◆報知プレミアムボクシング ▷ニューヒーロー第1回 日本ライトフライ級チャンピン高見亨介 

 空前の世界戦ラッシュを迎えている日本ボクシング界。スポーツ報知では、その盛り上がる波に乗って3つの企画を「報知プレミアムボクシング」と題しお届けします。

世界を狙う新進気鋭の選手にスポットを当てる「ニューヒーロー」(毎月第2火曜日)、過去の名勝負を取り上げる「激闘の記憶」(同第3火曜日)、ボクサーたちが語る「あの時」を再現する「後楽園ホールのヒーローたち」(同第4火曜日)の3本。「ニューヒーロー」の第1回は、日本ライトフライ級チャンピオン・高見亨介(23)=帝拳=を紹介します。すべてを兼ね備え、次戦での世界挑戦を狙う期待のホープです。

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 この大胆さが最大の魅力だ。4月8日の日本タイトル戦。チャンピオンの川満俊輝(三迫)に挑戦した高見は、圧巻の内容で6回TKO勝ち。プロ9戦全勝(7KO)で初の王座獲得に成功した。らしさが出たのはリング上での勝利者インタビューの時だ。

 マイクを手にした新チャンピオンが叫んだ。「会長、世界挑戦させてください」。青コーナー下の帝拳ジム・本田明彦会長へ猛アピールしたのだ。規律の厳しい名門ジムにあって、ここまで大胆に、人前で世界戦のお願いをしたのは初のケース。

ただ、本人は「KO勝ちした勢いもありましたが、記者さんたちの前で言った方が効果的かな」と作戦通りだったという。後日、本田会長からは「試合に関しての指摘はありませんでしたが、あのマイクでのパフォーマンスはよかった。あのやり方は利口だ」と褒められたそうだ。

 物おじしない性格をリング上で発揮した。ハードパンチャーの川満の動きを冷静に見抜き、時には熱くパンチを打ち込んだ。スピード、パンチの的確性とすべてで上回り、そして6回、チャンスどころでパンチをまとめ、一気にレフェリーストップに持ち込んだ。まさに、言うことなしの戴冠劇となった。

 「多くの観客がいて、多くの歓声を浴びる。その中で世界チャンピオンのベルトを巻くのが自分の中での最大の魅力」

 そのためにボクシングを続けている。幼稚園の年長の頃、兄が習っていたキックボクシングを一緒に始め、パンチの打ち方を練習したいと小学校2年でボクシングジムに通い出した。習っていたトレーナーがジムを辞めると同時に帝拳ジムに移り、田中繊大トレーナーの指導を受けた。中学1年の終わりだった。

 目黒日大高ではインターハイ、国体で優勝。パリ五輪の星と期待されながら大学への進学は選ばず、プロの世界を選択した。最大の魅力はスピードとカウンター。勝負どころでは回転の速い連打でフィニッシュへと持ち込む。田中トレーナーからは「基本的に『ああしろ、こうしろ』とかは言われません。自分の考えを尊重してくれます」と、2人は絶妙な距離感で10年以上コンビを組む。その田中トレーナーは高見を「リング上で相手によって戦略、戦術を変えられる頭のいい選手。性格が攻撃的なので、常に相手を倒そうという気持ちがあるのもの魅力」と評価する。

 ボクシングを始めた頃から目標は世界チャンピオンだ。その気持ちは日本タイトルを取ったことで、より強くなった。「世界への意識がさらに高くなった。できるのであれば、どこの団体でもいい。

早く世界のベルトを巻きたい」と言い切る。

 現在、帝拳ジムには日本、東洋太平洋、WBOアジアパシフィックの3つの地域チャンピオンが、9人在籍している。その他にも那須川天心が来月に世界前哨戦と、世界を狙うホープが続々と誕生している。

 「チャンピオンラッシュの波に乗ることができた。今度は自分が世界(チャンピオン)の火付け役になりたい。そこは先陣切ってやりたいと思う」

 いい意味での生意気さを持つ、頼もしい23歳。WBAでは世界ランク1位となり、7月の次戦での世界挑戦が濃厚となっている。(近藤 英一)

 ◆山中慎介氏の視点「川満戦で圧巻の実力を証明したが、私としてはデビューした頃から日本、世界チャンピオンになると期待していた。ボクシングスタイルに躍動感があり、スピード、テクニック、パンチ力すべてを備えている。大舞台でもひるまないメンタルの強さも持っている。これまで期待を裏切るような試合は一度もしていないし、世界は手の届くところにあると思う」(元WBC世界バンタム級王者、本紙評論家)

 ◆高見 亨介(たかみ・きょうすけ)2002年4月5日、東京・新宿区生まれ。目黒日大高でインターハイ、国体優勝。

アマ戦績は43勝4敗。22年7月にプロデビュー。25年4月に日本ライトフライ級王座を獲得。プロ戦績は9戦全勝(7KO)。身長165センチの右ボクサーファイター。家族は両親と兄、妹。

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