再雇用を選び、同じ会社で働き続けるという選択肢もあるが、「第二のキャリアを考えるときは『生きがい』を優先すべき」と指摘するのは、『ゼロ活 ~お金を使い切り、豊かに生きる!~』(扶桑社)を上梓したばかりのファイナンシャルプランナー・井戸美枝氏。
50代以降は、収入やキャリアアップといった観点だけではなく、「生きがい」や「余暇という感覚」を大切にした仕事選びが重要だと語る井戸氏。その理由について、同書から紐解いていこう。
(本記事は『ゼロ活 ~お金を使い切り、豊かに生きる!~』より一部を抜粋し、再編集したものです)
50代以降の仕事選びで大切なのは、「生きがい」

50代くらいまでの働き方には、大きく分けて2つのタイプがあったのではないでしょうか。ひとつは、家族を支えるため、収入を得るための生活のための仕事。もうひとつは、職業人としてキャリアアップを目的とした仕事です。
そして、50代以降の働き方としては、3つ目の「生きがいとしての仕事」を意識してほしいのです。
「生きがいとしての仕事」とは、誰かのためになっているという実感がある仕事、時間を忘れて楽しめる仕事、自分の特技を発揮できる仕事のこと。
生活のためにフルタイムで働くと、せっかくの人生の貴重な時間を仕事をするだけで終わらせてしまいます。でも、50代以降は、お金を得るという目的が二の次になるほど楽しめる仕事を探してみてもいいのでは。
仕事は社会とのつながりを保つ手段でもあり、日々の充実感を得たり、新しい体験ができ、健康維持にも役立ちます。
収入額にとらわれず、自分の体力や気力に合った働き方を見つけられれば、結果的に、精神的にも経済的にも充実した生活を送ることができます。
突き詰めれば、仕事はお金がかからないどころか、お金がもらえる、健康にも良いという一石二鳥です。
もうひとつ、50代以降の方々におすすめしたいのが、「次世代のために自分には何ができるか」という視点を持つことです。仕事で長年培ってきた自分の持っている経験や知識を次の世代に役立ててもらう。
人生100年時代といわれる昨今、定年後の収入が多少減ったとしても、社会貢献活動や地域との関わりを持つことに価値を見出す方が数多く存在します。
このような視点で働くのも、とても素敵なことだと思います。それこそ、まさにやりがいがある仕事でしょう。
楽しみのために働き、豊かな老後を築く。その視点をぜひ忘れないでくださいね。
余暇のために働くという選択

そう考える方の場合、50代以降は、「自分の余暇のために働く」という視点を持つのもいいでしょう。
ここでいう「自分の余暇のため」とは、稼いだお金を生活費に使うのではなく、人生に潤いや楽しさを加えるために使うという意味です。
趣味をもっと楽しみたい、旅行に行きたい、好きなものを買いたい。そんな自分のための楽しみに使うお金を「働くことで補う」という感覚です。
「この仕事をすればあの場所へ旅行に行ける」とか、「趣味の道具を買うために働く」と考えると仕事も楽しくなっていくはず。
実際、定年後はどうしても現役世代よりも収入が減ることは避けられない場合が多いですが、定年後に働いて収入を得ることで、自分の好きなことにお金を注ぐことができます。
働くことの意味づけを変えてみると人生の質が大きく変わります。
ぜひ皆さんも、60代以降は「自分が楽しむために働く」というスタイルを意識して、充実した人生を過ごしてください。
〈文/井戸美枝〉
【井戸美枝】
CFP、社会保険労務士など。神戸市生まれ。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金部会委員。経済エッセイストとして活動。『100歳までお金に苦労しない 定年夫婦になる!』(集英社)、『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、また自身の介護体験を元に執筆した『身近な人が元気なうちに話しておきたい お金のこと 介護のこと』(東洋経済新報社)など著書多数