「クズなのに、なぜか目が離せない」「叩かれているはずなのに、気づけば応援している」。そんな矛盾した支持を集める人物がいる。
嫌われキャラの代表格だったクロちゃんが、いまやテレビ業界で欠かせない存在になった理由とは何なのか。さらにZ世代ギャルの視点から見えてきたのは、オジさんが無意識にやりがちな“推されない振る舞い”と、その回避法だった。クズでも、ズレていても、なぜか推される人の正体を探る。

クズなのに推される謎の魅力の正体は?

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かつて週刊SPA!が実施してきた「嫌いな男ランキング」で常連だったクロちゃん。クズキャラでありながら、今やお笑い番組で唯一無二の存在として引っ張りだこ。クズなのに推される、謎の魅力の正体とは。本人を直撃した。

「僕のフォロワーって叩いてくるくせにイベントに差し入れを持ってきてくれたり、コロナにかかれば、悪口の後に、『噓ついていいから、早く元気になれ』とデレてくる人が多いんです。だから僕の周りにアンチはいない。ファンか、サイコパスか、どっちかです」

クロちゃんはかつて『水曜日のダウンタウン』での噓ツイートが炎上し、当該SNSには殺害予告とも取れる投稿まで溢れる始末となった。

「歩いて帰るって言った直後にタクシーに乗ったのがバレて大炎上。SNSでは1回呟くと200近くの罵詈雑言が届いて、正直怖かった。でもコメントを読んだら、僕、悪くないじゃんって思ったんです。
誰かを傷つけたわけでもなく、足が痛かったから状況に合わせて臨機応変に対応しただけ。それで噓つき呼ばわりするなら、カメラアプリのフィルターで体を細く見せているインフルエンサーのほうが、よっぽど噓つきですよ」

なぜこの開き直りが“推し”に繫がるのか……。記者のイマイチ腑に落ちていない表情を察してか、同席したマネジャー氏がフォローする。

「こういう鼻につく発言が炎上するんですよね(笑)。でも、誰しもが考えるけどグッとこらえる負の感情を、これでもかとさらけ出してるんですよ。みんなの『言えたらラクなのに』って願望を代わりに叶えてくれるのがクロちゃん。その姿が痛快だし、憎さとか羨望、嫉妬や憧れなど、全部が合わさって、気づけば周りがこの“モンスター”に夢中になっちゃってるんでしょうね」

ブレない姿から生まれるクロちゃんの魅力

まさに“身内に推される”瞬間を目撃しつつさらに取材を進めると、クロちゃんがこれだけ番組スタッフから重宝される理由が明らかに。

「僕は番組収録があるってなったら誰よりも原稿を読み込んで完璧に進行できるようにしてます。あとはどんなに些細なことであっても絶対にルールは破らない。歩いていても赤信号では絶対に止まるし、タクシーに乗ったらシートベルトはきちんと締めてます!」

クズなイメージに似合わぬストイックな仕事ぶりが、関係者から推されるゆえんかと感心していると、その行動の“真の理由”を語り始めた。

「例えば収録のあとに『面白くなかった』って言われても、セリフを完璧にしていれば『それは台本のせい』と、脚本家に責任をなすりつけられるじゃないですか。いかなるときも、絶対に誰かのせいにできるようにしてます。責任をなすりつけるのって事前準備が大変なんです。
あと、僕は損するのが大嫌い。番組で私生活を見られていることが多いから、もしもルールに反した行動が写っていたら、その映像は全部ボツ。損に直結するからルールは絶対守ります」

理由はともあれ、仕事を真摯にこなしつつ、火だるまになりながら話題をかっさらう。クロちゃんの魅力は、このブレない姿から生まれるのか。

「絶対に誰かのせいにできるようにしてます」クズなのに仕事が絶えない…クロちゃんが“推される側”に回れた決定的要因
「ブレずにクズを貫いたら、勝手に評価が上がったしん」


推しポイントはプロデュース力

「絶対に誰かのせいにできるようにしてます」クズなのに仕事が絶えない…クロちゃんが“推される側”に回れた決定的要因
「過去の栄光とか先入観なんか邪魔になるだけ」と語る辛口ギャルのみりちゃむ
切れ味鋭い毒舌で数々のオジさんを圧倒し続けるZ世代の“口喧嘩最強ギャル”、みりちゃむ。クロちゃんの「絶対に言い訳ができる状況をつくる」姿勢を『最低すぎる(笑)』と切り捨てた。

「スタッフさんや演者から見て、仕事をきっちりやっているのはわかるけど『責任をなすりつけるため』って口に出すのはあり得ない。最近クロちゃんの奇行っぷりを見てられなくてX(旧ツィッター)のフォロー外したもん(笑)」

そんな彼女の“推しオジ”ポイントの一つが、予定調和で物事を進めずに、相手の新たな長所を引き出そうとする、いわばプロデュース力だ。

「例えば、テレビプロデューサーの佐久間宣行さん(50歳)は、世界観は濃いのに、それを押しつけてこないし、『ギャルだからこう』とか『今までの仕事がそうだったから次もこれ』みたいに型にハメることもしない。その時々の現場で起きたことを丁寧に拾って、『じゃあ次こんなことやってみる?』と、偶然を面白がりながら、新たな側面を引き出そうとしてくれる」

ただし相手に興味を持つことは大切だが、パーソナルな部分に踏み込むのは自ら地雷を踏みに行くようなもの。

「髪を切ったり、ネイルを変えたりしても、『何かあったの?』は余計。理由を探るのは興味じゃなく詮索だから。『髪切ったね』で十分なんですよ。
話したければ、自分から言うし。下ネタなんかも同じで、オジさんから振るのではなく女性から振ってきたのにちょっと乗るくらいがいい」

距離感のお手本となるお笑い芸人

価値観がまったく異なるZ世代との距離感は難しい。そのお手本となるのがお笑い芸人・錦鯉の渡辺隆(47歳)だ。

「罵倒すら面白がって楽しんでるし、いつも腰が低い。年齢や立場を笠に着て威張ることもなく、いつもこっちの話を楽しそうに聞いてくれる。自分から話すときも『知ってる』前提で進めずに、こちらの心理や受け取り方まで想像してくれるから居心地がいいんですよ。そして、かまってちゃんじゃない。こういう控えめな距離感は推せますね」

Z世代に比べ、経験値が高いオジさんは、その分過去の成功体験に引っ張られがちだ。

「昔話でドヤられても、正直、知らないし興味もないから、勝手に気持ちよくなってる自分語りってマジでさめるだけ。『ギャルだからこうでしょ』って偏見も同じで、枠にハメた瞬間、会話の可能性も閉店幕引き。大事なのは、今目の前の人とのセッションを面白がれるかどうかじゃないですか。お互い宇宙人くらいの距離感で、『ギャルって本当にそうなの?』って、フラットに接してくれるオジさんのほうが、自然に推されますよ」

そもそもオジさんは細かなことに悩みすぎだという。


「一度の失敗に引きずられすぎだし、正解を求めすぎ。もう少し肩の力を抜き、『これで良くね?』がいい。完璧主義の姿勢は正しいかもしれないけど、真面目すぎて私はつまらないと思ってしまう。楽観的で自分たちと近い目線で一緒に楽しめる人のほうが、最後に味方が残ると思います」

ギャルマインドの注入こそが、推しオジを生む。

【クズ芸人 クロちゃん】
1976年12月10日生まれ。お笑いトリオ・安田大サーカスのボケ担当。松竹芸能所属。俳優やプロデューサーとしても活躍

【辛口ギャル みりちゃむ】
’02年7月10日生まれ。『egg』の元専属モデル。朝ドラ『おむすび』にも出演し、さまざまなバラエティ番組などで活躍中

※週刊SPA!1月13日・20日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部

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