「投資で失敗するのは、知識がない人」
そう思っている方もいるかもしれません。

しかし銀行員として約20年間、多くのお客様のお金に関する相談を受ける中で、私が目の当たりにしたのは少し違う現実でした。


忘れられないのが、投資で大きな利益を出したことをきっかけに、次第に投資額を増やし、最後には多額の借金を抱えてしまったお客様です。

始まりは「失敗」ではありません。むしろ、「成功」でした。

今回は、そのお客様がなぜ投資にのめり込み、自己破産にまで至ってしまったのか。銀行員時代の経験から、投資で絶対にやってはいけないことをお伝えします。

「こんなに簡単に儲かるのか」最初の成功が人生を狂わせた

元銀行員が見た「投資で成功した40代男性」の末路。多額の借金...の画像はこちら >>
銀行員時代、投資について相談を受けた40代のお客様がいました。

会社員として安定した収入があり、もともとは投資に積極的なタイプではありませんでした。ところが、余裕資金の300万円ほどで株式投資を始めたところ、相場にも恵まれ、半年ほどで100万円近い利益が出たのです。

「こんなに簡単に儲かるなら、もっと早く始めればよかった」

当時、お客様は嬉しそうに話していました。

しかし、この成功をきっかけに投資への向き合い方が変わっていきます。

300万円だった投資額は500万円、800万円……と増えていきました。さらに短期間で大きな利益を狙うようになり、値動きの激しい銘柄やFX、仮想通貨にも手を出すようになりました。

最初に100万円近く儲かった経験が、「自分には投資の才能がある」という自信に変わってしまったのです。


投資で怖いのは、損をすることだけではありません。

最初にうまくいったことで、自分が許容できるリスクを見誤ってしまうこともあります。

このお客様の場合、それが後に大きな損失へとつながっていきました。

損失を取り戻すため、借金してまで投資につぎ込んだ

相場はいつまでも思い通りには動きません。

ある時から保有していた銘柄が下落し、FXや仮想通貨でも損失が重なりました。800万円近くまで増やしていた投資資金は、短期間で大きく減っていきました。

本来なら、ここで投資額を減らすという選択肢もあったはずです。

しかし、お客様が考えたのは逆でした。

「もう少し資金があれば、取り戻せる」

最初は預貯金から追加でお金を入れました。それでも損失が膨らむと、今度はカードローンや消費者金融などで借りたお金まで投資に回すようになったのです。

100万円を失えば、100万円を取り戻したくなる。さらに損失が200万円、300万円と膨らむほど、「ここでやめたら損が確定してしまう」という気持ちが強くなっていきました。

気がつけば、投資の目的は「資産を増やすこと」から、「失ったお金を取り戻すこと」に変わっていました。


銀行員として見ていて怖いと感じたのは、この変化です。

余裕資金で始めたはずの投資が、いつの間にか貯金を使い果たし、さらに借金をしてまで続けるものになってしまったのです。

相場が急落。資産を失い、最後に残ったのは多額の借金だった

元銀行員が見た「投資で成功した40代男性」の末路。多額の借金を抱え、破産に至った“絶対にやってはいけないこと”
※写真はイメージです(画像生成にAIを使用しています)
そして、決定的な出来事が起こります。

相場が大きく下落したのです。

株式だけでなく、FXや仮想通貨でも損失が拡大。特に大きなリスクを取っていた取引では、相場が少し動いただけでも損失が一気に膨らみました。

「ここまで下がったのだから、そろそろ戻るはず」

そう考えて投資を続けましたが、相場はさらに下落しました。

気がついたときには、それまで貯めてきた預貯金の多くを失っていました。

しかし、もっと深刻だったのは、その後です。

投資したお金がなくなっても、カードローンなどで借りたお金は消えません。手元の資産はほとんどないのに、毎月の返済だけが残りました。


投資で利益を出していた頃には想像もしていなかった状況です。

300万円の余裕資金から始めた投資が、最後には資産を増やすどころか、多額の借金を抱える結果になってしまったのです。

相場が下がること自体は珍しくありません。

しかし、借金をして投資をすると、その下落が単なる「投資の損失」では済まなくなります。

私はこのお客様を通じて、その怖さを目の当たりにしました。

銀行員として痛感した「投資で絶対にやってはいけないこと」

最終的に、お客様は自力で借金を返し続けることが難しくなり、自己破産を検討することになりました。

ここで知っておきたいのが、「自己破産をすれば、どんな借金でも必ずなくなる」というわけではないことです。

破産手続を開始しただけでは借金の支払い義務はなくならず、原則として裁判所から「免責」を認めてもらう必要があります。また、著しい浪費などによって財産を減らしたり、過大な債務を負ったりした場合などは、免責が認められない可能性もあります。

ただし、免責不許可事由があったとしても、事情によって裁判所が免責を許可する場合があります。つまり、「投資で作った借金だから絶対に自己破産できない」と単純に決まるものではありません。

この経験から、私が投資で絶対にやってはいけないと感じたのは、「損失を取り戻すために借金をすること」です。


投資は余裕資金で行っている限り、最悪の場合でも失う金額には限度があります。

しかし100万円を借りて投資すれば、その100万円を失ったあとにも借金は残ります。さらに「取り戻したい」と200万円、300万円と借入額を増やせば、投資の失敗が日常生活まで壊してしまう可能性があります。

投資で大切なのは、常に勝つことではありません。

「負けたときに、人生まで失わないこと」

銀行員としてさまざまなお客様を見てきたからこそ、投資を始める前に「いくら儲けたいか」より、「いくらまでなら失っても生活に影響しないか」を決めておくことが大切だと感じています。

<文/渡辺智>

【渡辺智】
某メガバンクに11年勤務。リテール営業やプライベートバンカー業務を経験。その後、外資系保険会社で営業。現在は金融ライターとして独立。FP1級保有。難しい「お金の話」をわかりやすく説明することをモットーにしています。公式SNS(X)は、@watanabesatosi7
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