「部下がこう育ってくれたら助かるな」「上司がこんな風に接してくれたら嬉しいな」
そんな理想があるのに、相手がなかなか思うように動いてくれず、イライラしてしまったり、不満が溜まってしまうこと、ありませんか?
こちらの要望をどう伝えたらいいものか悩みますし、直接的に伝えても、相手の心情やプライドを傷つけてしまい、逆効果になってしまうこともあります。
でも実は、ちょっとした一言で、相手の行動を“自然に”変える方法があります。
昼は経済レポーターとして超富裕層の投資家や上場企業の社長に数多く接し、夜は銀座No.1ホステスとしてトップクラスのビジネスパーソンを接客してきた私、山崎みほが、現場で学んだ「人の心の動かし方」や「お金との向き合い方」などをお届けします。ビジネスマンのあなたの「今日から使える武器」になれば幸いです。
銀座ホステスが使う、先手必勝のテクニック
相手の行動を自然に変える方法。それは“褒め言葉を先回りして使う”ことです。人は「自分は他人からこんなイメージを持たれているんだ」と自覚すると、そのイメージを守ろうとします。
これを行動経済学では“ラベリング効果”といいます。まさに自分に貼られた「ラベル」の通りに動こうとするのです。
夜の銀座では、ホステスに不用意なボディタッチをされそうなお客様には、まだまともな会話をしている段階で「○○さんって紳士ですね、安心します」と、同伴をドタキャンされそうな予感のあるお客様には、予定通りに来店してくださっているうちに「○○さんって約束守ってくれるから、信頼できます」と、先回り…つまりフライングして言ってしまいます。
するとどうなるかーー自分の良いイメージを壊さないよう、誠実であろうと努力してくれるのです。
「紳士ですね」と言われた後にボディタッチをしたら嫌われてしまいますし、「信頼できる」と言われた後にドタキャンをするのは、せっかくの信用を失ってしまうことになります。
ポイントは、してほしくない行動を相手が取る“前”に先手を打って褒めること。予防線を張るのです。
一度でもボディタッチやドタキャンをされた後では、こうしたセリフは使えなくなってしまいますからね。
ビジネスの現場でも効果絶大
“ラベリング効果”は、教育の現場でもよく使われています。相手が子どもでも同じなのです。大人から「○○くんはできる子だよね」と言われれば頑張ろうとしますし、「どうせダメな子だ」と言われれば勉強したくなくなってしまいます。
ビジネスの現場でも、部下に「君はいつも立派なプレゼンをしてくれるね!」と言えば、次も良い提案をしようと力を尽くしてくれるでしょう。
逆に「ミスが多いね」と言いつづければ、本当にミスが増えていきます。
「自分なんてどうせ良く思われていないから、どうでもいいや」と、やる気を失ってしまうのです。
上司だって同じです。「部長はいつも冷静に判断してくださいますよね」と伝えると、感情的な対応を避けてくれるかもしれません。
ここぞの瞬間の褒めでリピートを引き出す

いつもこちらが望んでいるのになかなかやってくれないことを、めずらしくやってくれたタイミングで、ここぞとばかりに使うことも効果的です。
たとえば夜の世界では、シャンパンなんて入れてくださることのなかったお客様が、なにかのお祝い事で初めてシャンパンを入れてくださったときに「こんなことがサラリとできるなんて、〇〇さんカッコいい!」と、これでもかというぐらい大きなリアクションをするのです。
すると、「こんなに喜ばれるなら悪くないな」と思ってまたシャンパンを入れてくださるようになります。
ポイントは、相手も気持ちよく動いてくれること
人は、自分の良いイメージを守るためなら多少の努力を惜しみませんし、褒めてくれる人のために頑張ろうと思うもの。女性にだって、付き合いが長くなってあなたのためにわざわざお洒落をしなくなってきた頃に「最近、手を抜いてない?」なんて指摘したら気持ちを逆なでしてしまいます。
私も、「みほちゃんって、いつも穏やかだから会うと癒される」なんて言われたら、ちょっとくらいムッとすることがあっても怒れなくなってしまいます。
やって損はない“フライング褒め”の技術。こちらの要望を通すだけでなく、相手も気持ちよく動いてくれるようになる、Win-Winのコミュニケーションです。上手く使って、ビジネスを円滑にまわしてみてくださいね。<文/山崎みほ>
―[経済レポーター×銀座No.1ホステス・山崎みほ]―
【山崎みほ】
経済レポーター。証券外務員一種/行動心理士。
株式投資情報のレポーターとして、上場企業の取材記事や経済ニュースを執筆。Yahoo!ファイナンス、YouTube等メディアでは上場企業社長のインタビューも行う。また、銀座の高級クラブでホステスとしても勤務、心理学と行動経済学の知識を基にNo.1を獲得。経済レポーターの深い洞察力と人気ホステスとして培った対人関係術を融合し、夜の世界では1日40組、昼間の営業職では成約率90%の成績を上げるなど、昼夜問わず結果を出すスタイルを築いている。Xアカウント:@mihoy001