父が経営する会社を支えるため、未経験からトラックドライバーの道へ進んだ女性ドライバーのありささん。トラックの免許取得から現場での経験、力仕事や運転の苦労を乗り越え、現在では仕事に誇りを持ってハンドルを握っている。

なぜ、トラックドライバーになることを決意したのか。そして、女性ドライバーとして感じる仕事の魅力ややりがいとは。トラックドライバーの仕事に向き合い続けるありささんに、その歩みを聞いた。

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父の会社を救うため、下した決断

――トラックドライバーの仕事を始められたきっかけを教えてください。

ありさ:父が会社を経営しているのですが、数年前に大変な時期があったんです。従業員の方がケガをしたり、体調を崩してしまったりして、本当に人手が足りなくなっていました。

私はもともとトラックの免許を持っていたわけでもないですし、トラックドライバーに興味があったわけでもありませんでした。身体を動かす仕事は好きでしたが、父が廃業を考えているのを見て、「少しでも力になれたら」という思いが強くなりました。

弟と話し合い、「二人でトラックに乗って、変えていけるんちゃうか」という話になったんです。軽い気持ちではなく、本気で会社を支えたいと思って決めました。

――もし、お父様の会社が順調だったら、トラックドライバーにはなっていなかった?

ありさ:正直、なっていなかったと思います。私は以前、ドローン関連の会社に勤務していました。近い将来は海外へ行くことも考えていましたし、トラックドライバーになるなんて全く考えていませんでした。
弟も以前は漁師をしていて、私と同じようにトラックに乗ることは頭になかったと思います。でも、父が悩んでいる姿を見て、「今、自分たちが動くしかない」と思ったんです。

――決断に迷いはありませんでしたか?

ありさ:父の力になりたいという気持ちが強かったので、迷いはありませんでした。それに、新しいことに挑戦できる機会って、人生でそんなに多くはないと思いましたし、「今しかない」という気持ちもありました。父にそのことを話した翌日には、トラックの免許を取るために教習所へ向かいましたから(笑)。

転職前はドローンを飛ばしていた

――以前のお仕事について教えてください。

ありさ:ドローンの操縦士資格を取得して、実際に飛ばして空からの景色を撮影する仕事をしていました。普段見ることのできない景色を見ることができて、すごくいい経験になりました。また、アート引越センターでアルバイトを2~3年していたこともあります。力仕事でしたが、もともと体を動かすことが好きなので、充実していました。

――トラックの免許取得は大変でしたか?

ありさ:中型免許を取得しました。初めて技能教習でトラックに乗った時は、普通車とは運転の感覚が全然違って、すごく難しかったです。車幅や内輪差、バックなど、何もかもが難しくて何度も心が折れそうになりました。
2~3回落ちてしまったのですが、それでも諦めずに練習を続けました。3ヶ月後くらいにようやく免許を取得できた時は、ほんまに嬉しかったです。

朝3時半に起床…ストイックな毎日を過ごす

「父の力になれたら…」未経験からトラック運転手に転身した女性の奮闘記。朝3時半起きで終業後はジムへ…ストイックな生活
きょうだいで撮った1枚
――初めて仕事でトラックに乗った時はいかがでしたか?

ありさ:最初の1ヶ月くらいは、父が隣に乗って見てくれていました。弟が乗ってくれる時もありました。弟はまだトラックの免許を持っていなかったのですが、隣にいてくれるだけでも安心できました。家族が協力してくれたおかげで、少しずつ自信を持って運転できるようになりました。

――現在はどのようなお仕事を担当されていますか?

ありさ:父の会社では、鉄骨や鉄筋などの鋼材を扱っています。大阪を拠点にして、関西を中心に運送しています。運転だけではなく、積み込みや荷下ろしも自分で行います。決まった場所に行く仕事ではなく、毎回違う現場や工場、企業へ運ぶことが多く、いつも新鮮な気持ちで仕事に取り組めて楽しいですね。「久しぶりやな」と声をかけてもらえる方もいますし、初めてお会いする方も多いです。人との出会いがあることも、この仕事の魅力だと思います。

――ありささんのような若い女性がトラックから降りてくると、驚かれることも多いのでは?

ありさ:けっこう驚かれます。
「こんな重い物をよう持てるなぁ」と言われることもあって、それがすごく嬉しいです。そう言っていただけると、「もっと頑張ろう」と思えますし、その日のトレーニングもめちゃめちゃ頑張れます。あと、女性だからなのか、荷物を運ぶ時に手伝ってくださる方も多いですね。弟ともその話をしたことがあるのですが、「やっぱり俺より手伝ってもらえてるんやな」と言われました(笑)。

――一日の流れを教えてください。

ありさ:仕事の日は朝3時半から4時頃に起きて会社へ向かいます。積み込みをしたら現場へ行き、荷下ろしや宵積み(よいづみ)をして帰社します。その後はジムへ行き、トレーニングが終わったら必ずサウナに入ります。帰宅後は動画編集やSNSの投稿をして、20時には寝るようにしています。体が資本なので、睡眠はほんまに大切にしています。7~8時間は寝るように心がけていますね。

過酷な力仕事と大変なトイレ事情

――仕事で大変だと感じることはありますか?

ありさ:一番大変だと感じるのは、やっぱり力仕事です。重たい荷物を動かしたり、荷締めをしたり、雨の日に重たいシートをかける作業は、最初はほんまに大変でした。
でも、その経験があったからこそ「もっと体力をつけたい」と思うようになりましたし、ジムに通うきっかけにもなりました。今ではできることも少しずつ増えてきて、自分の成長を実感しています。

あとは、トイレですね。行きたくても、まずトラックを停められる場所が少ないんです。コンビニでも敷地が狭いと停められませんし、ドライバーにとっては大きな問題だと思います。

――何か対策はしていますか?

ありさ:関西であれば、「ここならトラックを停められるな」という場所はある程度把握できるようになりました。ただ、どうしても停める場所がないエリアもあるので、その時は水分を控えることもあります。

――運転中に失敗した経験や大変な出来事はありますか?

ありさ:狭い道に入り込んでしまって、なかなか抜け出せずに渋滞を作ってしまったことがあります。高さ制限のあるトンネルの手前まで行ってしまったんですが、通れなくて、そこでUターンしなければならなくなりました。カーナビでは通れる表示だったんですが、トラックでは無理で……。道も狭くてUターンするスペースがなく、ほんまに泣きそうでした。20分くらいかかったと思います。


――後ろの車の方々も待っている状況ですよね。

ありさ:そうなんです。でも、その時に後ろの車の方々が少しずつバックしてスペースを作ってくださったり、車から降りて誘導してくださったりしました。「行けるか?ほんまに行けるか?」って心配してくださって。申し訳ない気持ちもありましたが、本当に優しい方ばかりで、すごくありがたかったです。

あと、タイヤがバーストした時も大変でした。3車線の高速道路で、一番右の車線を走っていた時に右前のタイヤが突然バーンと破裂したんです。その瞬間からハンドルがグラグラして、車体があっちへ行ったりこっちへ行ったりして、ほんまに怖かったです。本来なら左へ寄らなければいけないのに、一番右の車線で止まってしまった状態だったので、いつ追突されてもおかしくない状況でした。警察を呼んで指示に従いながら、なんとか安全な場所へ移動しました。今では運転にも慣れましたが、最初は乗るたびに緊張していました。

――長距離運転で眠気対策はしていますか?

ありさ:一番大事なのは、しっかり睡眠をとることだと思っています。
眠くなりそうな時は無理せず休憩しますし、辛いガムを持ち歩いたり、窓を開けて風を浴びたりします。ほっぺたをめちゃめちゃ叩くこともあります(笑)。でも、安全第一なので絶対に無理はしません。

荷物を届けた時の達成感は何にも代えがたい

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貪欲に学んでいく
――仕事の魅力や、やりがいを感じる瞬間は?

ありさ:荷物を無事に届けた時の達成感がすごく好きです。「ありがとう」と言っていただけるとほんまに嬉しいです。自分が運んだ資材が建物になっていくと思うと、「この仕事は世界を支えている仕事なんやな」と感じます。あとは、毎日体を動かしているので、自然と体力がついたことも大きいですね。

――体力アップのために意識していることはありますか?

ありさ:ランニングをしていますし、できるだけ栄養バランスを考えて食べるようにしています。睡眠もしっかり取るようにしていますね。特に腕の力がないとこの仕事は大変なので、腕は意識して鍛えています。サプリメントを使うよりは、食事から栄養を取ることを大切にしています。野菜、果物、肉、魚、卵など、バランスよく食べています。あとは水ですね。美容面もありますが、私の場合は水分が足りないと体調が良くないので、1日2リットル以上は飲むようにしています。夏場は4リットルくらい飲むこともあります。

――トラックドライバーのキャリアはどのくらいですか?

ありさ:もうすぐ丸4年になります。まだまだ学ばなければいけないことはたくさんありますが、スタッフの皆さんが本当に優しく、いつも支えてくださっているおかげで楽しく仕事ができています。取引先の方たちとも仲良くしていただいていて、積み荷に行く時間も本当に楽しいです。

業界の未来を見据えたうえでの目標が

――近年、女性ドライバーは増えてきていると感じますか?

ありさ:少しずつですが、私が始めた時より増えてきていると思います。SNSで仕事の様子を発信するようになってから、女性ドライバーの方とつながる機会がすごく増えました。

まだまだ女性が少ない業界ですが、もっと女性が挑戦しやすく、活躍できる環境になればめちゃめちゃ嬉しいです。力仕事ではありますが、コツをつかんだり、道具を使ったりすれば女性でも十分できる仕事だと思います。女性ならではの丁寧さや気配りも、安全確認などに活かせると思います。

――最後に、今後の目標を教えてください。

ありさ:今はがむしゃらに経験を積んでいますが、将来的には会社の成長に貢献できる存在になりたいと思っています。父の会社をもっと大きくすることは、私の大きな夢の一つです。そして、自分が経験して感じたトラックドライバーの魅力や楽しさを、これからも発信していきたいです。「女性でもトラックドライバーになれるんだ」と思ってもらえるようなきっかけを作れたら嬉しいですね。

<取材・文/浜田哲男>

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ありさ


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【浜田哲男】
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界を経て起業。「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ・ニュース系メディアで連載企画・編集・取材・執筆に携わる。X(旧Twitter):@buhinton
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