―[カジキ]―

カジキです!! インテリアのブログとYouTubeを運営しています。暮らし、住まいの世界を長年見てきた経験を元に、インテリアの法則と、インテリア好きが頭の中で考えていることをご紹介していきたいと思います。

インテリアといえば、北欧スタイルが大人気です。ネットを見れば、「ナチュラルな家具を買えば北欧インテリアになります!」「白やグレーといったナチュラルカラーをベースに、明るい色の木製家具を取り入れましょう」とかなんとか指南されていますが、……うう~ん、よくわからん。

北欧インテリアにナチュラルな要素がないとは言いませんが、ほかのスタイルにもナチュラルな要素はあります。つまり、北欧インテリアを成立させるために、ナチュラル要素は必要条件ではあるけれど十分条件ではないのです。

インテリア情報を発信している方たちは、意図してか、意図せずしてかはわかりませんが、実は言語化できていないポイントがあります。彼ら彼女らが、北欧であるか否かを判断しているのは、ナチュラルやスッキリ感のような曖昧な感覚ではなく、実際はいかにも北欧インテリアらしい「アイコン」の有無で判断しているのです。

ホウレンソウがのっていたら家系ラーメン?

「ナチュラルな家具を買えば北欧インテリアに…」という嘘。北欧...の画像はこちら >>
アイコンというとなじみがないように聞こえるかもしれませんが、人は生活の中で色んなアイコンを判断基準に使っています。「ホウレンソウがのっていたら家系ラーメン」「ルーズソックスを履いていたらギャル」「白くてツノが生えていたらガンダム」です。

あなたの言いたいことはわかります。白くないガンダムもいるし、ツノが生えてないガンダムもいる。おっしゃるとおりです。でもそれは、あなたがガンダムに詳しいからです。同じ趣味の友人が相手なら問題なく伝わりますが、実家の母に「ガンダムとザク」の見分け方を伝えたいなら、シンボリックな要素を挙げることがきっと意思疎通の役に立つでしょう。


必ずしもそれだけが判断基準のすべてではないけれど、大まかなカテゴリーを掴む手掛かりになってくれる。そんなアイコンがあるとみんなイメージを共有しやすくなるのです。

インテリアだって同じです。北欧インテリアにも、スタイルを構成するための法則性はあります。しかし、それを正しく見抜ける人はほとんどいません。自分がきちんとルールを守っていたとしても、ルールを知らない人にはそれが伝わらないのです。だからアイコンを使います。

お部屋をコーディネートする人も意識してアイコンを配置しますし、お部屋のスタイルを解説したい人もアイコンを探して判断基準に使います。これは決して怠惰ではなく、伝えたい人と伝わりたい人とを誤解なく繋ぐための大切な工夫なのです。

北欧インテリアに必要なアイコンとは?

とはいえ、あまりにわかりやすいアイコンは無粋です。北欧インテリアはおしゃれであることが求められますので、おもむろにHOKUOUと書かれた看板を飾るわけにもいきません(カフェ風インテリアにCAFEと書いたデコレーションを飾ることはあるのですが、それは稀な例です)。

「ナチュラルな家具を買えば北欧インテリアに…」という嘘。北欧スタイルを決定づける“隠れたアイコン”の正体とは
筆者私物
露骨すぎず、さりげなく、だけどなるべく誤解を生まない、そんな家財がアイコンとして重宝されます。例えば、白樺のバスケットです。
北欧フィンランドの国樹シラカバを使ったカゴは、文脈的にもデザイン的にも北欧インテリアにぴったりハマります。ナチュラル風のお部屋に白樺のバスケットが置いてあれば、そこはかなりの確率で北欧インテリアです。

「ナチュラルな家具を買えば北欧インテリアに…」という嘘。北欧スタイルを決定づける“隠れたアイコン”の正体とは
「ダーラナホース 1950 アンティークオレンジ」。1万9800円。写真は、北欧雑貨のアットテリアより
例えば、ダーラナホースです。北欧スウェーデンのダーラナ地方で作られている、お馬さんの形をした縁起の良い民芸品がダーラナホース。北欧好きの間では有名ですが、そうでない人はわざわざ選ばない絶妙な感じのデザインです。これをお部屋に飾っている人は北欧ファンの可能性が高いでしょう。

「ナチュラルな家具を買えば北欧インテリアに…」という嘘。北欧スタイルを決定づける“隠れたアイコン”の正体とは
ルイスポールセン「PH 5」。写真は公式HPより
そして例えば、PHランプです。北欧を代表するデザイナーズ照明で、そのスジでは長年愛されているファン憧れのアイテムです。もしも仮に、あなたのお部屋の家財はそのままに、追加でPHランプを取り付けたら今すぐ北欧インテリアを名乗ることも可能です。本当です。僕はこれを「パワー北欧インテリア」と呼んでいます。本当です。


世のインテリア情報の発信者たちは、「ナチュラルな家具を買えば北欧インテリアになります」と言いつつ、自分自身はアイコンがあるかどうかでお部屋を判断していることがあるわけです。最初からそう言ってほしいとは思いますが、そうもいかない大人の事情があるのでしょう。

北欧インテリアの法則など何も意識していないナチュラルな部屋に、ポンとダーラナホースを置いてみてください。インテリアの関係者は目ざとく見つけて「この部屋は北欧インテリアだ」と判断することでしょう。僕でもそう言っちゃうと思う。

アイコンは使いたい人が使えばいいのです

ということで、北欧に限らずインテリアの世界ではアイコンがとても重要です。スタイルをつくるときにも役に立つし、スタイルを見抜くときにも役に立ちます。

もちろんこれは、堅苦しく守らければいけない必須のルールではありません。アイコンを使わなくてもスタイルはつくれるし、アイコンを使わなくてもおしゃれはつくれます。必須ではないけれど、あれば意図が伝わりやすくなる。そういう性質のものです。

お部屋のスタイルをアイコンで伝えたいのか、伝えたくないのか。
ご自身が考える理想のゴールに合わせて、賢く上手にアイコンと付き合ってみてください。

―[カジキ]―

【カジキ】
暮らし、住まいの世界を長年見てきた経験を元に、インテリアの法則を各コンテンツで言語化して発信中。YouTube「ゆっくりインテリア」、ブログ「様子のおかしいインテリア店」、Xアカウント@kajikissa
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