◆JERA セ・リーグ DeNA1ー3巨人(4日・横浜)
巨人はバッテリーの活躍でDeNAに快勝し、単独首位に立った。今季初スタメンの岸田行倫捕手(28)が3回に貴重な適時打を放つと、6回には1号ソロで2安打2打点。
右翼方向から緩やかに吹くハマ風が、岸田を後押しした。時にはグリップエンドの上部付近を握る男が「気持ち長く」持ったバットで捉えた放物線は、左中間席最前列へ伸びた。「必死にいきました」。2―0の6回1死、カウント3―1から低め直球を狙い澄まして強振した。今季初スタメンで1号ソロ。東からの一発は巨人打者としては23年9月1日(横浜)の6回に長野が打って以来、45イニングぶり。ダイヤモンドを一周すると、ベンチで両手を何度もたたく阿部監督が目に入る。最前列で目尻を下げた指揮官と、歓喜のハイタッチを力強く交わした。
4月29日から始まったゴールデンウィーク9連戦。全試合スタメンだった甲斐の疲労と今季初先発するグリフィンとの相性が考慮され、出番が回ってきた。「すごい緊張感の中で挑みました」と武者震いも、阿部監督に「緊張は大いにしていいんじゃないか。緊張しなくなったら終わりだし、去年やってきた自信を持ってやっていこう」と声をかけられ、腹をくくった。1点を先制した3回2死二、三塁は外角チェンジアップをしぶとく中前へ運び、2安打2打点。守っては「グリフィンの投球は分かっているつもり」と昨季15試合でコンビを組んだ相棒を6回無失点の快投に導いた。
昨年は自己最多の88試合に出場も、今季は出番が激減した。ベンチを温める日々が続いても「いいところは吸収してやっていきたい」。甲斐がびっしりと書いたノートを基に投手とコミュニケーションをとる姿を「悔いの残らないようにやっている。自分も勉強させてもらった」と目に焼き付けてきた。
決意は行動にも表れた。4月25日からの阪神3連戦(甲子園)の試合前練習は右翼、同29日の広島戦(東京D)の前は、中山からミットを借りて一塁でノックを受けた。
9連戦は3試合を残して4勝1敗(1試合は雨天中止)。阿部監督がGW前に掲げた「5分」の目標を達成した。3月には侍ジャパンに選出された男がベンチに控える選手層の厚さが、阿部巨人の強みになっている。「去年はたくさん試合を経験させてもらった。出た時にしっかりやらないといけないプレッシャーはありますけど、それをいい緊張感に変えてやれています」。正捕手の座もあきらめていない。首位を走るチームを、岸田が頼もしく支えている。(内田 拓希)
◆堀内恒夫さんのPoint「気持ちためて爆発」
フルカウントからチェンジアップに食らいついてタイムリーにしたのに続いて、真ん中に入ってきた失投を逃さずにホームラン。岸田は使いたくなる選手だよ。