
今回は「時代遅れ」「ダサい」「着こなしが難しい」……そんなアイテムをご紹介します。ファッションの世界はどうしてもトレンドがついてまわるもの。「永遠におしゃれな服」なんてものがあるならば、皆それを買うはず。
「カッコイイ」という価値観は時代とともに変遷するため、アップデートしないと簡単に「青春時代に流行ったものを今でも使ってるオジサン」になってしまいます。今回はオジサンの価値観をアップデートすべく、「今ではもう難しいアイテム」を紹介します。
▼ジョガーパンツ

アメリカで好まれたスポーツウェアやヨガウェアを日常的なカジュアルに落とし込む着こなし。その当時、ハイテクスニーカーやスウェットトップス、ラインソックスやポロシャツなどアクティブウェアを着こなしに取り入れるスタイルが大流行しました。
その中でも顕著な人気を見せたのがジョガーパンツ。元々は「トレーニング・ジョギング用のパンツ」であり、裾がもたつかないようにゴムを入れた仕様なのがポイント。
細身ジョガーパンツはアクティブで動きやすい反面、どうしても足が短めに見えやすい。裾が絞ってあるため、靴とパンツの境界線が目立ちやすく、日本人の短足体型がありありとわかる結果に。黒ジョガーに黒靴を合わせるなど境界線を意識させないコーディネートができるならばまだしも、スポーツの印象が強いグレージョガーなどはなかなか難易度が高い。
その後、ワイドパンツなど「足元のボリューム感が隠せるパンツ」が流行し、同時に「厚底スニーカー、厚底シューズ」が浸透。誰もが身長や脚の長さを「盛った」スタイルとなりました。その反動で「脚の長さがわかってしまう」「盛ってる靴を合わせても境界線が目立つためバレバレになる」ジョガーパンツは徐々に廃れていきました。
おとなしく部屋着に降格させるべき

ジョガーパンツのようなスウェットのアクティブパンツを購入するなら、今ならワイドの方がおすすめ。特に昨今のスウェットは光沢と落ち感に優れたものが多く、ツルっとスラックスのような印象が作れます。

▼細身のきれいめポロシャツ

ラコステを筆頭にフレッドペリーやラルフローレンなど多くのナショナルブランドが提案、さらにユニクロもカノコポロシャツを長年展開しています。
さらに近年ではより着心地を求めたエアリズム素材のポロシャツなども展開。ユニクロの人気ランキングなどを見ても必ず毎度上位に居座っているメンズ永遠の人気商品です。
しかし、ここ10年で徐々に情勢は変わっていきました。何が変わったかというと「仕事着」! 環境省が地球温暖化対策の一環としてクールビズを提唱したのが2005年の話。そこからじわじわと大手企業を中心に広がりここ5~6年では地方企業までそれらが浸透しました。
すると、細身のポロシャツは「ビジネスシャツの代用品」として使われるようになり、今では山手線で見かけるサラリーマンのほとんどがポロシャツを着用しています。
オジサンサラリーマンの仕事着に

さらに追い討ちをかけたのがビッグシルエットやリラックスサイズのトレンド。ここ10年でメンズの基本サイズはガラリと変わりました。
細身のきれいめポロシャツが無敵のアイテムだったのはもはや過去の話。今ではビジネス用の服として昇格(降格?)していますので、下手に手を出さないほうがおすすめです。

▼サコッシュ

日本は比較的キャッシュレス化が遅かったですが、欧米などでは浸透が早くカードや電子マネーなどを活用した支払いが多くなりました。
そのためヨーロッパのハイブランドやラグジュアリーでは「長財布」から「短財布」が売れるようになり、ルイヴィトンやバレンシアガなど人気の高級財布を展開する多くがそれに倣う様になりました。
小さなポーチくらいしか入らないようなサコッシュ、10年以上前なら「こんなの財布が入らねえよ」と敬遠されたでしょう。しかし近年ではスマホも薄型になり財布も小さくなり「このくらいがむしろちょうど良い」わけです。またレザーを使ってもさほど量を使わないため比較的安価で作れることから、多くのメーカーが大量に展開。猫も杓子もサコッシュ状態となったわけです。
実用性は高くてもおしゃれにもはや見えない

特にアクティブな夏場では手ぶらで歩きたいという需要が強く、サコッシュが飛ぶように売れた。現在でも街を歩いているとサコッシュをつけている人が多いですが……やはり服好きな人は「ここまで流行っちゃうと……」と敬遠しているようです。
そこでサコッシュの代わりに流行っているのが「ユーティリティーショーツ」。釣具メーカーのダイワとBEAMSが組んでる「DAIWA PIER39」を筆頭に多ポケットを装備したショーツが展開。

▼数珠

当時は「オーラの泉」(2005年放送)などを始め、地上波でもこうしたスピ的コンテンツが許された時代であり、比較的寛容でした。
現在は自主規制が強くなり、地上波でこうした心霊やスピリチュアルコンテンツを取り扱うのがタブーとなり、徐々にこうした内容はアンダーグラウンドに進んでいます。
おしゃれに見せる難易度はかなり高い
「おしゃれでワンチャン運気もよくなる?」といった扱いで人気を博した数珠ブレスですが、その当時から愛用しているオジサンも今やすっかりオジイチャン。現在、街を歩いていて数珠ブレスを見かけることはほとんどありませんが、稀に高級店のレジカウンターを見ると成金風のオジイチャンの腕もとに数珠ブレスを見かけます。
当然のことならブームも一昔前、現在も「あえて」数珠ブレスを展開するブランドもあるにはありますが……難易度は相応に高い。変な宗教と思われることもあるでしょう。
▼AirMAX 90

しかしながら、こうしたハイテクスニーカーはご存知の通り、下火に向かっています。NIKEの近作で話題なのがローファースニーカー。ついにスニーカーブームの下火に我慢できず、NIKEはローファーを作っちゃったのです。
そのくらいハイテクブームは終焉に。もちろんコレクターが消えることはないし、スニーカーが廃れることもありませんが……少なくとも今までのような異常な盛り上がりは消えていくでしょう。
そして、NIKE AirMAX90はメンズもレディースもキッズも愛用者が多いモデル。他モデル以上に量販店での流通量が多く、地方でもどこでも手に入る様になりました。NIKEは時に自社の重要モデルは流通量を意図的に制御して価値を高めていることで知られています。
流通量が多すぎて「見慣れた普通の靴」に

AirMAX90もおそらく未来においては再び価値を取り戻すと思われますが、現在はあまりにも流通量が多すぎて「見慣れた普通の靴」以上の感想が出てこない。
同じようにスニーカーを買うにしても今はPUMAやアシックスなどがおすすめ。シャープなフォルム、フォーマルシューズのような素材使い、シンプルなデザインで「革靴に近いスニーカー」が今のトレンドです。
特に韓国が火付け役となり世界に浸透しているのがPUMAの名作スピードキャット。今季はバレンシアガもコラボモデルとしてピックアップしている今一番旬のスニーカーです。今選ぶならこちらがおすすめです。
以上、もう買っちゃダメな服でした!
―[メンズファッションバイヤーMB]―
【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『ロードマップ』のほか、『MBの偏愛ブランド図鑑』『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Xアカウント:@MBKnowerMag)