8月28日、まさに青天の霹靂のように発表された、中島裕翔のHey! Say! JUMPからの卒業。
卒業ライブなどファンとの直接のお別れの機会もない当日付けの発表で、3日後に控えた大型イベントも、中島を含めた8名でのリハーサルまで行っていたようだが急遽欠席としての扱いとなった。
Hey! Say! JUMPのメンバーとしての中島裕翔はこの世から消滅した。
あまりにも突然の発表。中島は現在、ソロのタレントとしてSTARTO ENTERTAINMENTに所属しているが、その卒業に至る理由は結局現時点でも詳細がわからないままといっていい状態だ。
「一般層」から見た中島裕翔
STARTO社のグループに所属するメンバーの卒業や脱退自体は別段珍しいことではない。ここ数年でも何人もの人気アイドルがグループを卒業・脱退、あるいは退所するなどしている。中島裕翔もその一人といっていいだろう。その端正な顔立ちと高身長のスタイルの良さなどはよく知られていることと思うが、JUMPファンあるいはSTARTOファン以外のいわゆる「一般層」にとっての中島裕翔のイメージは、もしかしたらアイドルグループHey! Say! JUMPのメンバーという以上に、“俳優”というイメージのほうが強かったりするかもしれない。
たとえば『半沢直樹』(‘13年 TBS系)の若手行員・中西役や、『デート~恋とはどんなものかしら~』(’15年 フジテレビ系)でヒロイン依子に思いを寄せる鷲尾役などは強い印象を残し、一時期は一部で役名で呼ばれるほどの認知度の高さをみせていた。
その後も数多くのドラマや映画、舞台などに出演。
今年に入ってからも『秘密~THE TOP SECRET~』でも板垣李光人とのダブル主演をつとめるなど俳優としての活躍も続き、30代半ばにさしかかろうかというタイミングでアイドルを卒業し俳優業に専念するというのは、自然の流れのように見える。
おそらく「一般層」の視点ではそうかもしれない。
「ゴリ押し」と言われるほどの注目ぶり
しかしJUMPファン、ともすれば男性グループアイドルのファン視点では、グループのメンバーというものはできるだけ欠けて欲しくない存在であり、これまでもグループ活動しながらドラマや映画に出てこれたのになぜ?となるのはわかる。Hey! Say! JUMPが「Ultra Music Power」でCDデビューを飾ったのは2007年の11月14日のこと。当初は10人組グループで、中島裕翔はその実質的なセンターとして知られていた。
それ以前に、05年の木村拓哉主演ドラマ『エンジン』(フジテレビ系)に出演するなどジャニーズJr.(現ジュニア)時代からすでに注目されるような存在だった。
同年の『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)では亀梨和也演じる修二の弟役として出演。同作の主題歌で亀梨と山下智久によるその役名でのユニット「修二と彰」でリリースし大ヒットした『青春アミーゴ』を歌番組で披露した際には間奏部分で二人の間に入りソロダンスを披露するなど、一部には「ゴリ押し」という心ない声も生まれるほどの注目ぶりであった。
山田涼介との関係性

しかし、だ。2006年から日本テレビ系で放送された連続ドラマ『探偵学園Q』に出演した山田涼介が爆発的な人気を獲得し、その勢いを残したままJUMPがデビューしたことにより、JUMPデビュー時からしばらくの間は山田一強のような状態が続く。
デビューほどなくして、センターの座も山田にとって変わられる。
当時のことはのちに本人たちもたびたび振り返っているが、確執のようなものも生まれ、時にはぶつかることもありながら、長い活動の中でお互い理解とリスペクトを深め、いつしか心強い存在へと変化していったことは彼らの絆を強めたストーリーの中でも重要な要素だ。
中島と山田といえば、‘12年リリースのシングル「SUPER DELICATE」のサビ部分で、二人が至近距離で顔がくっつくほどに向かい合うパートがあり、コンサート時のその瞬間は、アリーナやドームが揺れるほどの歓声に包まれたことも強い記憶にある。それらも失われることも大きな喪失だ。
ドラマー&カメラマンとしても活躍
そんななか、中島はこだわり屋、好奇心の強さなど、趣味人としての資質を少しずつ開花させていく。特技であったドラムのスキルはどんどん上昇し、JUMPがバンドスタイルで演奏するときのリズムの要として、バンドを引っ張る存在だった。
ひたすら明るく動きも大きい、そしてコンサートの際にファンを煽るような役割も担っていた部分もあった。いわゆるムードメーカー的存在でもあったかもしれない。
ファンが喪失感をおぼえる大きな理由のひとつは、カメラマン・中島裕翔の喪失もあるだろう。
趣味ではじめたカメラの腕もプロレベルとなり、たとえばカレンダーなど、Hey! Say! JUMPが公式で展開する写真などにもカメラマンとしての腕を存分に発揮してきた。
なかでもメンバーだからこそ撮影できた数々のメンバーのオフショットの自然な表情などへの人気は高く、この先それが見られないことを嘆く声は多数みられた。
話題になった卒業ドッキリのリアリティ
しかし、前述の通り、話題のドラマなどで俳優としての活躍の幅を広げていた中島は卒業、独り立ちが早いのではということを懸念するファンも一部には存在した。過去のドッキリ番組で中島卒業をネタとしたときのメンバーの受け止め方がリアルすぎて、笑えないという声も多数あがったほどではあった。
何年も前から、他のメンバーよりもグループを卒業することへのリアリティはあったことも確かだ。
もしかしたらまたドッキリじゃないのか!? 最初にそう感じたメンバーもいたかもしれないというくだらない妄想もよぎった。
Hey! Say! JUMPは、デビューの段階からさまざまな紆余曲折を経ながら強い絆を作り出したグループだ。
Hey! Say! JUMPの絆を感じる歌詞
彼らの15周年を記念するツアーのラストに披露された、「サンダーソニア」という曲。この曲は、そういった彼らの絆のようなものを強く感じさせるような内容でもあり、ファンの人気も高い。曲の後半に、こんな歌詞がある。
<只此処に咲いた僕らは 二度と離れない
一つも枯らさない>
10人組としてデビューした彼らが、この時点で8人となり、ここからは誰も欠けない(枯らさない)ことをファンと共に誓い合うような、そんなメッセージに受け止められる。
2年後の20周年も、この8人のまま、この曲をパフォーマンスする姿を夢見ていたファンも少なくなさそうだった。
そして、この曲で大きな会場を煽り、ラストのパートを薮宏太とともにハモる中島裕翔の存在感がとても大きかったことも、あらためて感じる喪失だ。
中島裕翔がどのように考え大きな決断をしたのかは分からない。
Hey! Say! JUMPというグループのファンにとっては、その喪失はあまりにも大きいかもしれない。少しだけ静かになったかもしれない。
しかし、その喪失をかき消すような活躍をみせること。花が一輪枯れたわけではない、別の場所で咲いているんだ、そう感じさせること。
それが中島裕翔にとっても残る7人にとってもこれからの大切な目標になる、そんな気がしている。
<文・太田サトル>
【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。