◆第30回NHKマイルC・G1(5月11日、東京・芝1600メートル、良)

 3歳マイル王決定戦の第30回NHKマイルCは11日、東京競馬場で行われ、9番人気のパンジャタワー(松山)が3着までタイム差なしの大激戦を頭差で制し、G1初制覇を飾った。橋口慎介調教師(50)=栗東=は06年にロジックで制した父・弘次郎元調教師(79)との親子制覇。

1番人気のアドマイヤズームは14着に沈み、3連単150万5950円の波乱決着だった。

 開業10年目の橋口調教師は、トレーナーとして大切にしている“原点”がある。JRA通算991勝、重賞96勝(うちG1・10勝)を挙げた元調教師の父・弘次郎氏との忘れられない思い出だ。

 16年2月28日、定年引退のため阪神競馬場で最後のレースを終えた父が、帰りの車の隣の助手席で「満足した。悔いは一切ない」とつぶやいた声は、今も脳裏に焼き付いている。「僕もやめる時、こういう気持ちでいないといけない。本当にやり切った顔をしていた」と偉大な父から、一番大事な仕事への姿勢を学んだ。

 調教師試験合格前は助手として池添兼雄厩舎(23年春解散)に所属し、松山騎手とは同じ釜の飯を食った間柄だった。その鞍上は「もともと池添厩舎で育った2人。その橋口先生と取れたのはうれしいです」とタッグでの初G1制覇を喜んでいた。名伯楽たちの教えと絆が実を結んだ白星だった。(坂本 達洋)

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