◆大相撲 ▽夏場所13日目(23日、東京・両国国技館)
大関・大の里(24)=二所ノ関=が2場所連続、4度目の優勝を決め、横綱昇進を確実にした。大関・琴桜(27)=佐渡ケ嶽=を寄り切り、自己最長を更新する無傷の13連勝。
乾いた唇を舌で湿らせると大の里は、勝ち名乗りを受けながら大きく息を吐いた。2場所連続4度目の優勝で、第75代横綱の座を手中に収めた。「素直にうれしい」。表情は緩めなかったが、喜びが口をついて出た。「こんなに早く優勝するとは予想していなかった」。初の綱取りの重圧をはねのけ13日目での賜杯。初土俵からまだ2年、所要13場所での最速昇進を確実にした。
大関対決で“横綱”の強さを見せつけた。立ち合いで踏み込めず突き放されるが、素早く反応して前進。
日体大ではアマチュア横綱を含め13冠に輝き、二所ノ関部屋に入門。将来の横綱候補と言われたが、本人が「1回もない」と否定するように、横綱への思いを口にしたことはない。「(横綱と)言わないのは、やるべきことがたくさんあるから。まずは目の前のことをやらないといけない」。エリートと見られるが、父・中村知幸さん(49)いわく「雑草」。大の里も「小中高と結果を残せず、大学ではちょこっと成績を残しただけ」。大器は謙虚に、足元を見つめながら、出世街道をひた走ってきた。
現状に甘えることなく、常にアップデートしてきた。
ここで気は緩めない。「まだ終わっていない。残り2日を終えていい報告が聞けたらいい」。目指すのは12年秋場所の日馬富士以来となる全勝での横綱昇進だ。「全勝優勝をやってみたい」。大関昇進伝達式の口上で用いたのは「唯一無二の力士」。最高の形で夏場所を締め、24歳の逸材は大横綱への道を歩んでいく。
◆大の里 泰輝(おおのさと・だいき)本名は中村泰輝。2000年6月7日、石川・津幡町生まれ。24歳。小1から相撲を始め、新潟・能生(のう)中、同・海洋高を経て日体大。2年連続のアマチュア横綱に輝いた。二所ノ関部屋に入門し、一昨年夏場所で幕下10枚目格付け出しでデビュー。昨年夏場所で最速となる初土俵から所要7場所でのV。秋場所後には昭和以降で最速となる所要9場所で大関昇進。得意は突き、押し、右四つ、寄り。192センチ、191キロ。家族は両親と妹。
◆大の里の主な記録(横綱に昇進したときの記録も含む)
▽13日目の優勝 2015年初場所の横綱・白鵬以来。
▽初土俵からスピード横綱昇進 所要13場所の今場所後に横綱へ昇進すれば昭和以降では羽黒山、照国の初土俵から所要16場所を抜く。年6場所制となった58年以降での横綱昇進は輪島の初土俵から所要21場所を上回る。
▽新入幕からスピード横綱昇進 58年以降では大鵬の11場所を抜く所要9場所。
▽石川出身の横綱 73年夏場所後の輪島以来。
▽初土俵から全場所勝ち越し 横綱昇進は58年以降初。
▽大卒での横綱昇進 日大の輪島以来2人目。
▽二所ノ関部屋 元横綱・稀勢の里の現師匠が21年8月に荒磯部屋(同年12月に現部屋名に改称)を創設後初。
▽現役最多V 4度の優勝は現役最多。