―[ゼロ恋愛 ~経験値ゼロから学ぶ恋愛講座~/堺屋大地]―

 こんにちは、恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラーの堺屋大地です。
 筆者はLINE公式サービスにて計1万件以上のチャット恋愛相談を受けてきました。
また知人経由で対面の相談を受けることも多く、性別・年齢問わずさまざまな方の恋のお悩みをうかがい、知見を深めているのです。

 2020年国勢調査によれば、日本人の「生涯未婚率」(50歳時の未婚割合)は年々上昇しており、女性は17.8%、男性に至っては28.3%にも及びます。そんななかで、恋愛がうまくいかないという方々にも筆者の知見が少しでも役に立てばなによりです。

令和の恋愛観に“ヤラハタ世代”が危機感を持っているワケ。「“...の画像はこちら >>

「彼氏彼女がいる人のほうがいない人よりも“上”」だった時代

 前述したとおり生涯未婚率は上昇傾向にあり、今年秋に行われる予定の最新の国勢調査では、またさらにこの数値が上昇している可能性は高いです。

「恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー」という肩書きの筆者からすれば、より多くの人が恋愛に積極的になってもらいたいですし、日本の少子化に歯止めをかけるためには、未婚の方々が結婚に前向きになってもらう必要があると考えています。

 しかし、そんな個人レベルのミクロな視点や、国レベルのマクロな視点を抜きにして語るなら、「もう“恋愛”は古い」という時代に突入していると言わざるをえません。

 違う言い方をするとしたら「もう“恋愛至上主義”は廃れた」ということです。

 現在40代中盤の筆者が10代後半から20代前半の時期は、1990年代後期から2000年代前期であり、この時代はまだ圧倒的に“恋愛至上主義”が主流派でした。

 批判を恐れずに当時の空気感を率直に表現するなら、

≪彼氏彼女がいる人のほうがいない人よりも“上”。コミュニティ内の地位が高い≫

≪童貞は経験者よりも劣っている。処女はできれば早く捨てたほうがいいもの≫


 といった、現代では考えられないような価値観が当たり前のように蔓延していたものです。

「ヤラハタ」というスラングによって植え付けられた強迫観念

 当時を象徴するスラングに「ヤラハタ」というものもありました。性行為を経験しないまま二十歳を迎えることを揶揄する俗語で、要するに童貞のまま成人年齢(当時)に達することは恥ずべきことという強迫観念を植え付ける言葉でした。

 筆者は中高生のころスクールカースト的に4軍男子で暗黒時代真っただ中。
けれど「ヤラハタ」という言葉にケツを叩かれるように無理やり大学デビューを果たし、19歳で性行為を経験したという、まさに当時の若者を支配していた“恋愛至上主義”に踊らされた人間です。

 要するに当時の「恋愛」は、みんなが履修していないといけない“必修科目”。

 当時から自身の意思で「恋愛をしない」という選択をしていた人もいましたが、恋愛をしていないとイジられたり、後ろ指を指されたりすることは、決して珍しくなかったのです。

かつて恋愛は“必修科目”だったが現在は“選択科目”になった

 しかし、時代は変わりました。

 ひとつの限定された価値観が圧倒的な主流で、“普通”・“当たり前”としてまかりとおっていた時代は終わり、現代は「価値観の多様性」が重んじられています。

 かつての恋愛は“恋愛至上主義”の蔓延によって“必修科目”でしたが、いまは“選択科目”に変わったのです。

 恋愛を“する”も“しない”も本人の自由。どちらの価値観も尊重される。

 恋愛しているほうが“上”ではないし、していないほうが“下”ということもない。

 恋人がいないことや性経験がないことをイジったり嘲笑したりすることは御法度。

 恋愛にまつわる常識はこのような認識に変遷したのです。

 その結果、かつては「ヤラハタ」という強迫観念に飲み込まれて、なかば強引に恋愛をせざるをえなかった層が現代ではいなくなり、恋活を無理強いされることもなくなりました。

「恋愛しなきゃ!」「モテたい!」はダサくてみっともないのか?

 当然ながらいまは恋愛に積極的な人口は減少。特に若い世代におけるその割合はだいぶ減っています。


 ただ、いまは過渡期でもあり、まだ恋愛についての認識は変遷しつつあるのです。

 一昔前までは、恋愛していない人や性経験がない人が揶揄されていたことへのカウンターのように、いまは「恋愛しなきゃ!」「モテたい!」と必死になっている人を、「ダサい」「みっともない」「恥ずかしい」とする空気感が浸透しつつある気がします。

 それが「もう“恋愛”は古い」という時代になっているという由縁。

 ……なのですが、筆者が今回、みなさんに一番伝えたいことは次の提言です。

「恋愛しなきゃ!」「とにかくモテたい!」と恋愛に躍起になっている人に呆れたような態度を見せたり、恋愛で感情が搔き乱されてアンコントロールになっている人に冷めた視線を送ったりすることは、それはそれで「価値観の多様性」に不寛容ではないでしょうか?

恋愛に必死になりたい人が、恥ずかしがることのない空気感に

 とにかく恋人がほしいと必死になっている人、とにかくモテたいと躍起になっている人の価値観を、「ダサい」「みっともない」「恥ずかしい」と切り捨てずに、肯定してあげてほしいのです。

 恋愛に一生懸命になりたい人が、恥ずかしがることも躊躇することもなく、恋に没頭できるような空気感が世間に浸透していくことを願っています。

<文/堺屋大地>

―[ゼロ恋愛 ~経験値ゼロから学ぶ恋愛講座~/堺屋大地]―

【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。本連載意外に『SmartFLASH』(光文社)でドラマコラム連載、『コクハク』(日刊現代)で芸能コラム連載。そのほか『文春オンライン』(文藝春秋)、『現代ビジネス』(講談社)、『集英社オンライン』(集英社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『女子SPA!』(扶桑社)などにコラム寄稿。LINE公式のチャット相談サービスにて、計1万件以上の恋愛相談を受けている。公式SNS(X)は@SakaiyaDaichi
編集部おすすめ