三菱地所、サムスン電子ジャパン、ゆうちょ銀行……錚々たる有名企業のCMオーディションを次々に勝ち抜いてきた小倉には、選ばれるための“仕事術”があるのか。
求められているものに、自分の要素をひとつプラス
――CMオーディションを勝ち抜く上で、意識されていることはありますか。小倉:CMオーディションには絵コンテがあって、そのイメージに合う人が受かっていくと思うんですけど、その枠にハマりすぎても自分らしさがなくなってしまいます。なので、ディレクターやクライアントさんが求めているものに、プラスして自分の要素を一つ持っていけたらといつも思っています。
表情や相手との掛け合いもそうですが、僕は結構「形から入る」のが好きで、衣装や小道具、眼鏡なんかにもこだわりがあって。ちょっと違うなと思ったら、オーディション当日の朝でも古着屋さんやスーツ屋さんに買いに行って臨みます。
――オーディションに挑んだ際の具体的なエピソードをひとつ。
小倉:三菱地所さんのオーディションの時は、朝からスーツ一式を買っていきました。普通のスーツしか持っていなかったので、三菱地所さんというイメージに合いそうな、ちょっと仕事ができそうなスーツを買おうと思って。全部自腹ですけど(笑)、受かれば次につながると思ってやっています。
新人「森くん」からツンツン、モヒカンヘアのロッカーまで
小倉:たとえばサラリーマンの役などは、僕は一般企業に就職した経験がないので、正直手探りな部分もあります。なので、普段から人間観察は無意識にしていますね。駅のホームや、夜疲れて帰る会社員の方を見てトレースするのが結構好きなんです。ただ、今の若者ってすごく多様化しているので、クライアントさんやディレクターが描いてくる絵コンテのキャラクター像を信じて、ありのままやることで「共感を得られる社会人感」が出るんだろうなということも大切にしています。
――JTのCMで演じられている「森くん」も、一見普通の会社員のキャラクターですが、とても人気が高いです。
小倉:本当にありがたいことに、「あれ、うちの会社にもいるよ」「部下にいるよ」って言っていただけることがあります。なんだか見ていて笑っちゃうし、ほんわかできるって。ビジュアル的にすごく目立つわけじゃないのに心に残るというか、そこはすごいなと自分でも思います。
――個人的には、今年の3月から出演されている「野菜生活100 smoothie」のスペシャルムービー「ファイト・スタイル」篇の青年も好きです。かわいいキャラクターとも共演されていますね。
小倉:僕も好きです。撮影現場では色の塊を置いているだけで、実際のキャラクターの姿は見えていないんですけど、出来上がった映像を見るとすごく合っていて。かわいい子たちと共演できているなと嬉しくなりました。
――小倉さんが演じた個性的なキャラクターと言えば、成田凌さんと共演しているSAMSUNG「Galaxyシリーズ」の、ツンツンとしたモヒカンヘアの青年も注目を集めました。
小倉:あれ、地毛なんですよ。
――そうなんですか!?
小倉:完全な地毛です。
「柔軟力」「瞬発力」「引き出しの多さ」が選ばれるための三箇条
小倉:仕事術というと大げさですけど、CMオーディションを受けて、受かっていく上で大事だと思うのは3つあります。「柔軟力」と「瞬発力」、それから「引き出しの多さ」です。これがあれば、より深めていけると思っています。
――それぞれもう少し説明していただけますか?
小倉:まず『引き出しの多さ』は、経験プラス想像だと思っていて、僕は今のところ経験主義です。いろんなことをやって、いろんなことを吸収して、いろんな人に出会って、価値観をトレースして……。形から入るのもそうなんですけど、それが引き出しの多さにつながります。引き出しがないと、いろんな幅を利かせることができない。一つのキャラクターしか演じられないのは役者としてもったいないと思うので、そこは絶対に必要なことだと思っています。
――「柔軟力」と「瞬発力」については。
小倉:現場で演出されたことを理解して、それに付随する引き出しを出さなきゃいけないので、それには『柔軟力』が必要です。あとは相手の方がいて、現場で求められたことを「自分にできないかも」と思った瞬間に、相手に任せてしまったらダメだと思うんです。
自宅には爬虫類と猫が。「かわいくてLINEスタンプも」
小倉:はい。猫は去年お迎えして、5月に1歳を迎えました。もう可愛くて、LINEスタンプを作ってしまったくらいです(笑)。隣にただ居てくれるだけで寂しさが消えるんですよ。うちの子は男の子でやんちゃ坊主でかまってちゃんなので、時々本当に爪とかでやられたりもするんですけど。気分屋を貫き通していて。
――猫と爬虫類って、一緒に暮らせるものですか?
小倉:正直、共存はできないです(苦笑)。なので爬虫類はケージに入れています。時々出して抱っこしたりもするんですけど、その時は猫に「マジで来ないで」って言いながらどうにかしています(笑)。
今後目指す役柄、そして“隠れCMキング”への思い
――最後に今後について聞かせてください。挑戦してみたい役柄はありますか。小倉:まずは、JTの森くんとかもそうなんですけど、社会人感があるような、あるあるで共感してもらえるような役で主演をやってみたいです。僕自身、陰影や愛嬌があるような、共感できる役は得意だと思っているので、そこで主演をやることで「これ自分と重なるかも」と思ってもらえたら嬉しいです。
そしてその延長線上として、そういう普通の人の中に何かを抱え込んでいるような役を、シリアスにやってみたいとも思っています。隣人が実は何かおかしいぞ、みたいな空気感を醸し出せるような。どんどん挑戦していきたいです。
――殺陣に挑戦といったことは。
小倉:殺陣は剣道の経験はあるものの、ちゃんとやったことはなくて。かっこいいのでやりたい気持ちはありますし、乗馬もずっとしたいと思っています。あ、あと! 僕は漫画やアニメが大好きなんです。だから機会があれば、ぜひ声優業にも挑戦してみたいです。
――現在は朝ドラに出演中です。出演後、街で声をかけられることは増えましたか?
小倉:ほぼ変わっていないです。でもそういえば、この前、病院にいたときに、声をかけられました。「『絶対零度』とかドラマに出てましたよね?」とか言われて。その時、僕はジャージでヨレヨレ、眼鏡で髪もボサボサだったので、声をかけられても恥ずかしくて。ちゃんとしてる時に会いたかったです(笑)。普段は、たぶん自分は街中に溶け込んでいて、あまり分からないのだと思います。
――”隠れCMキング”と呼ばれることについては、率直にどう感じていますか?
小倉:隠れているというのは、役者としては、カメレオン的で気持ちいいことでもあると思います。
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1997年6月10日生まれ、埼玉県出身。子役として映画『20世紀少年』などに出演後、大学時代はダンスに打ち込み、卒業後に俳優活動を再開。2025年のCM起用社数ランキングでは全体10位・男性4位にランクインし、”隠れCMキング”の異名でも話題を集めている。24年公開の映画『PLAY!~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』では、奥平大兼、鈴鹿央士とともにeスポーツのチームを組むクセ強男子・亘を好演。2026年前期のNHK連続テレビ小説『風、薫る』では、松原喜介役を演じている。
<取材・文/望月ふみ 撮影/星 亘>
【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi
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