歌手のHIPPYが19日、都内でメジャーデビュー10周年を記念した取材会を開催した。

 10周年を迎えた心境についてHIPPYは「35歳でデビューができて、そこから10年も続けられるなんて、とてもうれしい気持ちです」と笑顔。

デビューから数年は日の目を見ることができず「こんなにも必要とされてないのかと、心がすさむような感じだった」そうだが、「デビューしてからも事務所とかレーベルに背中を押していただいた」と感謝の念を込めた。

 転機はコロナ禍。2017年にリリースした「君に捧げる応援歌」が、大会が中止になった部活動に取り組む生徒の間で聴かれるようになりSNSで話題に。「知人から『SNSでお前の曲が広まっているぞ』と。広まっているシーンを見て感動しました」。20年、当時DeNAに所属していた倉本寿彦内野手が登場曲に使用したことで野球界にも広がり「いろんな野球選手に伝わって、同じ球団でも2、3人は曲を使ってくれていました」とうれしそうに振り返る。同年度にはプロ野球選手が使用する登場曲に、自身の曲が最も多く選ばれた。

 歌手活動の傍ら、被爆3世であることから地元・広島で毎月6日に行われている「原爆の語り部 被爆体験者の証言の会」に参加。「被爆された方のお話を聞いてるからこそ、歌への意味合いとか歌の作り方は変わったような気がします」

 活動を通して地元の見方が変わったといい「草木がなかった広島が、戦争を感じさせないくらい復興している。その景色を見る度に先輩たちの頑張りだと誇らしく思うようになったんですよね」としみじみ。「一番衝撃を受けたのは、夕焼けが嫌いっておっしゃってたこと。僕らにとっては癒やされるものだけど、戦争体験された方にとってはトラウマなものなんだって知りました」と明かした。

 6月14日には2枚目アルバム「ひろいしま」を発売し、地元・広島サンプラザホールで初となるアリーナライブも開催。ライブは「オレンジ」をテーマに掲げており、その理由について「広島で戦争体験された方が大嫌いなオレンジをみなさんであえて作る。未来へのオレンジを良いものに更新する瞬間を作りたいなと思ってるんです」と熱を込める。「すてきなオレンジでアリーナを染めたいなと思っています」。かけがえのない良い思い出をささげる1日にする。

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