2戦先勝制のチャンピオンシップ(CS)第2戦(5日)で、高橋藍を擁するレギュラーシーズン(RS)2位・サントリーが、4位の愛知を3―0で退け、昨秋開幕したリーグの初代王者に輝いた。フルセットの末に制した3日の第1戦に続く2連勝で決着。
パリ五輪前から左足首の違和感を抱えたエース・高橋藍のコンディショニングを支えたのは、元アメリカンフットボール選手で、サントリーの工藤建太S&Cコーチだった。
昨秋開幕の新リーグ。昨年10月から今年4月までに計44試合が組まれたハードな日程で、1シーズンの試合数は、藍が昨季まで在籍したイタリア1部セリエAの2倍だった。左足首の違和感とも向き合いながら戦い抜けた要因の1つは「ピーキング」だった。
工藤コーチが明かす。
「チームとしても長いシーズンを通して調子を維持するのは難しいため、波をつくりました。(藍ら)パリ五輪代表は調整が遅れていたので、開幕にピークは持って行けないと(首脳陣と)話しました。合流して1~2か月(昨年12月の)天皇杯で1回目、最終的にCS決勝に向けて状態が上がるよう逆算して、無理するところと、抑えるところを意識的につくってきました」
バレーボールでは足首にテーピングを巻くと感覚が変わるため、固定するのを好まない選手も多いという。左足首に違和感があった藍も、開幕時は固定しない方法を考えていたが、予防としても両足首に巻いた。また、患部周辺の筋肉の強度を上げる地道なエクササイズにも励んだ。
「グルグル巻きではなく極力薄く感覚を養うために(患部の)左だけでなく両足に巻いています。エクササイズは練習前に毎日3分程度。機能を目覚めさせる感覚です。例えば指を選択して親指だけを動かしたり、残りの4本の指だけを動かすことも。足首は内側にひねりやすいので、チューブを使って外側に動かすことも継続的にやってくれました」
シーズン終盤まで安定したプレーを発揮できたのは、トレーニング量が支えがあったからだ。週末に試合を見据えて、週に2度、火曜、木曜がトレーニング日に設定。藍自身「イタリアリーグ時代と変わらない」と明かすほど強度のあるメニューをこなし、スパイク時の跳躍力はシーズン開幕時と比べて約10センチアップした。
「彼はある程度トレーニングをやっていた方が、体の調子いいタイプ。年齢的に若いし、回復力もあるので、しっかり出来ていました。プレー中のジャンプ力は数値にも変化があって、藍選手自身もジャンプしてから『ゆとりがある』と。プレーの選択ができる、ゆとりができたと思います」
RSではアタック決定率日本人1位(54・6%)の全体4位。CS決勝第2戦では21本のアタックで、71・4%をマークした。
◆工藤 建太(くどう・けんた)1974年11月13日、千葉県生まれ。50歳。理学療法士と並行してアメリカンフットボールフットボールの選手として国内最高峰のXリーグ・アサヒビール(現・オリエンタルバイオ)でプレー。07年W杯日本代表。引退後、2017年~19年にプロ野球・西武のトレーニングコーチ(S&C)。21年からサントリーのS&Cコーチ。