決着が第3戦までもつれたことは、少なくとも疲労面においてドジャースに追い風となるだろう。ブレーブスはこの試合だけでも6投手を投入。最後は第1戦に先発したクリス・セールが中1日で1回1/3を救援した。
ブレーブスは休養を1日挟んでロサンゼルスへ向かう一方、ドジャースは9月27日のレギュラーシーズン最終戦から実戦を離れ、地区シリーズへ備えてきた。もちろん、休めば休むほど有利という単純な話でもない。勝ち上がったチームは実戦の緊張感を保って乗り込んでくる。ドジャースがこの休養を初戦から生かせるかは、一つのポイントになりそうだ。
ドジャース好調の裏にある“皮肉な数字”
そんなドジャースは9月を18勝7敗で駆け抜け、100勝62敗でレギュラーシーズンを終えた。だが、この好調な1か月には、少しばかり皮肉な数字も残っている。大谷翔平の欠場が続いていた頃、Xでは「実は大谷君いない方がドジャースは強いんじゃね?」との投稿が約100万回表示されるほど反響を集めた。身もふたもない一言だが、それだけ目を引く状況だったのだろう。
実際、9月に大谷が出場した8試合でドジャースは4勝4敗。対して一度も出場しなかった17試合では14勝3敗だった。
ただし、8試合と17試合である。対戦相手も違えば、味方の先発投手も違う。この数字だけで「大谷が出るとドジャースが弱くなる」とまで結びつけることはできない。
それでも、勝敗だけではないのが興味深い。大谷出場時のドジャースは1試合平均4.25得点だったのに対し、不在時は5.71得点。大谷がいなかった試合の方が、1試合あたり1.5点近く多く取っていた。
9月は打率2割、本塁打ゼロ…大谷自身の状態は
そこで気になるのが、大谷自身の状態だ。9月は30打数6安打の打率.200、0本塁打、1打点、14三振。上旬から欠場が続き、7日に一度戻ったものの再び戦列を離れた。その後、右上腕二頭筋と左膝の問題で負傷者リストに入り、23日に復帰するまで、2週間以上も実戦から遠ざかっていた。大谷らしくない成績と、チームの14勝3敗。それだけを並べれば、「いない方が強い」という声が出るのもわからなくはない。
好調の要因とも言える「ベッツ復調」と「投手陣の奮闘」
だが、ここで大谷だけを原因にすると、9月のドジャースで本当に起きていたことを見失う。大谷が出なかった17試合では、打線が点を取っただけではなく、チームも1試合平均2.71失点に抑えていた。
打者の象徴はムーキー・ベッツだった。シーズン中盤まで苦しんでいたが、9月は打率.337、7本塁打、22打点。大谷が離脱したタイミングで、もう一人の看板選手が本来の姿を取り戻した。
ドジャースが誇る強力な先発投手陣
先発陣も頼もしい。山本由伸、タリク・スクーバル、ブレイク・スネル、タイラー・グラスノーという4枚が揃った。5戦3勝制の地区シリーズで、この顔ぶれを並べられること自体が大きな武器になるだろう。それは9月だけの話でもない。今季のドジャースは801得点を挙げる一方、失点は前年の683から600まで大きく減らした。100勝の派手さに隠れがちだが、大谷を欠いても崩れなかったのは、打線だけでなく、失点を減らせるチームになっていたからでもある。
つまり、大谷がいなかったから強くなったのではない。大谷が万全ではなく、やがて戦列を離れた時期に、ベッツが立ち直り、先発陣も揃った。
大谷の打撃が戻れば、打線はさらに強力に
そして地区シリーズでは、大谷の打撃まで戻る可能性がある。23日の復帰後5試合は21打数5安打、8三振。結果だけを見ればまだ物足りない。それでもブランドン・ゴームズGMは大谷の体調について良好との見方を示し、デーブ・ロバーツ監督も、この2か月で最もいい状態の大谷が見られることに期待を寄せている。
だからこそ、レギュラーシーズン終了から地区シリーズまでの5日間には意味がある。大谷にとっては体を休ませる時間であるだけでなく、打撃の感覚を取り戻す時間にもなるはずだ。
ベッツが9月の状態を維持し、山本ら先発陣が試合を作る。そして大谷までいつもの打撃を取り戻す。そうなれば、少なくとも打線と先発陣には大きな死角が見当たらない。
短期決戦の命運を握るブルペン投手陣
もちろん、100勝チームにも不安は残る。ブルペンだ。エドウィン・ディアスは故障と不振で9回を固定できず、タナー・スコットらを含めても、絶対的な勝ちパターンは固まり切っていない。短期決戦では、一つの継投ミスがそのままシーズンを終わらせることもある。
「いない方が強い」と言われた大谷が、3連覇への主役になるか
「大谷がいない方が強い」——。9月だけを切り取れば、そんな皮肉まで成立してしまった。しかし、見方を変えれば意味はまったく違ってくる。ドジャースは大谷を欠いても14勝3敗で走れるほど強くなっていた。そして今度は、そこへ状態を戻しつつある大谷が加わる。
ドジャースは今秋、1998~2000年のヤンキース以来となる3連覇を目指している。「いない方が強い」と言われた男が最後に主役をさらっていくなら、それこそ“このチームらしい秋”になるのかもしれない。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。
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