今回は、親がうっかり見逃してしまいがちなむし歯の原因、歯磨きの落とし穴と、今日からできる具体的な予防策について詳しく解説します。
むし歯のリスク、子どもは特に高い!

むし歯予防に重要な歯磨きも、子ども本人任せではうまく磨けず、むし歯のリスクを高めてしまいます。親のサポートが不可欠ですが、親の言うことを聞かないということも少なくありません。
親が見逃しやすい、むし歯の原因とは?
①“仕上げ磨き”の過信
仕上げ磨きは9歳くらいまでを目安にして、その後12歳までは「奥歯までしっかり磨けた?」や「歯医者さんで歯磨き残しがあったよと言われたところも磨けた?」などの声掛けを行ってほしいです。
また、「仕上げ磨き」はさっとなぞるように磨くのでは意味がありません。磨き残しの多い奥歯や、歯と歯茎の境目などを重点的に磨いてください。
②甘い飲み物やおやつの頻度が多すぎる

ジュースやスポーツドリンク、グミやスナック菓子などの「ちょこちょこ食べ」は、歯が酸にさらされる時間を長くし、むし歯のリスクを高める原因となるのです。おやつやジュースは親が量と時間を決めてあげて下さい。
③歯磨きのタイミング
食べたら歯磨きを心掛けてほしいのですが、特に夜寝る前の歯磨きは重要です。夜は唾液の分泌が減少し、お口の中の細菌が洗い流されません。そのため、細菌が繁殖しやすい夜寝る前の歯磨きを怠るとむし歯が進行しやすくなります。
④歯ブラシの選び方・使い方の誤り
子ども用の歯ブラシを選ぶ際、ヘッドの大きさや毛の硬さに注意が必要です。大きすぎるブラシは奥まで届かず、硬すぎる毛は歯茎を傷つけてしまうことも。また、歯ブラシの交換を怠ると、毛先がしっかりと歯面に当たらず磨き残しが増えてしまいます。2週間に一度は歯ブラシの確認をしてみて下さい。
⑤歯磨き粉(フッ素)の活用不足

濃度や使用法を間違えたら怖いという声も聞かれます。年齢に応じた正しいフッ素入り歯磨き粉を選ぶ、定期的に歯科医院でフッ素塗布を受けるといった工夫が大切です。
⑥「むし歯は乳歯だけの問題」という思い込み

また、幼少期でのむし歯治療経験が“歯医者は怖い”と印象付けてしまう可能性もあります。
正しい歯磨きの方法

自分磨きの際、力を入れすぎず優しく1本1本小刻みに動かすことを促し、仕上げ磨きでも同様にしてください。自分磨きも仕上げ磨きも、方法の確認のために歯科医院で歯磨き残しのチェックを行いましょう。フロスは使えそうであれば使用してほしいのですが、一度歯科医院で方法を教えてもらってから行ってください。
歯科医院との連携も大切

「毎日歯磨きしているから大丈夫」ではない!
親として、子どもの歯を守るためにできることはたくさんあります。「毎日歯磨きしているから大丈夫……」という油断が、むし歯につながることも。正しい知識と実践で、大切な歯を守りましょう。将来、子どもが健康な歯で笑えるように、今日からできるケアを始めてください。<文/野尻真里>
【野尻真里】
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。