造設現場で盛り土が崩落「いつか大惨事になる」
奈良県でもメガソーラーをめぐる紛糾が続く現場がある。山下真県知事は五條市の県有地に25haの大規模太陽光発電所を整備する構想を発表したが、県議会や地元住民の強い反発を受けて、今年1月に断念。パネルの敷地面積を大幅に縮小すると方向転換した。このように計画が止まる事例もあるが、開発が強行されてしまう場所もある。
奈良県北西部にある平群町には、一度も伐採されたことがない自然林に5万枚超のパネルを敷設する計画が進んでいる。
今年の5月、雨により造成地の盛り土が崩落したその場所だ。取材班が山道を行くと突如、現場が現れる。
「急勾配に雨水の排水路を造ったことで、一気に水が流れ出して土堰堤が崩壊。土砂が町路まで流出しました。もし車が通っていたら大惨事でした」
ブルーシートで覆われた崩落箇所を指差しながら憤るのは、「平群のメガソーラーを考える会」の代表を務める須藤啓二さん。
1級土木施工管理技士の資格を持つ須藤さんは事業者の工事設計に疑問を覚え、県に提出した書類を調べると、杜撰な内容だった。
数値改ざんに産廃が混入した盛り土…

今年1月、地元住民は事業者を相手取り、工事の差し止めと県に対して林地開発許可の取り消しを求めて提訴。
平群町に40年暮らす男性は「よそ者が山を壊していて許されへん」と怒りをあらわにする。そのなかで今年8月、初めて事故現場を視察した須藤さんは新たな問題を突き止めた。
「工事業者は、産業廃棄物が混ざった土を盛り土に利用していたんです。自然破壊レベル以上の蛮行。危険性も高いので、盛土規制法で調査すべきだと県に訴えています」
11月には、再び開発許可の取り消しを求める控訴審が始まる。県の誠意ある対応が見られない場合には、事業者を廃棄物処理法違反で刑事告訴することも検討中だという。
パネルに囲まれた古墳「管理放棄が不安」

奈良市古市町の護国神社前池中古墳だ。’18年から稼働した発電所では、池全体にパネルが敷き詰められているが、古墳の頭だけがひょっこりと出ている状態だ。
文化財保護法の観点で疑問が呈されたが、地域住民は「パネル問題なんて、奈良新聞でも取り上げられないから知らない」とそっけない。“古墳ソーラー”はひっそりとそこに在り続けている。
耐用年数経過後の“責任”は果たして…

「『景観は悪いかもしれないけど実害はないから』と話す人がほとんど。古墳の大小を問わず、県が文化財保護の意識を広めるべきでしょう」
このメガソーラーの管理を行う事業者の本社が、香川県にあるのも気がかりだという。
「’40年には耐用年数を過ぎるという太陽光パネルの廃棄場所が問題視されていて、’18年から運転を開始しているこのパネル群も該当します。事業者が管理を放棄してしまわないか不安です」
古墳を取り囲む太陽光パネル群は奈良県に限らず全国各地に点在する。その問題意識は今ようやく広がりつつある。
取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
―[[メガソーラーが壊す日本]の惨状]―