ドジャース・大谷翔平のバットから、快音が聞こえてこない。
 ドジャースがブルワーズに敗れたナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第2戦。
4打数無安打に終わった大谷の打席を見て、気になったのは、強い打球がなかなか生まれないことだった。

大谷翔平、バットは速く振れているのに打球が弱い…PS「打率1...の画像はこちら >>
 大谷らしい豪快なスイングが消えたわけではない。それでも、何とかボールに食らいつこうとするような、普段よりコンパクトに見えるスイングがあった。バットを振る力は残っているはずなのに、なぜ強い打球が生まれないのか。

打率1割5分、打点ゼロ…それでも第3戦は先発起用へ

 初回は先発ローガン・ヘンダーソンのフォーシームに空振り三振。3回には94.9マイル(約153キロ)の速球を捉えきれず、力のない三ゴロに倒れた。6回も左腕ジョジョ・ロメロのスイーパーにタイミングが合わず、再び三振を喫している。

 主砲が沈黙するなか、ドジャースは連敗スタート。ポストシーズン(PS)は20打数3安打で、打率.150、本塁打どころか打点もいまだゼロだ。試合後にはスタメンを外れる可能性まで取り沙汰されたが、デーブ・ロバーツ監督は第3戦も大谷を先発起用する方針を示した。

大谷が語った「スイングのクセ」…不振の背景に何が

 そんな折、大谷本人の口から、気になる言葉が飛び出した。

 13日(日本時間14日)に行われた第3戦の前日会見で、大谷は自身の体について「状態はよくなっている」と説明。打撃不振についても「実力だから」と受け止め、故障を言い訳にはしなかった。

 一方で、スイングについては、以前の感覚を取り戻そうと試行錯誤を続けているという。
長く状態が良くない中でプレーすると、スイングにクセがつく場合もあると説明した。

 今季は左膝や右腕に故障を抱え、9月には負傷者リスト(IL)入りも経験している。体の状態は改善しているものの、以前のスイングを取り戻すための試行錯誤は続いている。

「毎日、毎日工夫をしながらやっている」

 その言葉を聞くと、第2戦で見えたスイングの微妙な違いも気になってくる。本人が語った「クセ」と直接結びつけることはできないが、少なくとも大谷自身が打撃の修正に取り組んでいるのは確かだ。

8月から低下した「ブラスト率」…数字に表れた異変

 では、大谷の打撃にはいつから変化が表れていたのか。

 MLB公式のデータサイト「Baseball Savant」で調べたのは「ブラスト率」という指標だ。バットの速度とボールを捉えた位置から、強い打球を生み出す条件を満たしたスイングの割合を示す。

 今季の大谷は3~4月が14.8%、5月が13.9%。6月には16.5%、7月には16.9%を記録していた。6月以降は故障を抱えながらプレーする時期もあったが、それでもブラスト率は高い水準を維持していた。

 ところが、8月に12.6%まで低下すると、9月は11.5%、さらにPSでは4.7%にまで落ち込んだ。PSの合計43スイングで、ブラストと判定されたのはわずか2回だけだ。


 特に興味深いのは、7月から8月にかけての変化である。ブラスト率が16.9%から12.6%へ4.3ポイントも低下した一方、平均バット速度は74.7マイル(約120.2キロ)から74.9マイル(約120.5キロ)へ、わずかながら上がっていた。

バット速度は落ちていない…強い打球を阻むタイミングのズレ

 この食い違いは、PSでも続いている。平均バット速度は75.4マイル(約121.3キロ)と、9月の74.5マイル(約119.9キロ)を上回る。それでも、強い打球につながるスイングは極端に少ない。

 つまり、バットを速く振れなくなったわけではなく、振る速さとは別のところで、何かがかみ合わなくなっているということだろう。

 その手がかりを示したのが、MLB公式サイトの10月13日付記事「Here’s the root of Ohtani’s slump. Is there time to fix it?」(大谷の不振の原因はここにある。修正は間に合うのか)だ。

 同記事は、速球に対してスイングが遅れ、ボールを捉える位置が通常の約27インチ(約69センチ)から22インチ(約56センチ)へ後退していると分析。スイング軌道そのものには大きな変化がないとも指摘した。

 スイング軌道が大きく変わらなくても、ボールを捉えるタイミングがずれれば、強い打球は生まれにくい。バット速度と打球の質がかみ合わない現状を説明する分析だ。

復活への課題は「スイングの修正」

 ポストシーズンは試合数が少なく、数字も大きく変動しやすい。
しかし、今回の不振につながる兆候は、すでに8月から数字に表れていたのだ。

 第3戦でも、大谷は打席に立つ。安打や本塁打を待ち望むファンの期待に応えるためにも、乗り越えなければならない課題がある。

 試行錯誤を重ねながら、持ち味である豪快な打撃を取り戻すこと。大谷がいま向き合っているのは、目先の結果だけではなく、自分自身の打撃との闘いなのだろう。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
編集部おすすめ