そんな視聴者の行動を、短い言葉で伝えるXの投稿がある。《チャンネル変えた》だ。
人は、どんな場面でテレビに“見切り”をつけるのか。9月25日から30日までの《チャンネル変えた》を含むX投稿から、視聴をやめたトリガー(きっかけ)を拾った。今回は、どの番組を見ていたのか明確に分かるものに絞り、実際の放送内容と照らし合わせた。
怖い音楽、都市伝説
たとえば、9月30日にはこんな投稿がある。《急な怖い話やめてね 心臓に悪いわ、チャンネル変えた》
添えられていたのは、『めざましテレビ』(フジテレビ系)のハッシュタグだった。この日の放送では、中島健人が小学校時代、『トイレの花子さん』を見たことをきっかけに、赤いドレスのお化けが追いかけてくるようなホラー作品に興味を持つようになったと語っていた。
話の内容自体がそこまで怖いわけではなかったが、後ろには、いかにも恐怖をあおるようなBGMが流れていた。朝の支度をしながら気軽にテレビをつけていた人には、その音が身構えるきっかけになったのかもしれない。
怖さを避けるのは、見ている本人のためとは限らない。9月27日には、
《都市伝説めっちゃいいところだったけど子がニガテなのでチャンネル変えた》
という投稿もあった。
同日放送の『ウソかホントかわからない やりすぎ都市伝説スペシャル2026秋』(テレビ東京系)では、その場面で、世界恐慌や第二次世界大戦などを予言し、言い当てたとされる超能力者エドガー・ケイシーを取り上げていた。
本人は続きを見たくても、子どもが苦手なら切り替える。家族で見るテレビでは、自分の好みだけでチャンネルが決まるわけではない。
軽部アナの「鳴き声」
そして、リモコンに手を伸ばさせる“音”は、怖い音楽ばかりではなかった。《軽部さんがゴジラの奇声発した瞬間に チャンネル変えた》
これは9月28日放送の『めざましテレビ』(フジテレビ系)についての投稿だ。
この日、軽部真一アナウンサーは、11月3日に全国公開される山崎貴監督の新作映画『ゴジラ-0.0』を紹介。9月26日(現地時間)に第64回ニューヨーク映画祭の「スポットライト・ガラ部門」で世界最速上映された模様とともに、ゴジラの永遠のライバル・キングギドラが登場することを伝え、その金属音のような鳴き声を自ら再現した。
それを面白がった伊藤利尋アナウンサーから「どんな鳴き声が入ってましたっけ?」と振られ、再び披露する流れに。投稿では「ゴジラ」とされていたが、実際にまねていたのはキングギドラだったようだ。
投稿者が示したのは、「番組がつまらなかった」という漠然とした不満ではない。軽部アナが声を発した、その瞬間だ。番組内の軽いやり取りでも、朝から聞きたい音かどうかは別の話。その一声が、チャンネルを変える引き金になったようだ。
赤ちゃんの泣き声、威圧的な父親像
最近の視聴者は音に敏感なのか。9月29日放送の『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(日本テレビ系)にも、音を理由にした投稿があった。《ずっと赤ちゃんがぎゃあぎゃあ泣いてるの聞かされるの無理 チャンネル変えた。 オモウマ関係ねえ》
《赤ちゃんの泣き声でチャンネル変えた》
番組で紹介されたのは、北海道・旭川で今年8月にオープンした定食屋。店主は2児の母で、営業終了後に子どもたちと回転ずし店を訪れる様子にもカメラが密着した。生後11カ月の二女も一緒だったが、帰りの車中ではスタッフへの警戒からか泣き止まず、大きな泣き声が流れ続けた。
店主の人柄や家族との日常を伝える場面だったのだろう。ただ、店や料理を楽しみに見ていた視聴者には、長く続く泣き声が負担になったようだ。
もっとも、音を抑えれば見続けてもらえるわけでもない。登場人物の言動そのものが、見る人の気持ちを遠ざける場合もある。
《ブラッサム、面白そうだけど、 朝からモラ父見たくなくて、 チャンネル変えた…》
9月30日に投稿されたこの声が指すのは、28日にスタートした、石橋静河主演のNHK連続テレビ小説『ブラッサム』。作家・宇野千代をモデルとする主人公・葉野珠の父、清治を演じるのは渡部篤郎だ。
清治はしつけに厳しく、29日放送の第2話では、妻のリョウ(国仲涼子)を怒鳴ったり、幼い珠を蔵に閉じ込めたりする姿が描かれた。
投稿者も《面白そうだけど》と、作品への興味は示している。それでも、朝から威圧的な父親の姿は見たくない。物語への期待より、その場面を避けたい気持ちが勝ったようだ。
スキャンダルから復帰したタレント
もちろん、内容に入る前に、出演者の登場だけで離れる人もいる。9月27日放送の『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)にベッキーが出演すると、《ベッキー出たのでチャンネル変えた》などの投稿が相次いだ。2016年の不倫スキャンダルを機に番組から退き、事実上降板していたベッキー。約10年ぶりに登場したが、歓迎する人ばかりではなかったようだ。番組を好きで見ていても、ベッキーには戻ってきてほしくない。そんな拒否感を示す投稿に加え、翌28日には、
《自分がやらかした事で迷惑かけて出られなくなったのに泣いて美談化してるように見えてチャンネル変えた》
という声もあった。本人への不信感だけでなく、涙の再会を感動的に見せる番組の演出にも、違和感を覚えたようだ。
生成AIイラスト
出演者への好き嫌いとは別に、画面に差し込まれるイラストに反応した投稿もあった。《ヒルナンデス見てたら生成AIの絵が矢が飛ぶように使われまくっててチャンネル変えた。気持ち悪すぎる…》
いったい、どんな場面で使われていたのか。
投稿された9月28日の『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)には、三代目市川右團次の息子・右近が登場。
2016年12月に東京・丸の内でおこなわれ、約6000人の観客が集まったというお練りの様子から、一家行きつけのイタリアンでレモンクリームパスタをシェアする姿、メニューから外れた同料理の復活を家族で手を合わせて直談判する様子まで、生成AI独特のタッチのイラストが次々と登場。投稿者は、その多用に不快感を覚えたようだ。
「つまらない」だけが原因ではない
映像そのものを楽しみにしていても、見続ける気持ちが途切れることはある。《CM挟みすぎで内容が入ってこないからチャンネル変えた。》
9月25日、番組公式アカウントに寄せられた返信だ。この日放送されていたのは、『ザワつく!金曜日&ザワつく!特別編ドローンの会 合体3時間SP』(テレビ朝日系)。後半は、ドローンならではの迫力ある映像を撮影する人気企画だったが、途中でCMを挟む場面が目立った。
迫力の映像で視聴者を引きつけても、たびたび中断されれば集中は途切れる。「続きを見たい」という期待が、待たされるうちに「もういい」に変わることもあるようだ。
興味深いのは、「つまらない」だけが原因ではないことだ。不快、嫌い、怖い、気まずい――そんな感情が生まれた瞬間、人はリモコンに手を伸ばすようだ。
もちろん今回の投稿だけで視聴者全体の傾向や、視聴率への影響を判断することはできない。それでも、《チャンネル変えた》という短い言葉には、最後まで見た人の感想からは分からない、離れた瞬間のリアルが残っている。
<TEXT/川瀬孝雄>
【川瀬孝雄】
テレビ業界に身を置く傍ら、フリーライターとして芸能・テレビ番組を中心にコラムや分析記事を執筆。テレビ番組のトレンドやドラマの傾向、芸能人の動向などを独自の視点で読み解き、ニュースサイトを中心に寄稿している。
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