今回はアーティストとして活動する傍ら、ラブホテルの清掃アルバイトとして働く古山菜の花さん(25)に欲望渦巻くピンクのネオンの裏側を聞いた。(記事は全2回の1回目)
生活費と音大奨学金支払いのために始めたラブホ清掃バイト
古山:私は音大出身なんですが、在学中から商業施設内の雑貨屋でアルバイトをしていて、卒業後は創作活動をしながら同じところでバイトを続けていました。ゆくゆくはそこで正社員になることも考えていましたが、大学卒業後は出ていくお金が増えるし奨学金返済もあるしで、なかなか懐事情が厳しくて……。雑貨屋のバイトが昼間だったので、夜中にダブルワークできるところを探してたどりついたのがラブホテルの清掃でした。
元々夜の世界にまつわるルポルタージュを読むのが好きだったので、その影響もあると思います。生活の足しにするつもりで始めましたが、ラブホ清掃バイトの方が楽しくなってしまって、いつの間にかアルバイトはラブホ清掃一本になっていました。
——ラブホの清掃作業はどのような流れで行いますか?他の清掃バイトと違うところはありますか?
古山:シーツやタオルなどが置いてあるリネン室内に我々が待機しているスタッフルームがあって、各階のリネン室に「空き」、「ショートタイム」、「宿泊」などの各部屋の入室状況が書いてあるモニターが置いてあります。「お客様が精算中です」とアナウンスされたら「そろそろ行くか」と腰を上げて。いよいよ「退室中です」と聞こえたら、お客さんと鉢合わせないようにリネン室の覗き穴から確認して、エレベーターに乗ったのを見届けてから部屋に行きます。他の清掃バイトと一番違うのは、このお客さんと会わないように気を付けるところかもしれませんね。
部屋に入ったら最初はタバコの火や電源が入ったままのヘアアイロンなど出火の原因になるものがないか確認したり、浴槽のお湯を抜いたりといった掃除の下準備をします。その後は大抵複数の部屋を同時に掃除していくので、部屋担当・洗面担当・お風呂担当に分かれて片付けていきます。
——回転率重視でテキパキ作業されているんですね。退出するのを覗いているのは知らなかったです!
古山:そうなんです。たまにそれを知っているようで、こちらに向かって会釈してくれる人もいます。たぶん同業者ですね(笑)。
「大入り」の日は従業員のやる気アップ!
古山:場所によっては高時給のところもあるようですが、私の働いているところはそれほど高いわけではありません。ただ時給の他に「大入り(おおいり)」という手当があります。その日のお客さんの出入りが規定数を超えるともらえるもので、例えば100を超えたらプラス1500円、120を超えたらプラス2000円という感じでどんどん上がっていく仕組みです。月によっては大入り手当で数万円になることもあります。
大入り手当は繁忙期かどうか関係なくもらえるので、平日でも「今日は『大入り』いったね!」なんて盛り上がることもあります。やっぱりクリスマスとかはどんどん回転するので体力的にはしんどいのですが、溜まっていく疲労とは裏腹に「もっと入れ、もっと入れ!」と祈っています。逆に中途半端に忙しいのにギリギリ大入りには届かない日はみんなやる気がなくなってしまいますね。
——年末年始も大入りに届くイメージですがどうですか?
古山:それが年末年始は意外と規定数を超えないんです。
私のバイト先では、クリスマスの他には三連休の中日にショートで利用される方がとても多いです。回転数の多い時期はホテルの立地や、どういうプランをやっているか、デリを利用されるお客さんが多いかなどに結構左右されると思います。
バイト開始から2ヶ月でラブホの洗礼
古山:あります、あります。確かバイトを始めてまだ2ヶ月ぐらいの、掃除の手順を教わっている時期だったと思いますが、客室のドアを開けると絨毯にシミができていました。最初はみんなで「こんなシミあったかな?」なんてあまり気にもせず部屋に入ったのですが、シーツを剥がすためにパッと布団を開けたらなんとシーツも枕も大便まみれになっていて……。さらに一緒に掃除をしていたおばさんが「トイレの汚物入れからこんなのも出てきたわよ!」と、これまた便まみれになったゴムを見せつけてきました。そこでふと冷静になって「最初に気付いた床のシミも、もしかして」と思い確かめたところ、やっぱり床も便まみれだったんです。その後、部屋中をチェックしたら至る所に便がつけられていました。
この件も含めて便で汚された部屋は掃除がかなり大変なので、利用したお客さんは出禁になります。それでもだいたい月に1回ぐらいは便で汚された部屋の掃除に遭遇しますね。
——月に1回も!? 初めて遭遇した時点で辞めたいとは思いませんでしたか?
古山:ショックではありましたが、一緒に掃除に入っていたおばさんたちがみんな何でもない顔をしていて、むしろ「事件よ!」みたいな感じでちょっとワクワクしていたんです。おばさんたちはイレギュラーなことが好きなんです。それでなんとなく流されちゃって今に至ります(笑)。
YouTube:古山菜の花
X:@kkkk_k1109
Instagram:@kkkk_k1109
note:清掃員:N
<取材・文・撮影/菅野真沙美>
―[古山菜の花]―
【菅野真沙美】
フリーライター。全国紙記者、ブランディング会社ライター・ディレクターを経て現職。暴れん坊の猫3匹を飼っています。
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