そこで語られる論点は、恋愛感情や性欲が発生してしまう可能性であるが、そうしたものが仮に混ざったところで、友情に翳りが生まれるかはまた別問題であろうに。
今回はこの定説を裏返すかのように、当人同士の恋愛感情等のもつれではない形で、「男女の友情」が終焉してしまった女性に話を聞いた。
唯一無二の幼馴染みと縁を切ったばかりの渡辺望結さん(仮名・20代)いわく、「もう一生会いたくない」とのこと。相手は一体なにをしでかしたのだろうか。
家族同然の存在だったのに……
「先月まで親友だったAとは、幼稚園から一緒で20数年来の仲。母親同士がママ友として仲良しだったこともあり、家族ぐるみの親友だったんです。いや、親友どころか、ほとんどきょうだいみたいに成長してきたので、お互いに恋心が芽生えることは一切なかったんです。よくある噂や冷やかしもないほど、徹底した“家族感”でしたね(笑)。
大学は別のところに進学したものの、仲のよさは変わらず、2人で飲みに行くこともしょっちゅうでした。どんな悩みも打ち明けていましたし、それぞれお互いの恋人を紹介しあうような関係です。Aこそが一番の大親友でした。
どちらかの家に泊まることもあったのですが、もちろん肉体関係になることもまったくありません。生涯の親友もとい、家族同然の存在だと思っていたので、今は心にぽっかり穴が空いているような状態です」
隠し事はなかったはずなのに、彼女がいた?
家族のような間柄だったという渡辺さんとAさん。深く結ばれた友情を揺るがしたのは、Aさんの信じがたい行動が原因だった。「ある日、Aの家に泊まりに行くと、たまたまスマホの通知が見えたんです。
弁解しておくと、お互いのスマホのパスコードを知っているくらいに、隠し事はなかったはずなんです。そんな軽い興味本位でLINEを見てみると、女性とラブラブなメッセージを送りあっていました。
彼女ができたんだと思い、帰ってきたAにLINEを見たことを明かしながら聞いたのですが、なぜかよそよそしい態度で。女性の詳細は教えてくれなかったんです。これまでは、付き合っている彼女のことは何でも教えてくれたのに……なんか変だなと、強い違和感が残りました」
なぜか“既婚者設定”でやり取りする不思議
とはいえ恋人同士ではないわけで、Aさんがどんな女性と交際していようが関係ないと、渡辺さんは深く追求することはしなかった。しかし、Aさんは後ろめたい遊びをしていたばかりか、勝手に渡辺さんを巻き込んでいたことがのちに判明する。「後日、Aの家に遊びに行くと、またスマホを見るチャンスがありました。ずっと気になっていたので、例の女性とのLINEの中身をチェックしたのですが、もうそれが衝撃の内容で……。
Aは自分が既婚者だと偽って、その証拠として私と遊びに行った時に撮影したツーショット写真を相手に送っていたんです。ようは、私のことを妻だと嘘をついて、その女性とやり取りしていました。しかも、送っている写真は1枚だけじゃなく、私だけが写っている写真まで丁寧に送っていたんです」
「ダブル不倫に燃えるタイプの女性」を落とすエサ扱い
なぜか渡辺さんと結婚していると偽装しながら、その女性とLINEをしていたというAさん。理由を問い詰めると、まさかの答えが返ってきたそうだ。「Aが言うには、現在付き合っている女性は既婚者で、ダブル不倫に燃えるタイプの女性なんだとか。その女性を落とすために、私と結婚していると嘘をついて、証拠のためにツーショット写真などを送っていたそうです。
しかも、ご丁寧にインスタグラムで裏アカまで作って、私と写っている写真を投稿までする手の込みようで。結果、相手の女性もAを既婚者だと信じ込み、それで付き合えることになったのだとか。そんな説明を聞いても唖然とするばかりでしたが、私が利用されたことだけはわかりました」
怒り心頭の渡辺さんは、写真やインスタアカウントの削除をその場で要請。
「Aは今回の悪事がバレても、『俺とお前の仲なんだから、このくらい良いじゃん』と、軽い調子で開き直っていたんです。正直、Aがどんな女性と遊ぼうと気にしませんが、長年一緒に過ごしてきた私を無断で、それも貶めるような形で利用していたとなれば話は別です。自分の性欲を満たす遊び相手をゲットするために、架空のサレ妻にされるなんて……」
絶縁宣言し、すべての連絡先を削除
「インスタのアカウントだって、鍵垢だったとしても、どんな形でデジタルタトゥーになるかなんてわからないじゃないですか。その場で私が写っている写真を全削除の上、アカウント自体も消させました。さらに、その女性にもAの嘘をすべて暴露し、別れさせたんです。そうしてすべてのカタがついてから、絶縁宣言をして、Aの連絡先を目の前で一切合切消しました。
Aからは、謝罪したいとの申し出が私の両親を通じて何度もきているのですが、ずっと無視しています。
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せっかく20年近く守ってきた友情も、壊れるのはあっという間。どんなに強固に思える関係であったとて、「親しき仲にも礼儀あり」を忘れると、その糸は想像よりよほど容易く切れてしまうのだ。
<TEXT/高橋マナブ>
【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている