8月1日(金)よりFODにて配信中のサイコホラードラマ『エリカ』(原作・楠本哲)では、担任教師・青島(渡辺大知)に異様なまでの好意を寄せ暴走していく女子高生・閉野恵里桂を演じている。
狂気的な役への挑戦と新たな発見
――本作では全編を通じて息を呑むハードな展開が続きます。今回、恵里桂を演じた茅島さんのなかに残った感情や、撮影を終えて思ったことは何でしょうか。ここまで狂気的な役を演じるのは初めてだったので、終わったときは「ようやく終わった」という……。ホントに大変なシーンが多かったので、とにかくホッとしました。
―― 俳優として自分の新しい面が引き出されたり、新たな気づきはありましたか?
監督からの指示もあり、表情にはこだわりました。特に目の動きとか。自分ではやっているつもりでしたけど、モニターを見たら、もうちょっとこうした方が怖く見えるな、とか、映像と自分が持ってる感覚が違っていたので、そういう部分は意識してこれからも演じたいなと思いました。あと、アクションシーンが多かったのですが、まったくやったことがなかったので、そこも苦労した点です。
恥ずかしさは捨てるも…顔の表現に戸惑い
――今作における茅島さんの役への取り組み方について聞かせてください。今までいろいろな学生役をやらせていただきましたが、そのなかでも一番、幼くて無邪気なイメージを持ちました。高校生だけど高校生っぽくないというか、コロコロ表情が変わったり、1つのことですごい怒ったり泣いたり。そんな“幼さ”はすごく意識した部分かなと思います。
でも、たぶん一回も人から愛されたことがないんだろうなっていうのが、恵里桂の行動1つで感じ取れるので、見ていると心が痛くなってしまいますね。ただの狂気的な女の子、だけでは片づけたくないというのはすごく感じます。

原作ではそういった顔のシーンはないのですが、監督がああいう画(え)を求めてらっしゃったので、いろいろなパターンで何テイクも撮影しました。途中で「どういう顔したらいいんだろう?」と思いましたが(笑)、OKがでたときは嬉しかったです。恥ずかしさは捨てようと思って演じ切りました。中途半端が一番よくないので。
主題歌に込めた不気味さ
――今回、主題歌「distortion」も歌われてますね。曲調がすごくテンポ感もあって、でもダークでもありつつ、サビはポップになっていて、不気味さがすごくあるなと思いました。なので、あえて淡々と歌う方が、よりその不気味さが活きてくるかなと思って、感情を込めたりとか、変えたりっていうのはあまりせずに歌うことを意識しました。
――では、改めて『エリカ』というドラマを通じて感じて欲しいことを教えてください。
「この女の子は次に何をするんだ……?」という先の読めない展開にゾワゾワしてほしいです。
「主演の鏡すぎる」先輩俳優から学んだ現場での姿勢

『倫理~』はオーディションのとき、すごい緊張しながら、でも、なんとなく自分の中でうまくできたかもって思いながら臨んだことを覚えています。そのオーディションの相手役も同じ生徒役で共演することになる池田(優斗)くんでした。
山田(裕貴)さんがとにかく主演の鏡すぎて、いつも親身になって生徒たちの話や役の悩みを聞いてくれて。主演としての背中をたくさん見させていただいて、勉強になりました。
――『霧尾ファンクラブ』(2025年)では、これでもかというくらい変顔を披露して、とてものびのび楽しく演じている印象を受けました。
そうですね。あそこまで変顔したこともなかったですし、アドリブも多くて。完成した作品を見てたら「ここも使ってるの!?」みたいな(笑)。ホントに自由な感じで監督もけっこう任せてくれて、莉子ちゃんとの共演回数も多いですし、お互い安心しきってお芝居できていたなっていう感じがします。
誰よりも長く芝居や役に向き合いたい
――今、俳優としての自分を見つめて、伸ばしていきたい部分や大事にしたい部分は?今まで自分の芝居を見て納得できたことはないですし、自信もないですけど、自信がないからこそ、誰よりもお芝居や役に向き合う時間は長くありたいなと思います。寄り添っていたいなっていうのは常に思っています。

そうですね。自分が満足いくまでギリギリまで役と向き合えるのが強みかなと。もちろん作品にもよりますけど、あまり台本を読み込まず、セリフだけキチンと覚えてあとは相手から受け取ろうと思って臨むこともあります。
昔は泣く芝居が全然できなくてすごく苦手だったんですけど、最近はいろいろアプローチの仕方を変えて、少しずつですけど感情が高ぶるシーンもできるようになってきました。
「喋りかけづらい」第一印象と真逆の明るい性格
――周りからは茅島さんてどんな人って言われることが多いですか?第一印象は「喋りかけづらい」。「笑うんだ?」って言われたこともあって。「笑うわ!」って(笑)。
でも、めちゃくちゃ真逆で、すごく根は明るいというか、話すのも大好きなのでよく笑います。基本、楽しいこと大好きなんですけど、人見知りなので、なかなか自分から話しかけることができなくて。それでよりクールに見られてそのまま撮影が終盤に差し掛かることも多々あります。「やばい。まだクールに思われてる……」って(笑)。

はい。小さい頃はすごいメンタルが弱くて、今もそんな強い方じゃないですけど、ゴルフで鍛えられた感覚はけっこうあります。
――どう鍛えられたのですか?
やっぱり同い年の子たちとの勝負ですし、大会だと4時間も一緒にコースを回らなければいけないので、私、今3位だとか2位だとか、順位が常にずっとついて回ってくるんです。
そんななかで、自分が失敗したときに相手がいいスコアを取ってたりすると、いかに自分自身と戦えるか、となってきます。相手に流されない、という部分では4時間メンタルの戦いなので。
――こうして話していても、全然、メンタル強そうですよ。
まったくそんなことないです! ゴルフをやっていたときはすぐ泣いてました。ワンショットでも失敗したら、もう終わった~負けた~、で、泣きながらプレイする、みたいな(笑)。
自分で自分の機嫌を取れる人になりたい
――7月6日で21歳になったばかりですが、20歳はいかがでしたか?楽しかったですけど、お酒が飲めるようになったぐらいですね。20歳って「大人」として見られる感じがありますが、逆にいつまでも子どもでいたいなっていう気持ちはあります。
――まだ大人にはなりたくない?
はい。ずっと甘えてたいですね(笑)。

自分の機嫌を自分で取れる人。私はけっこう取れてるつもりで、顔に全部でちゃってるみたいで、友だちにも親にも「機嫌が直ってないよ」とかよく言われます(笑)。
自分ではニコニコしてるつもりだけど全部顔に出てるとか、目が笑ってないとか。
【茅島みずき】
2004年、長崎県生まれ。今夏まで「Seventeen」専属モデルを務める。主な出演作は、ドラマ『ここは今から倫理です。』『おかえりモネ』『卒業式に、神谷詩子がいない』『教祖のムスメ』『 明日、私は誰かのカノジョ Season2』『霧尾ファンクラブ』、舞台『Romeo and Juliet –ロミオとジュリエット–』、映画『女子高生に殺されたい』『交換ウソ日記』など。「ゼクシィ」14代目CMガールほか、多数のCM・広告に出演中。最新主演ドラマ『エリカ』は8月1日(金)からFODにて配信スタート。Instagram:@mizukikayashima_official
<取材・文/中村裕一 撮影/星 亘(扶桑社)>
【中村裕一】
株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Xアカウント:@Yuichitter