フードファイト界のレジェンド・MAX鈴木に未来の話を聞いてみたいと思う。フードファイト界の新人発掘について、近未来に台頭するであろう若手選手について、ジャイアント白田らが活躍した頃のような熱気を取り戻すことはできるのか? などについてだ。

キーマンは、やはり今年の優勝者であるRyuのようだ。日本が今まで到達できなかった領域に手が届くかもしれない。

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フードファイトに勝つ理想的な体型

――今回の『大食い王』は、パーソナルトレーナーを本業とするマッチョ体型のRyuさんが優勝しました。我々大食いファンは「痩せてる人が大柄な人を倒す」というイメージを抱きがちですが、それは誤りだったのでしょうか?

MAX鈴木:実際、「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」に挑戦するためアメリカへ行ったときに感じたんですが、向こうってむしろムキムキな人が多いです。強い人ほど、マジでムキムキでした。だから、フィジカル的な部分はマッスル系のほうが強いと僕は思います。理由は厳密にはわからないけど。

――大食いファイターの理想的な体型ってどんなフォルムだと思いますか?

MAX鈴木:まず、ぜい肉がなく体内の胃拡張を邪魔しない体型ですよね。そして、背は低いより大きいほうがいい。細いよりも広いほうがいい。デブということではなく、骨組み的に体のフレームが広い人が向いています。あと、顔はエラが張っているほうがいい。咀嚼力と嚥下力が強いからです。


――MAXさんから見てRyuさんの体型はどう評価されますか?

MAX鈴木:めちゃくちゃ理想的だと思うんですよね。やはり、マッチョなところがいいです。ファイターのトップ中のトップはやっぱりマッチョが多いので。ひとえにそこです。

――「フードファイトはマッチョが強い」という、確固たる統計があるわけですね。

MAX鈴木:その辺に関しては、小林尊さんがご自身の体で人体実験を何回も繰り返されているから一番わかると思います。

――たしかに、小林さんもだんだんマッチョになっていったイメージです。

MAX鈴木:超人ハルクみたいになっていましたよね。

競技に「おいしい」という感情は不要

――精神面についてもお伺いさせてください。MAXさんの語録に「フードファイトは食事じゃなくて戦い。目の前の食べ物は敵」というのがあります。つまり、大食いをする際は「おいしい」と思う感情さえ捨てる。大食い選手はみな、その心づもりで試合に臨んでいるのでしょうか?

MAX鈴木:いや、たぶん僕だけだと思います(笑)。


――特に女子選手は、「おいしい~」と言いながら食べる姿をよく見ますね。

MAX鈴木:男性の大食い選手も、やっぱり「おいしくなきゃ食べられない」という人がほとんどです。僕は味が邪魔というか、「おいしい」と感じると競技じゃなくてエンタメになっちゃうんです。42.195kmを走っているとき「あ、このスパイクいいね」「この走路、走りやすいね」なんて言ってる人います? いなくないですか? そういうことっす、マジで。

――その考え方は、大食い界でもMAXさんだけのもの?

MAX鈴木:僕以外で見たことがあるのは、小林尊さん。「味が邪魔をしてる」うんぬんに関してはわからないですけど、あの人はマシンのように食べるので。むしろ、俺は尊さんの戦う姿が脳内にインプットされて今の自分のスタイルになっていったのかもしれない。それくらい、あの人のことは大尊敬しています。白田さんや小林さん、あと「神4」(白田、小林、射手矢侑大、キング山本)は大尊敬の対象ですね。

フードファイトに「年齢の壁」はない

――年齢非公表のRyuさんですが、ご本人は年齢について「自分は若くない」とおっしゃっています。これからRyuさんに年齢の壁は立ちふさがるのでしょうか?

MAX鈴木:僕は年齢はまったく関係ないと思います。

――現在45歳のMAXさんも“年齢の壁”は感じていない?

MAX鈴木:そういう感覚は、俺にはまったくないです。フィジカル面に関しては、まったく関係ないと思います。


――歳を重ねると食べられなくなる一般の感覚と全然違いますね! 一方、プロ野球選手はベテランになるにつれて肩や肘の経年劣化で徐々に怪我が多くなるなど、アスリートは無視できない現実もあります。フードファイターもキャリアを重ねるほど、内臓が弱ったり顎の咀嚼力がなくなっていくことはないのでしょうか?

MAX鈴木:僕はどちらかというと逆のイメージです。プロという自覚を持つといろいろな部分のケアをしっかりするようになるので、キャリアが長ければ長いほど体は故障しにくくなり、安定感も増します。

事実、僕は2ヶ月に1度定期検診に行っています。血液検査で糖尿や痛風、肝臓の状態などを全部チェックしています。そして、1ヶ月に1度は絶対に歯のメンテナンスをする。そこで悪いところがわかれば、すぐに治します。だから、少なくとも僕は年齢による劣化を感じたことはないです。

ただ、ほかのフードファイターが健康診断に行くなどケアをしているかどうかはわかりません。もしも行っていない人がいるなら、絶対行ってほしいなと思います。

過酷な競技ゆえ、体に大きな負担が

――大食いは体に負担がかかる競技だと思います。以前、小林尊さんが「満腹中枢がなくなった」「お腹空いたという感覚がなくなった」と告白されていましたが、それを見て「身を削って戦っているんだな」と再認識しました。

MAX鈴木:あれは、ちょっとショックでした。
あれだけ超絶ストイックにスーパーウルトラアスリートとして、日本だけじゃなくアメリカで時代をつくった小林さんが……。「フードファイターとして自己管理し、逆に故障から遠ざかっていたわけじゃないのか」って。プロ中のプロだからこそ、そういう部分もケアしていらっしゃるのかなと思っていたけど……。

大食いYouTubeが与える業界への影響

――そういえば、今回の『大食い王』は配信者の新人が多かったですよね。

MAX鈴木:多いですよねえ。

――大食いYouTubeって成功すれば視聴回数がすごく回るし、多くの人材が大食い界へ流入するきっかけになっている感もあります。結果、優秀な人材が入り、フードファイトのレベルが急上昇する戦国時代になっていくのかな? という気もするのですが。

MAX鈴木:大食いとSNSは新人発掘という部分で親和性がめちゃめちゃあると思います。僕が大食いでデビューした頃って、もえあずちゃんを筆頭に女性はテレビによく呼ばれるけど、男性はなかなか呼ばれなかったんです。「なぜ、呼ばれないんだろう?」とずっと悩んで、「呼ばれないなら自分で発信すればいいんだ」ということに気づき、僕はYouTubeをやり始めました。

要するに、食べることしか特技がない人はお金が稼げなかった。だけど、今は自ら発信することでお金をめちゃめちゃ稼げたりする。そういう世の中になったんです。


「めっちゃ食えるけど、別に人に自慢することでもないし、お金を稼げるわけでもないし、目立てるわけでもないし」と、才能はあるのにフードファイターにならなかった人はこれまでいっぱいいたと思うんです。これからは、そういう人たちがどんどん世に出てくるんじゃないかなと思います。

配信が“食費の壁”を払拭する新たな稼ぎ方に?

――「俺って才能があってたくさん食べられるんじゃない?」という人への間口が、YouTubeの存在で広くなったわけですね。

MAX鈴木:そう、お金を稼げる。普通に考えたら、大食いってめちゃくちゃお金が減るだけなので。

――普通はそうですね、食費とか(笑)。

MAX鈴木:マジでめっちゃ金かかかるんすよ! でも、今はYouTubeやSNSでお金が稼げるようになったから。

――食べられると稼げる時代になったわけですね。

MAX鈴木:食べれば食べるほど視聴数は上がるし、視聴数が上がるとお金が稼げるから。だから、新人発掘はもっと増えていくんじゃないですかね。

反面、こと日本において限界があるのも事実です。日本はお米がちょっとこぼれたら「なに、その汚い食べ方は」「麺を噛みちぎって食べるな」と言われたりする。物を大事にする文化だしわかるんですが、アメリカのフードファイトは「拾うモーションをする暇があったら、おかわりして次の分を食べろ」という考え方です。
根本が違うんですね。だから、フードファイトを日本でやろう、お金を稼ごう、YouTubeで有名になろう……と活動しても、批判のほうが多くなるんです。

僕のなかでフードファイトは“エンターテインメント”じゃなく、ありのままを見せる“スポーツ”です。100m競争の映像をカットして放送なんかしないじゃないですか? それと一緒ですね。

そんな気持ちで僕らはプライドを持ってやっているんですけど、見てる人からしたら「そんな苦しく食べないでほしい」と思う人が多い。ということは、YouTubeの伸び率にも限界がある。だから、お金も意外に稼ぎにくいです。だって、日本はそういう文化だから。

日本人のこの感覚は永久について回るだろうし、変わらないと思います。僕も現役として大会にガンガン出場していた頃は「日本の文化や常識を変えたい」という思いでやっていましたが、その部分で結果は残せませんでした。

次世代を担う期待の若手ファイターは?

――今大会では戦前からRyuさんを本命視されていたとのことですが、近い将来「この人は来るぞ」「きっと台頭してくるぞ」と予想する期待の大食いファイターはいますか?

MAX鈴木:それこそRyuさんと仲がいいですけど、多部田ねるちゃんとあさりちゃん。彼女たちは、『大食い王』で女王戦が行われたらワンチャン優勝もあると思います。あの子たち、最近の配信で9kgの量を食べていたんですよ!?

――それはすごい! 「人間が食べられる限界は10kg」という説もあったくらいなのに。

MAX鈴木:僕、8kgの壁を超えて10kgに到達するまで3年かかりましたから。彼女たちのキャリアはどのくらいかわからないけど、「えーっ、そういう感じなの!?」みたいな。ヤバいっすよ、あの子たちは。

――では、このお二人はキャリアを積み重ねると脅威の存在になりそうですね。

MAX鈴木:いや、現段階でも相当じゃないですか? すでに、超バケモンだと思います。

アメリカの域へ届く新王者Ryuの可能性

――歴代の大食い選手で一番強かったのは誰だと思いますか?

MAX鈴木:ナンバーワンですよね? 日本と海外とでは違いますが、日本だけだとジャイアント白田さん一択だと思います。

――一択ですか! 今、白田さんはめっきり食べなくなって、『水曜日のダウンタウン』(TBS)では逆に食べないキャラが定着しましたけど(笑)。

MAX鈴木:はい、タバコを吸ってお酒を飲んでるおじさんになっちゃいましたけど。ハハハハ!

――そんなすごかった時代や歴史をぜひ塗り換えてほしい、という気持ちがファンとしてはあるのですが。

MAX鈴木:でも、Ryuさんは本場・アメリカのマッチョという要素を持ち合わせながら、今大会の優勝でさらにメンタルもすごく上がっていると思います。だから、ひょっとしたらRyuさんが塗り替えるかもしれない。

――おおー! 期待大ですね。

MAX鈴木:僕、大食いファイターでありながら一大食いファンなんで。だから、その期待感はすごくありますね。

――今後、「Ryu時代」が続いていく可能性はありますか?

MAX鈴木:続いていく可能性というか、もうつくってほしい! 日本の記録を塗り替えてほしい。

――Ryuさんの存在は、ファンとしてもエポックメイキングでした。マッチョな体型のフードファイターが優勝したことで新しい潮流が生まれ、日本でもマッチョなフードファイターが出てくるのかな? という予感があります。

MAX鈴木:今後、Ryuさんが伸びていったら日本のレベルがようやく最強・アメリカのレベルに追いつく可能性は十分ありますよ。そうなったらすごいですね。日本が開けなかった扉を開ける可能性を彼は持ち合わせているし、世界に通用するかもしれない。Ryuさんはそういう存在です。

<取材・文/寺西ジャジューカ>

【寺西ジャジューカ】
1978年、東京都生まれ。2008年よりフリーライターとして活動中。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレス、ドラマ評。『証言UWF 最後の真実』『証言UWF 完全崩壊の真実』『証言「橋本真也34歳 小川直也に負けたら即引退!」の真実』『証言1・4 橋本vs.小川 20年目の真実 』『証言 長州力 「革命戦士」の虚と実』(すべて宝島社)で執筆。
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