生活に欠かせないスマートフォンの、心臓部として重要なリチウムイオン電池。スマホに限らず充電バッテリー、携帯ゲーム機、ワイヤレスイヤホン、加熱式たばこ、電動ファン、空調服など、今やリチウムイオン電池は日常生活を至る所で支えている。
しかし、それにより増大するのが、電池の発火リスクだ。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE/ナイト)の調査データによると、2020年~2024年の5年間で発生したリチウムイオン電池搭載製品の事故件数は1860件で、中には人的被害の重症例10件、死亡例4件も含まれる。月別には暑い盛りの6月~8月に最も事故発生が多く、高熱により発火リスクが高まっている形だ。

当記事ではリチウムイオン電池の発火リスクについて、電気自動車やモバイルバッテリーの販売店・トヨタカローラ香川の担当者を取材した。どのような状況や場面で電池発火が起こるのか、そして注意点や対策などを紹介していく。

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実は繊細なリチウムイオン電池

一般的なリチウムイオン電池は、コバルト酸リチウムなどを使った「正極」とグラファイト(黒鉛)を使った「負極」、その間を隔てる「セパレーター」という膜で構成される。正極と負極の間を満たす「電解液」を介して、両極の間でリチウムイオンと電子が行き来することで電気が発生する仕組みだ。

この小さいながらも繊細な電池内構造が、厄介な点である。電解液が可燃性であるうえ、セパレーターの破損や化学的要因(リチウム結晶の生成など)で正極と負極が直接接触すると、内部短絡(ショート)が起こって電池内の電流が暴れ出し、やがて「熱暴走」へとつながるのだ。一部研究データでは熱暴走状態の電池内は1,000℃以上にもなり、その熱が電解液に引火することで発火事故を引き起こすのである。

発火事故の原因につながる使用方法や使用環境は、どのようなものか。トヨタカローラ香川の担当者によると、特に注意すべきは高温環境と過充電だ。

「特に停車中の自動車内が危ないです。
リチウムイオン電池は一般的に約45℃までの使用環境を想定したものですが、自動車のダッシュボードなどは50℃~80℃もの高温状態になりますから。うっかりスマホを暑い車内に放置してしまい、それが発火するケースは多いですね。過充電についても、電動ファンなどを充電器に差し込んだまま放っておいたら、そこから出火した事例があります」

落下の衝撃や極端な低温が…

高温環境や過充電は電池内の化学的状態を不安定にしてしまい、電解液のガス化をまねく。劣化したスマホのバッテリーがパンパンに膨らんで熱を持つように……ということを実際に体験した人、またはネット・SNSで見聞きした人は多いだろう。今すぐ使用をやめるべき、非常に危険な状態だ。

「バッテリーが入った機器を落としたり、ぶつけたりした場合も注意しましょう。外からの衝撃がセパレーターを傷つけると、これも内部ショートの原因になります」

例えばスマホを落としてしまったあと、電池の減りが早くなったり熱を持ちやすくなったりした場合は、なるべく早めに携帯ショップなどで見てもらった方が良い。また、高温がダメならば逆に冷やせば……?と思いがちだが、そうも上手くいかないらしい。

「夏とは逆に、冬場など極端な低温下でも、無理に充電したりするとバッテリーが劣化します。最大の充電容量が100%ではなくなりますし、冬場の劣化が夏場の発火要因になる可能性もゼロではありません。熱しすぎず冷やしすぎず、適温環境で使用することが大事です」

「サウナでスマートウォッチ」は危険

最初に書いたとおり、スマートフォン以外でもリチウムイオン電池を使用する機器は多い。例えばスマートウォッチなどは直射日光の当たる屋外のほか、時には銭湯などのサウナで着用している人を見かけることも。問題はないのだろうか?

「危険ですね。サウナの室温は80℃以上、時には100℃以上になりますから、好ましい環境ではありません。
リチウムイオン電池の使用推奨温度、0℃~35℃の範囲内で使うことが大事です」

一方、ワイヤレスイヤホンや加熱式たばこなど小機器にもリチウムイオン電池は使用されているが、これらは電池自体も非常に小さいため、発火規模自体はさほど大きくならない。だが、その「小ささ」が、スマホなどとは別のリスクを生むという。

「手に持った時に誤って落としてしまったり、拾おうとして逆に踏んでしまったり、そうしたことが内部を損傷させて発火につながる懸念はあります。Bluetoothのスピーカーを外に持ち歩く人もいますし、落とさないためにも雑な扱いは避けてください」

買い替えるべきタイミングは?

私用の電動ファンや作業現場用の空調服なども、暑い屋外で使用する前提のものであるため、特にバッテリー部分は直射日光に当たらないように意識しておきたい。

「また、機器や電池のサイズにもよりますが、リチウムイオン電池が正常に使える寿命はおおむね2~3年とされています。長く使っている機器の場合は経年劣化も考えられるので、バッテリー部分や機器自体の買い替えを検討しておきましょう」

総じてリチウムイオン電池の機器を使う場合の要点は(1)適温で使う、(2)丁寧に使う、(3)定期交換する、の3つだと言えそうだ。

全固体電池が普及すれば発火事故も減少か

トヨタカローラ香川が次世代のバッテリーとして推しているものが「全固体電池」だ。正極・負極間の電解質をほぼ固体にしたものであり、電解液を使っているリチウムイオン電池よりも頑丈で安全、温度変化にも強く、しかも自己放電率も低いので効率的と、良いことずくめである。

「全固体電池の使用推奨温度はマイナス20℃からプラス55℃と、リチウムイオン電池よりも広い範囲をカバーしているんです。発火事故防止にも効果的ですし、例えば地震災害に遭って冷暖房が使えないような状況でも安全に使えるので、防災備品にもオススメですよ!」

夏はますます暑く、冬はますます寒くなるであろう、これからの時代。私たち自身だけでなく、スマホやガジェット類の電池についても、極端な温度変化から守っていく知識や用意を備えていくべきだと思われる。

<取材・文/デヤブロウ>

【デヤブロウ】
東京都在住。2024年にフリーランスとして独立し、ライター業およびイラスト業で活動中。
ライターとしては「Yahoo!ニュース」「macaroni」「All Aboutニュース」などの媒体で、東京都内の飲食店・美術館・博物館・イベント・ほか見所の紹介記事を執筆。プライベートでも都内歩きが趣味で、とりわけ週2~3回の銭湯&サウナ通いが心のオアシス。好きなエリアは浅草~上野近辺、池袋周辺、中野~高円寺辺りなど。X(旧Twitter):@Dejavu_Raw
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