インバウンド需要に沸いている日本。観光地はもちろん、大きな都市ではどこに行っても外国人の姿が目に入ってきますが、日本に住み、インフレ&物価高の影響を大きく受けている日本人からすると「日本の何がそんなに良いのか?」と疑問に思ってしまいますよね。

そこで、すこし日本にゆかりのある外国人に「日本の印象」を聞くことで、我々が忘れかけていた日本の素晴らしさに改めて気づくことができるかもしれません。

「間違いなく世界トップクラス」日本を観光した26歳の中国系ア...の画像はこちら >>
アメリカ・ユタ州の大学でマーケティングを専攻し、卒業後は両親といっしょにユタ州北部の郊外で飲食店を経営するリオさん(26歳)。9歳のときに家族で渡米した中国生まれのアメリカ人です。2024年12月に、家族4人で初めて日本を訪れました。3日間という短い日本滞在で訪れた場所は、東京と京都、そして兵庫。期待を超える体験ばかりで、「日本に住んでみたい」とまで感じたそうです。そんなリオさんに詳しいお話を伺いました。

夜の幻想的な浅草寺に息をのむ

「間違いなく世界トップクラス」日本を観光した26歳の中国系アメリカ人男性が魅了された場所とは
ライトアップされた夜の浅草寺
日本での移動は、新幹線や電車だったそうです。成田国際空港に到着後、新幹線に乗ってホテルのある東京中心部へ向かいました。

「東京という大都市なのにとても清潔で、人々がきちんとルールを守っているんです。地下鉄でもみんなが整然と並んで、割り込みする人がいません。アメリカとは違います」

地域にも寄りますが、アメリカでは電車やバスの乗車時に必ずしも列ができるとは限りません。人がいっせいに乗り込もうとする光景も珍しくなく、「順番を守る」ことが徹底している日本の公共交通は、リオさんにとって新鮮な驚きだったのです。


日本に到着した初日の夜、ホテルに荷物を置いて浅草寺を訪れたリオさん。

「巨大都市・東京の真ん中にある美しい伝統的なお寺でした。行ったときはすでに屋台は閉まっていましたが、私たち家族も参拝をして、おみくじを引きました。

翌朝は人工の島・お台場へ、そして秋葉原へも行きました。朝の澄み切った青空と、冷たい空気の清々しい香りを今でも鮮明に覚えています」

言葉を一つひとつ丁寧に選びながら、静かな口調で話すリオさん。短い滞在ながらも、東京の昼と夜の表情の違いや、街ごとの個性に触れることで、すべてが新鮮で、心に強く焼きついた旅になったといいます。

車窓から見た森と霧の景色が旅を彩る

翌朝、電車で京都を経由して兵庫県の城崎温泉へ向かったリオさん。道中、車窓から見えた自然が印象的だったそうです。

「日本の歴史の深さを感じました。日本の森はとても神秘的で、山から霧が立ち上がる景色が本当に美しかったです。村や森林などの田舎の風景もすごくひかれました」

生まれて初めての日本旅行を、真冬の12月に楽しんだリオさんですが、それには理由があったのでしょうか。

「日本の夏は暑いって聞いていたんです。アジアは全体的に湿気があってすごく暑いので、11月か12月が最適だって。
滞在中の天候はとても素晴らしかったです」

「間違いなく世界トップクラス」日本を観光した26歳の中国系アメリカ人男性が魅了された場所とは
城崎温泉街で泊まったホテルの部屋からの景色
リオさんが見せてくれた、車窓から撮影した動画はすべて冬の曇り空。どんよりした灰色の空の下、山から霧が立ち上がる景色に感動したリオさん。気候の不便さを欠点とせず、旅の一部としてとらえる彼の温かい人柄がにじみ出ます。

「将来は日本でハイキングやキャンプもしてみたいです。ユタ州の砂漠とはまったく違う自然なので、そのコントラストが新鮮でした」

裸でつかる温泉、カルチャーショックから感動体験へ…

リオさんには、カリフォルニア州に住む日本が大好きなお兄さんがいます。実は今回の日本の温泉旅行は、そのお兄さんが計画したものでした。

「旅行の計画は、カリフォルニアに住んでいる兄が全部立ててくれました。日本語も少し分かるし、漢字も少し読めるので、電車の旅には困りませんでした。

兄は以前にも日本へ行ったことがあって、『この温泉はすごくいい』といって、城崎温泉へ連れて行ってくれたんです」

「間違いなく世界トップクラス」日本を観光した26歳の中国系アメリカ人男性が魅了された場所とは
「夢のような旅だった」と語るリオさんが見た温泉街の風景
日本の温泉と違い、アメリカでは水着着用が基本です。生まれて初めての「裸で入る温泉体験」に抵抗はなかったのでしょうか?

「兄が事前に説明してくれていたので、大丈夫でした。最初はちょっとカルチャーショックでしたけど、実際に入ってみると全然平気で、むしろすごく気に入りました。日本の温泉が大好きになりました。

日本の温泉は間違いなく世界トップクラスです。
兄はいつも『日本の温泉に勝るものはない』と言っています。アメリカの温泉との一番の違いは、それぞれの温泉にある深い伝統や文化だと思います。それが体験を忘れられないものにしてくれるんです。浴衣や屋台、そしてお祭りのような雰囲気。すべてが本当に特別な体験でした」

日本の温泉街では、浴衣を着たまま街を歩く人の姿も見られますが、リオさんにとって違和感はなかったのでしょうか?

「浴衣を着るのはとてもワクワクしました。家族全員で浴衣を着て、温泉のスタッフがそれぞれに木の下駄を用意してくれたんです。胸が高鳴る体験でした」

日本旅行を通じて芽生えたアジア文化への興味

日本ではコンビニエンスストアが気に入り、そこで売っていた果汁入りグミが大好きになったリオさん。日本のお菓子を、お母さんと取りあいになったエピソードを語る様子に、無邪気な一面が垣間見られます。

日本のアニメや映画の音楽に興味があり、いつか今回の日本の旅を映像にまとめたいそうです。

「菅野よう子さんが好きなんです。『カウボーイビパップ』の音楽を担当した日本の作曲家で、彼女の作品は、世界中のファンに愛されているクラシックだと思います」

「間違いなく世界トップクラス」日本を観光した26歳の中国系アメリカ人男性が魅了された場所とは
雨の温泉街を楽しむリオさんファミリー
取材中、まるで日本の旅を頭の中で再現しているかのような、時おりの沈黙と、始終静かな語り口で対応してくれたリオさん。最後にこう語ってくれました。


「今回は旅行者としての短い滞在でしたが、すべてが新鮮で魅力的でした。ぜひまた訪れて、日本の人々、文化、自然にもっと触れたいです。

でも住むとなると言葉の壁が少し不安なので、日本語も学んでみたいです。日本や香港、中国などのアジアに住んでみたいですね。アジアは自分のルーツに近い心地よさがあるので、歴史をもっと学びたいです」

<取材・文/トロリオ牧(海外書き人クラブ/ユタ州在住ライター)>

【トロリオ牧(海外書き人クラブ)】
2001年渡米、ユタ州ウチナー民間大使。アメリカでウェイトレスや保育士などの様々な職種を経験した後、アメリカ政府の仕事に就く。政府職員として17年間務めるがパンデミックをきっかけに「いつ死んでも後悔しない人生」を意識するようになり2023年辞職。RVキャンプやオフローディングを楽しむのが最高の癒しじかん。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員
編集部おすすめ