◆大相撲 ▽夏場所初日(11日、東京・両国国技館)

 3月の春場所覇者で初めて綱取りに挑む大関・大の里(24)=二所ノ関=が白星発進した。先場所敗れた東前頭筆頭・若元春(31)=荒汐=にもろ手から得意の右を差して寄り切り。

2017年の稀勢の里以来、約8年ぶりとなる日本出身横綱の誕生へ、完勝で第一歩を踏み出した。初土俵から所要13場所で最高位をつかめば、輪島の21場所を大幅に更新し、年6場所制となった1958年以降初土俵の力士で最速の横綱が誕生する。

 快速相撲で圧勝した。大の里は立ち合いで若元春にもろ手で突いた。狙い通り得意の右をねじ込むと強引に前へ。左でおっつけて反撃の隙を与えず、先場所負けた相手を3秒8で退けた。「初日を落ち着いてしっかり対処できた」。八角理事長(元横綱・北勝海)も「これが大の里の相撲。圧力がかかっていたし、積極的だった」とうなった。

 初日が初の綱取りの第一関門だった。入幕後、初日に敗れた昨年名古屋場所と今年初場所はいずれも5日目を終えて2勝3敗。「序盤が良いと結果がついてくるが、(序盤が)ダメで優勝したことは一度もない」とポイントに挙げていた。

それだけに「(勝って)良かった」と胸をなで下ろした。昇進を預かる審判部の高田川部長(元関脇・安芸乃島)は「上々のスタート。楽しみしかない」と期待した。

 母の日だったこの日は、母・朋子さん(49)ら家族が国技館を訪れた。昨年の夏場所初日も現地観戦。2年連続で母の日に初日を勝った。大の里は「まあ良かったんじゃないですか」と照れくさそうに振り返った。

 朋子さんは地元・石川では倶利迦羅不動寺に、上京後は中央区の小網神社で恒例の「必勝祈願」を行った。「綱取りのプレッシャーはすごいはず。勝っても負けても言われてしまうのでまずは集中してほしい」と思いやった。場所後に予定するお礼参りでは「新横綱誕生」の報告を描く。

 場所前に体調不良となり、2日の稽古総見では横綱・豊昇龍に完敗。

不安を残したが、出稽古などで急ピッチで仕上げてきた。同理事長も「総見は元気がなかったけれど、本場所に合わせられる」とうなずいた。2日目は本割で過去2戦2敗の高安と対戦。先場所優勝決定戦を争い退けた相手との一番に「一日一番集中して明日また頑張りたい」。

 初土俵から所要13場所で横綱昇進なら輪島の21場所を大幅に更新。昭和以降では羽黒山、照国の初土俵から所要16場所を抜き最速横綱誕生となる。結果とともに文句なしの内容で最高位へと駆け上がる。(山田 豊)

 〇…大の里が母校の海洋高(新潟)から贈られた化粧まわしをつけた3つ目の優勝額が国技館に掲げられた。除幕式を見届けた同高相撲部の田海哲也総監督(64)は「感無量ですよ」と喜び、初の綱取り場所へ挑む教え子に「横綱に駆け上がってほしいけれど甘くない」と助言した。同高の元校長で、4月に初当選した糸魚川市の久保田郁夫市長(67)も一緒に観戦した。

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