特殊清掃業者は、孤独死など遺体の清掃以外にもさまざまな作業がある。その中で多い案件が“汚物処理”である。

都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、汚物処理の現場について話を聞いた。

じつは、遺体などの特殊清掃よりも意外と大変なのだとか……。

「マンションの共用部分で吐いちゃって…」

特殊清掃業者が明かす「孤独死よりも大変」な現場。マンション共...の画像はこちら >>
特殊清掃業務は体液などの清掃だけではなく、汚物などの処理を任されることもある。

「月に2~3件は吐瀉物の清掃が入りますね。泥酔してしまって自分のマンションのエレベーターやエントランスなどの共用部分などの動線で吐いちゃって……清掃して欲しいといった相談です。自分で掃除できるレベルじゃないから急ぎでお願いします、みたいな。依頼主は本人や住人のクレームに対応した管理会社ですが、個人からの依頼の場合、バレたときに清掃費用以上の額を請求されるのではないかという危惧があるみたいで、見つかる前に処理をしたいとの要望ばかりです。共用部分で吐いて、そのまま寝ちゃって、起きてから冷静になって電話がくるパターンが多いですね。夜間に緊急対応することも多いです」

清掃費用は案外高くつく場合が多い。

「一箇所だけ吐いている場合はその箇所だけ清掃すればいいんですが、歩きながら何箇所も吐いてしまってるケースも多いんですよ。エントランス、エレベーター、廊下って。タワマンとかは毎月の共益費に清掃費用が入ってる場合が多く、あまり依頼がこないのですが、管理費が安い普通の分譲マンションとかは、清掃費用は個人負担の場合が多く、清掃依頼がよくきます。

吐瀉物となると感染性の場合もありますし、きっちり清掃しなくてはいけないんですよね。
だからその分費用もかかります。繁忙期のようなものもあって、夏場と冬の忘年会シーズンになると依頼がグッと増えます」

“なぜそこに?”という汚物処理の現場

また、“まさか?” と驚くような汚物処理も任されることもあった。

「オフィスビルの廊下に汚物が落ちてたという問い合わせがあったんです。現場に行ってみると、人糞らしきものが廊下やら壁やらにべっとりとついていて……嫌がらせなのかなんなのかはわからないんですが。どうやらテナント利用者に精神的に不安定な方がいらっしゃって、その方なのではと……。

清掃の際に、そこが硬い材質だったら水を使って清掃できるんですけど、オフィスビルだと床がカーペットの時があるんですよね。場合によっては交換しなくてはいけなかったり、そうなると費用は上がりますね。犯人に請求できないと、管理会社が負担することになるので、泣き寝入りになっていることも多いです」

自分ではうまく排便・排尿ができない人の清掃も稀にあるという。

「一人で生活ができなくなってしまった方で、これから自宅での介護サービスを導入することになった現場で、このままだとヘルパーさんを派遣できないくらい、汚れてしまっているケースがありました。玄関からトイレ、寝室の動線まで、全てが便だらけになっていました。臭いもかなり強烈で、家の外にも漏れている状態で……。換気扇のダクトから出てくる臭いも便になっていましたね。近所からのクレームも出てるけど、住んでる本人が障害を持ってる方なので、言いづらいという面もあったようです。
依頼の際は自治体が対応したようですが……」

長年染みついた便の臭いが清掃ではどうにもならない場合もあるという。

「住宅って、フローリングや枠など、ほとんどが木で作られているので、内側の染み込んだところまでは処理がしきれないことがあるんです。最悪の場合、フルリフォームの提案をしないといけない。でも、障がい者の方だとそこまでの費用が捻出できなかったりする現実があるので……。なので、なるべく清掃のみで、なんとかしなくてはいけないので、けっこう骨が折れる作業ではあります」

本人の許可どりも難しいことが多く、話がうまくまとまるまでに、どんどん便の層が厚くなっていくようだ。

「うちの従業員も汚物系は得意・不得意があって、孤独死の臭いは耐えられるけど、人間の糞便の臭いは耐えられないとかありますよね。これって生理的な問題なので、どうしても難しい時はあります。

いくら防護服を着ていても想像してしまって、結局長い時間入るのができなくなってしまうことはあります。仕方のないことですが、依頼主さんもうまく着替えができず、服に糞尿がついているんです。一人ではうまく風呂に入れなかったりするので、大変ですよね。本人もうまく感情表現ができなかったりしますが、綺麗になるなら綺麗にしたいという意思表示をはっきりしてくれる方もいます」

動物の糞尿の掃除現場

特殊清掃業者が明かす「孤独死よりも大変」な現場。マンション共用部から鳩の巣まで、“汚物処理”の実態
また、人だけではなく、動物の糞尿の掃除現場もある。

「マンションやベランダに鳩が住み着いちゃって、糞まみれになったので掃除して欲しいという案件も多いです。
薬剤を撒いてコンクリートを削ったりして清掃する。それだけならいいんですが、かなり厳しい現場もあります。

たとえば、高架下って鳩の巣になってますよね。そこの清掃を頼まれたことがあって、ハシゴで登るとちょっとしたトンネルみたいになってるんですよ。そこを歩いていくと鳩の巣があるのですが、鳩の死骸とか糞とかが一面に広がっている時があって……。そこの清掃は骨が折れます。鳩の死骸って、処理する時に鳥獣保護法が絡んでくるので、自治体と相談しながらやっていかなくてはいけないんです。

また、鳩ってたくさん細菌を持っているので防護服を着ていくんですけど、動物なので動きが予測できないんです。突然、こちらに向かって飛びかかってきたりするので、かなり怖いです。腕でガードをしながら奥の方へ入っていくのが大変です。習性を理解すれば大丈夫なんですけど、全然慣れないんですよね」

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。
地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
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