夫婦や恋人の場合、「隠し事をしないのが円満の秘密」と言う人もいるが、不貞行為をしていなくてもお互い秘密の1つ2つは珍しくない。例えば、「昔いじめに遭っていた」「ひきこもりだった」なんて経験は、いくら親しい相手でも正直話しにくいものだ。

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 こども家庭庁が発表した『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』によると、ひきこもり傾向にある人の割合は15~39歳が9.7%、40~69歳が13.4%。ただし、これはあくまで現在の状態に過ぎず、過去に経験した者は含まれていない。実際、学生時代に不登校だった、または大人になってから一時期ひきこもっていたという方は少なくないはずだ。

「ひきこもりの過去」を恋人に言えず…

 飲料メーカーに勤める鈴木直樹さん(仮名・34歳)は、中学時代はいじめを受けたことが原因で2年の途中から不登校となり、加害グループがいない高校に進学するもほとんど学校に行くことができず1年で中退。その後、通信制高校、大学を経て現在に至るが、大学在学中や社会人になってから知り合った友人には、不登校や引きこもっていた過去を隠していたという。

「ずっとコンプレックスでしたし、周りに知られるのが怖かったんです。今はそんな風に思っていませんが、当時は表面上こそ明るく振舞っていても『嫌われたらどうしよう……』って、常に内心ビクビクしながら過ごしていました」

 28歳のとき、同僚主催の飲み会で知り合った女性に好意を持たれ、彼女から告白されて付き合うことに。明るく何事にも積極的な彼女の性格に鈴木さんも惹かれ、年齢的に結婚を意識するようになる。

「高校中退」という事実を隠し続けていた

 それでも彼女にも自身の過去を打ち明けることができなかった。中学や高校時代の話をほとんどしなかったことで疑念を抱かせてしまったのだ。

「通信制高校を卒業したのは1年遅れの19歳。それも浪人したという設定にして、中退後に通信に入り直したとは言いませんでした。だから、高校の卒業アルバムなんて持っていませんし、中学時代のアルバムにも不登校だったから全然写っていません。友人と呼べる存在すらいなかったため、プライベートで撮った写真もまったくありませんでした」

母親が“元ひきこもり”とバラしてしまい…

 そのため、「学生時代のアルバムが見たい!」と言われても失くして行方不明とウソをついてごまかしていた。だが、初めて彼女を自分の両親に紹介した際、あろうことか母親が元ひきこもりであることをうっかり喋ってしまう……。


「母親が軽い感じで、私の“ひきこもりの過去”を話してしまったのです。彼女は気にする様子も見せず、そのまま話を受け流していましたが、私はあの瞬間、心臓が止まる思いでした。事前に口止めしていなかったので母を責められませんが、よりによってあのタイミングで知られるなんて……。それ以降、どんな顔をすればいいのかわからず、彼女の顔を直視することができませんでした」

 なんとか実家での挨拶を無事に済ませ、彼女を乗せて車で当時住んでいた街に戻ったものの、しばらく沈黙が流れていたとか。

 さすがに何か話さなければマズいと思ったが言葉が出ず、搾り出すように「さっき母さんから聞いたと思うけど、中学高校とずっとひきこもっていたんだ。ずっと黙っていてゴメン……」と謝ったそうだ。

事実を知って彼女が号泣したワケ

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ひきこもり
 彼女からは何の返事もなかったため、気になって助手席に座る彼女を見た鈴木さん。すると、目からボロボロと涙を流していたのだ。

「慌てて車を路肩に停めると、『私のほうこそ何も知らないのに昔のことをしつこく聞き出そうしちゃったから……』と逆に謝られました。私もこれで涙腺が崩壊してしまい、しばらく2人で泣きながら車内で抱き合っていました」

 彼が後で彼女から聞いた話によると、鈴木さんの母親から元ひきこもりと聞いた瞬間は驚いたらしいが、悲しそうな表情をした恋人を見て「これは触れちゃマズいやつだ」と空気を読んでスルーしたとのこと。ところが、帰りの車内で今まで黙っていたことを謝ってきたため、彼に辛い思いをさせたことに申し訳ない気持ちになってしまったという。

「実は、社会人になりたての頃、好きだった女性がいたのですが、ある時その子がひきこもりを否定するような発言をしたんです。それが自分にとっては結構なトラウマで、『いくら好きな相手でも絶対に言えない』という気持ちがますます強くなってしまったんです」

彼女に隠していた「もう一つの秘密」

 彼女とはこの一件の後も順調に交際を続け、翌年に結婚。
現在は2人の子供にも恵まれている。

 結果的には元ひきこもりだと知られても悪影響はなかったが、隠していた秘密はこれだけではなかった。

「彼女と付き合うまで恋愛経験がゼロだったんです。けど、それが恥ずかしくて過去に2人の女性と付き合ったと伝えていたのですが、『あまりに女性慣れしてなさすぎる!』って言われまして……。 むしろ、こっちのほうが早い段階から怪しまれていたみたいです(笑)」

 男女関係なく、隠し事がコンプレックスに感じている内容なら、パートナーにバレるのは怖いもの。だが、こういう類の秘密は、相手からしてみれば意外とそれほど気にならないのかもしれない。

<TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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