あれから6年。7月13~14日に北海道苫小牧市のノーザンホースパークで行われたセレクトセール2026で両者は明暗を分けた。
イクイノックスとコントレイル…セレクトセールで明暗
繁殖入りしたデアリングタクトは、2番仔となる当歳牡馬が上場され、今年の当歳部門では2番目に高額の3億3000万円で落札された。同馬の父は国内外でG1を6勝したイクイノックス。史上初の無敗牝馬三冠を達成した母と合わせ、父母のG1勝利数は9に達する。デアリングタクトの血に加え、現在のセリ市場で絶大な人気を誇るイクイノックスとの配合だったことも、3億円超えを後押しした。
しかし、華やかな話題の陰で、対照的な評価を突きつけられたのがコントレイルだった。
改めて今年のセレクトセール全体を振り返ると、初日の1歳部門は250頭が落札され、取引総額は176億6000万円。前年を13.6%上回った。ただし、1頭当たりの平均価格は約6909万円から約7064万円への2.2%増。価格が急騰したというより、高値を維持したまま落札頭数が増えた格好だ。
一方、2日目の当歳部門は228頭が落札され、総額158億2400万円。平均価格は前年の約7524万円から約6940万円へ7.8%下がった。
コントレイル産駒の平均価格が急落
そんな中、悪い意味で際立ったのがコントレイル産駒の値段だった。「なんかコントレイル安いな」
「零細種牡馬への道を歩んでいるのでは」
Xでは、無敗三冠馬の種牡馬に対する辛辣な反応も見られた。ただ、その反応は決して大げさでもない。
今年落札されたコントレイル産駒は、1歳14頭と当歳12頭の計26頭。総額は16億8400万円で、平均価格は約6477万円だった。
初年度産駒が当歳市場に登場した2023年は、20頭平均で1億2860万円。その後も2025年まで平均1億円台を維持していたが、今年は前年から約42%も下がった。初登場時と比べれば、ほぼ半値である。
競走馬の価格は父だけで決まらない。母系はそれ以上に重視されるほか性別や馬体の出来によっても大きく変わる。それでも26頭という一定の数がそろい、平均価格がこれだけ下落したことは見過ごせない。
Xでは、前年の当歳市場で高値を連発したコントレイル産駒の相場下落が、全体の平均を押し下げた一因ではないか、との見方もあったほどだ。
もちろん、部門全体の平均は上場馬の顔ぶれや高額馬の数にも左右される。単一の種牡馬に原因を求めるのはいささか乱暴だが、そうした分析が出ること自体、今年のコントレイルの値下がりが目立っていた証拠だろう。
期待値が高すぎた?相場下落を招いた“現実”
ではなぜ、ここまで相場が変わったのか。最大の要因として考えられるのが、昨夏にデビューした3歳世代の「悪くはないが、圧倒的でもない」という成績だ。
ゴーイントゥスカイが青葉賞、コンジェスタスが京都新聞杯を制し、2頭そろって日本ダービーに出走した。普通の新種牡馬なら、十分に合格点を与えられる滑り出しだろう。
ただ、コントレイルには普通の採点表が使われない。無敗三冠馬であり、ディープインパクトの有力後継候補。昨年まで落札額が平均1億円を超えていた父には、重賞2勝にとどまらない活躍が期待されていた。
初年度産駒は決して大きく躓いたわけではない。ただ、1億円という値札を守るほどの存在が今回のセールまでに現れなかった。つまり「期待との差」が今年のセレクトセールの相場に反映されたとみるのが自然だろう。
エフフォーリア産駒に完敗…市場評価で広がった決定的な差
この落差をさらに大きく見せたのが、エフフォーリア産駒の値段だった。今年落札されたエフフォーリア産駒は、1歳10頭と当歳5頭の計15頭。
セール直前の2歳戦でも、エフフォーリア産駒が6勝を挙げた一方、コントレイルの現2歳世代は未勝利のまま。出走頭数が違う以上、これだけで種牡馬能力は測れないが、購買者の印象を左右するには十分に分かりやすい「6対0」だった。
両馬は現役時代にも一度だけ直接対決があった。2021年の天皇賞・秋で、当時3歳のエフフォーリアが4歳のコントレイルに勝利。着差は1馬身だったが、内容はエフフォーリアの完勝。そして5年後、今度は産駒の平均価格で2倍近い差がついた。
他にも産駒が初登場したジャスティンミラノにも平均価格で上回られた。5頭のうち4頭が落札され、平均はちょうど7000万円。さらに現役時代のライバル・サリオスが8頭平均5200万円で、コントレイルとの差は前年から大幅に縮まった。
実績だけならコントレイルが文句なしの最上位だが、セリ市場で買われるのは過去の勲章ではなく、その血が次代に何を生み出すかという可能性だ。父の勲章が入口にはなっても、値札を守り続ける保証書にはならない。
父の実績だけでは高く売れない時代に…
コントレイルを失敗種牡馬と断じるのは早い。初年度産駒から2頭の重賞馬が誕生し、菊花賞や古馬戦で評価を塗り替える余地も当然残されている。ただし、「無敗三冠馬の産駒だから高く売れる」という時間は終わった。相場を取り戻すには、父の看板ではなく、産駒自身の走りでポテンシャルを証明する必要がある。
今年の平均落札額6477万円が一時的な底値なのか。それとも、新しい相場なのか。父の名で売れた時間を終え、産駒の脚で信頼を取り戻す戦いが始まった。
文/中川大河
【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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