162試合の長いレギュラーシーズンが終わった。9月29日(日本時間30日)から、MLBのポストシーズンが始まる。

 今年は日本のファンにとって、例年以上に目移りする10月になりそうだ。大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希のドジャース、鈴木誠也と今永昇太のカブス、松井裕樹のパドレス、村上宗隆のホワイトソックス、今井達也のアストロズ、吉田正尚のレッドソックス。なんと日本人選手9人が所属する6球団がPSへ進んだ。

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 全12球団の半分に日本人選手がいる。これだけそろえば「今年こそワールドシリーズでも日本人対決が見られるのでは」と期待したくもなるだろう。もし日本人選手が所属する球団同士のWSが実現すれば、岩村明憲のレイズと田口壮のフィリーズが対戦した2008年以来、18年ぶりだ。

ホワイトソックス躍進の立役者・村上宗隆にかかる期待

 なかでも、メジャー1年目で初めてのPSを迎える村上には大きな期待がかかる。

 ホワイトソックスは2023年から3年連続で100敗以上。2024年には近代MLB最多の121敗まで沈んだチームだ。しかし、今季は84勝78敗まで盛り返し、2021年以来5年ぶりとなるPS進出を決めた。まさに今季最大級の復活劇と言っていいだろう。

 しかもワイルドカードシリーズで対戦するアストロズは81勝81敗。何とか借金を背負わずにシーズンを終えたチームである。


 村上にも、アストロズ投手陣を打ち崩した記憶がある。7月26日の一戦では2本塁打6打点と爆発し、12-3の大勝を呼び込んだ。ホワイトソックスはレギュラーシーズンの成績も上で、主砲にも派手な成功体験があるとなれば、十分に勝算はありそうに見える。

年間成績ではホワイトソックス優勢も…見逃せない不安材料

 ところが、少し視点をずらすと、話が変わってくる。

 地区優勝したアストロズは第3シードのため、最大3試合のワイルドカードシリーズはすべて地元ヒューストンで戦うことができる。さらに今季の直接対決でも、アストロズが5勝2敗で勝ち越している。

 それだけではない。今季PSへ進んだ他の11球団との直接対決に絞ると、アストロズは27勝22敗。対するホワイトソックスは24勝36敗と大きく負け越していた。

 この差は、両球団がどこから白星を積み上げたかを見るとわかりやすい。ホワイトソックスはPSに届かなかった18球団に60勝42敗と大きく勝ち越した一方、アストロズは54勝59敗と負け越している。

 ところが、10月に戦う相手はいずれも強豪ばかり。そんな11球団に対して、アストロズは勝率.551で勝ち越したのに対し、ホワイトソックスは同.400。
年間ではホワイトソックスが3勝多かったものの、PS進出球団との対戦に限れば見え方は逆転するのだ。

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2026年PS進出12球団「対PS進出11球団」直接対戦成績
 なお、アストロズには今井も所属している。ワイルドカードシリーズの正式ロースターはまだ発表前だが、26人枠に入れば村上との日本人対決が実現する可能性もありそうだ。

パドレス対カブスにも見える“順位表とのズレ”

 同じ「順位表とのズレ」は、ナ・リーグの日本人対決でも見つかる。

 松井のパドレスは91勝71敗。鈴木、今永のカブスは89勝73敗だから、レギュラーシーズンではパドレスが2勝上回っていた。こちらも第4シードのパドレスが本拠地開催の権利を持ち、シリーズはすべてサンディエゴで行われる。

 だが、PS進出球団との対戦ではカブスが30勝29敗で勝ち越したのに対し、パドレスは23勝33敗。さらに両球団の直接対決でも、カブスが5勝1敗と大きく勝ち越している。

ドジャースは「PS進出球団に負け越し」という意外な事実…

 そして、最も意外なのがドジャースだ。

 大谷、山本、佐々木を擁するチームは今季100勝62敗。レギュラーシーズンの勝率はブルワーズに次いで全体2位である。ワイルドカードシリーズも免除され、十分な休養を経て地区シリーズから登場する。

 これだけを見れば、日本人選手が所属する6球団の中でも最も有利な位置からPSを迎えるように映る。
ところが、今季PSへ進んだ他の11球団との直接対決は27勝29敗。100勝したドジャースが、10月に残った相手には「借金2」なのだ。

 こちらも白星の内訳を見ると、PS不出場の18球団には73勝33敗と「40」もの貯金を作った一方、PS進出球団には勝ち越せなかった。

 もちろん、それだけでドジャースが短期決戦に弱いとは言えない。対戦数も相手の構成も球団ごとに違い、PSでは先発ローテーションやブルペンの使い方までレギュラーシーズンとは変わる。それでも、100勝という数字から受ける印象ほど、今年のPS組を圧倒してきたわけではないのも事実だ。

 さらに対PS組の成績で上位3球団に入ったのは、ブルワーズ、ブレーブス、レイズ。いずれも日本人選手が所属していないチームだった。

「順位表とは違う物差し」で見える“PSの面白さ”

 日本人9人が所属する6球団は、果たしてどこまで勝ち進むのか。ここまでの数字が10月の勝敗を決めるわけではないが、162試合の順位表とは違う物差しを一つ持っておけば、今年のPSも少し違って見えてくるのではないだろうか。

 100勝ドジャースの「借金2」は本番で消えるのか。村上のホワイトソックスは勝率.400という数字を覆せるのか。
日本人選手がこれだけ残った秋だからこそ、その明暗まで追いかけたい。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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