正月の帰省ほど、「人生の進捗」が可視化される機会はない。
結婚、出産、マイホーム購入——地元や実家に戻れば、年相応にライフイベントが進んでいることが“当たり前”として扱われてしまう。
進捗がなければ、複雑な思いをすることも……。都内在住の独身女性・富田美憂さん(38歳・仮名)は今年の正月、地元の会合でモヤモヤする出来事があったそうだ。

“子供がいない人”も同額の割り勘「私の分ってみんなの半分くらいでは?」

正月の帰省で田舎の“当たり前”に違和感。居酒屋やカラオケの支...の画像はこちら >>
大手企業に勤め、仕事は順調。恋人もいる。東京ではごく普通の“よくいるアラフォー独身”だが、地元では少し事情が違った。

「田舎の友達はみんな既婚で子供がいます。それが“当たり前”なんです。

東京の同世代は未婚・子なしが多いけど、田舎だとアラフォーで結婚もしていない、子供もいない人を探す方が難しい(苦笑)。

ただ友人は私が帰省すると地元の会に呼んでくれるから、とてもありがたいですね。うん、ありがたいんだけど……」

「ありがたい」とは言いつつも、複雑な表情の美憂さん。

集まるのは昼間、みんなが子連れのため、少し割高なキッズルーム付きの居酒屋やカラオケのコースだ。そして、その料金は「すべて割り勘」なのだと話す。

「旦那も親もいるんだから子供は預けて夜に集まりたいとは思うんですが、みんなそういうわけにもいかないようで。
まぁ、どの店でもいいんですが、支払いがね、割り勘なんです。

子供もソフトドリンク飲み放題とか、小学生の男の子なんて私よりも食べるのに、すべて割り勘。『美憂は子供いないし、子供の分は引くね』とか気をつかってほしいものですが、誰も言い出さないことに驚いています」

4時間滞在して1万円近くの出費。「たぶん、本当は私の分って、みんなの半分くらいだと思う」と美憂さんは苦笑する。

子供がいないとお年玉を配るだけで何の見返りもない

また、グループLINEでは「お年玉は1000円均一にしよう」という話題になっていたようだ。

「なかには子供が二人いる子もいて、一人しかいない子は『不平等だよね』なんて言ってましたが、いや、子供がいない私の場合は、何の見返りもなく、お年玉だけ渡しているんだけど……って感じですよ(苦笑)。

一人あたり1000円でも8人も子供がいたから合計8000円ですよ。返せとは言わないけど、みんなもらって当たり前のような振る舞いなので、なんか違和感を感じますね。

『東京で働いてるから稼いでいるよね』って言われることもあるんですが、物価が高いからいくら稼いだって出ていくお金も多いんだけどなぁ」

誰のママでもない自分はアイデンティティがゼロ


正月の帰省で田舎の“当たり前”に違和感。居酒屋やカラオケの支払いで「子なしの私も子連れと同額の“割り勘”で」
お年玉
何よりも美憂さんが傷ついたのは子どもたちから「誰のママ?」と聞かれ「誰のママでもないよ」と答えると、「じゃあ誰?」と言われたことだという。

「子供たちは大人を『誰ちゃんのママ』『誰くんのママ』と言うので、誰のママでもない私はアイデンティティがゼロなんです。『昔からのお友達だよ』と言っても『なんで一人なの?』『子供いないの?』と、悪気なくズケズケと聞いてくる。ちょっと、これは傷つきましたね」

美憂さんは営業職で「仕事が大好き!」だと言い、恋人はいるが結婚願望もなければ「今のところ子供も欲しくない」そうだ。

「東京の同世代では、子持ちも子なしも未婚も既婚も本当に色々な人がいて、特にそれを誰も何も言わない。
だから楽だし、生きやすい。今回の帰省で『私みたいなタイプは東京ってやっぱり住みやすいな』って改めて思いました」

不平不満はありつつも、意外なことに今後も地元に帰った時は「声をかけてほしい」と話す美憂さん。

「毎月こんなことがあったら嫌だけど、年に一回だし、声をかけられなくなったら寂しいなって思います。東京の友達の中で『子供がいない子は地元の集まりにも呼んでもらえないよ』って、寂しそうに言っていたので。

でも、来年はお年玉だけはパスしたいって言おうかなって思います。私は誰のママでもないからって(笑)」

<取材・文/吉沢さりぃ>

―[年末年始の憂鬱]―

【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720
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