―[振り返れば青学落研]―

YouTubeチャンネル登録者数190万人を突破した「バキ童チャンネル」。
唯一無二の企画とキャラクターを活かした動画が支持される一方で、中心メンバーのお笑いコンビ、春とヒコーキが出会った青山学院大学・落語研究会についてのエピソード動画も強い人気を集めている。


そんな「青学落研の話」を、チャンネル出演者であり、青学落研出身者であり、春とヒコーキの学生時代からの友人でもある芸人・町田が綴っていく連載。

第18回は町田が大好きな後輩、回転寿し好き助について。

青学落研で最も面白い存在「回転寿し好き助」の話。落語好きな青...の画像はこちら >>

回転寿し好き助の恋

好き助は学年で言うと私や土岡の1学年下、ぐんぴぃの2学年下である。

外見はぐんぴぃのサイズ感を小さくしたような見た目で、愛嬌のある青年であった。性格は穏やかで勤勉、そして内に秘めたる狂気を持つ男。

また、落語への知識、愛情も入部当初より抜きん出ていて、当時、全盛であったジャスティン・ビーバーに対しても「その人は立川談志より面白いの?」と言ってのけた。

私が好き助を最も贔屓にするようになった出来事がある。

好き助は2年生の時に他大学の女子部員に一目惚れをした。好き助は、落語の大会の決勝に行ったらその女子部員に告白すると決めたのだ。

それからの好き助の稽古への熱量は凄まじかった。

選んだ演目は「恋愛シミュレーションゲーム『アマガミ』に登場するヒロイン・綾辻さんに相対する主人公のセリフを練習している落語」で、登場人物になりきって、学生寮の自室でも舞台上の声量で練習していた。

当然、隣室の学生からの苦情が寮長にいくことになるのだが、寮長もまた好き助の頑張りを把握していて、「あの子、落語がんばってるの。許してあげて」と言わしめるほどであった。


そんな苛烈な稽古を経た好き助の落語を、大会前に私が先輩としてネタ見せで披露してもらったが、小肥りの男性が珍妙な声を上げながらダイナミックに跳ね回り、奇っ怪でありながら落語としての語り口や表現は非常に完成されているという、見事な仕上がりで全く言うことなしであった。

そうして迎えた学生落語の大会の予選、好き助は完璧に演じ上げ爆笑をかっさらい、大会への決勝へと進出した。2年生で決勝進出というのはかなりの快挙である。

好き助の意中の女性への熱い想いを聴いていた私はこの快挙に思わず涙してしまった。

大会の決勝でも好き助は躍動し、準優勝という華々しい成績を飾った。

電話での告白中に起きたこと

そして好き助は告白をする。好き助は自分の家から意中の女性へと電話をかけた。

「あの、〇〇さんのことが好きで…」

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

「チャイムなってるんで、出たほうがいいんじゃないですか?」

一旦告白を中断し、玄関のドアを開ける好き助。玄関には誰もいない。まさかの告白中のピンポンダッシュであった。好き助がその部屋に住んでいて、後にも先にもピンポンダッシュはその一回だけと後に語る。

「〇〇さん、好きです…!付き合ってください…!」

「ごめんなさい…!」

好き助の告白はあえなく失敗に終わってしまった。

理由は様々あるだろう。
決勝に行って告白をしたものの、そこまでに関係を深められていなかったことや、私たち周囲の人間は「絶対に付き合えるぞ」と好き助を後押ししたが、特に決勝に行ったからといってそもそも付き合うとかとは別の話というところもあっただろう。

そこからの好き助の変貌たるや。

変貌した好き助に部員たちが思ったこと

前触れもなく電動ひげ剃りで頭の右半分を剃り、真冬でもタンクトップで過ごすようになってしまった。

極めつけはクリスマスの時期に、恋愛シミュレーションゲーム「アマガミ」の綾辻さんを表示したままのPSPを持ち歩き、読売ランドのイルミネーションを鑑賞し一緒にツーショットの写真を撮っていた。

当時の部員は皆同様に感じていただろう。好き助は完成し、青学落研において最も面白い存在になったのである。

好き助の大学卒業後の歩みも大変に素晴らしい。

新聞記者になり、早々に暴いてはいけない地元の談合を暴いてしまい退職。

学校の先生となるも童貞が生徒にバレて鬼イジリにあう。

ドラッグストアの女性店員に一目惚れし、覚えてもらうために、毎日好きな店員さんのレジで生肉を買い続ける。

レジにて購入後、たまたま生肉のトレイのラップが破けていて好きな女性店員さんに話しかけられたが、勇気が出ず生肉を抱きしめてその場を走って立ち去る。

彼の動向は今後も見続けていかねばならない。


回転寿し好き助、なんと愛すべき男であろうか。

―[振り返れば青学落研]―

【町田】
ぐんぴぃの友人。芸人としての活動もしている。@saisaisai4126
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