◆第30回NHKマイルC・G1(5月11日、東京・芝1600メートル、良)

 3歳マイル王決定戦の第30回NHKマイルCは11日、東京競馬場で行われ、9番人気のパンジャタワー(松山)が3着までタイム差なしの大激戦を頭差で制し、G1初制覇を飾った。橋口慎介調教師(50)=栗東=は06年にロジックで制した父・弘次郎元調教師(79)との親子制覇。

1番人気のアドマイヤズームは14着に沈み、3連単150万5950円の波乱決着だった。

  ゴール板を過ぎてからも無我夢中だった。歓声とどよめきが渦巻くなか、パンジャタワーの馬上で松山は勝利を確信できなかった。直線で外から豪快に脚を伸ばしたが、離れた内からマジックサンズが猛追。「正直、最後は必死過ぎてどっちが勝ったか分からなかったんですけど、ゴールして係の人から勝ってると聞いて、すごくこみ上げてきました。最高にうれしかったです」。3着馬までタイム差なしの頭、鼻差の大接戦でG1初制覇に導き、天にも昇る思いで胸が震えた。

 レース前に頭にあったのは、あくまでリズムを第一に運ぶこと。あらかじめ位置取りを決めつけず、11番枠からスタートを決めて、自然と10番手付近におさまった。「京王杯2歳Sを勝った時、外からいい脚で走ってくれていたので、伸び伸び走らせたいと思っていた」。鞍上のイメージ通りに直線は大外に持ち出して、あとは能力を信じて追うだけだった。

 2歳時はデビュー2連勝で重賞初制覇を果たしたが、続く朝日杯FSは伸びを欠いて12着に終わった。

状態自体は良く、マイルへの距離延長が敗因のひとつと考えられたなか、橋口調教師も「正直、距離はもたないかもしれないと思っていた」と半信半疑だったという。そこでレース当週は栗東・坂路で追い切るルーチンを変え、今回はCWコースで最終調整。追い切り以外の日でもコースで長い距離を乗ることを心がけ、心肺機能などを強化したことも功を奏した。

 タワーオブロンドンの初年度産駒で、現役時に1番人気で12着に敗れた父の無念を晴らし、産駒G1初勝利の勲章も届けた。前日のエプソムCをセイウンハーデスで制して2日連続の栄誉となった橋口師は、父の弘次郎元調教師が06年にロジックで制していたG1を勝利。指揮官は「勝ったぞ!って自慢します」と“母の日”に親への感謝を胸に刻んだ。

 将来の可能性は大きく広がり、馬主の深沢朝房代表オーナーは「次はスタッフ、調教師と相談しながらゆっくり考えますが、6月1日(日本ダービー)は捨てきれませんね。選択肢のひとつにあります」と語った。9番人気の低評価を覆した意外性のある走りで、もしかしたらと思わせてくれる。(坂本 達洋)

 ◆パンジャタワー 父タワーオブロンドン、母クラークスデール(父ヴィクトワールピサ)。栗東・橋口慎介厩舎所属の牡3歳。北海道新ひだか町・チャンピオンズファームの生産。

通算5戦3勝。総獲得賞金は1億8567万円。主な勝ち鞍は京王杯2歳S・G2(24年)。馬主は(株)Deep Creek。

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