テニスの4大大会の今季第2戦、全仏オープンが25日、パリで開幕する。元世界女王の大坂なおみ(27)=フリー=は、4日に閉幕したフランスのツアー下部大会で優勝。

苦手の赤土を克服しつつあり、前哨戦のイタリア国際でも16強入りし、調子を上げてきている。(構成=吉松 忠弘)

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 18日に閉幕した全仏前哨戦、イタリア国際で、大坂の戦い方は見事だった。4回戦で、赤土が得意な米国の若手選手に敗れたが、最終セットはタイブレイクの大接戦だった。苦手とする守備と忍耐がようやく身につき、赤土で大きな進歩を見せた。

 きっかけは、昨年9月から指導するパトリック・ムラトグル・コーチのアドバイスだった。4日に閉幕したマドリード・オープンで1回戦敗退。その後、同大会2週目に行われるフランスでの赤土のツアー下部大会出場を提案した。

 大坂がツアー下部大会に出場するのは2015年11月に愛知で開催された大会以来9年半ぶり。出場選手を見れば大坂は優勝候補の筆頭で、その重圧ものしかかった。しかし、5試合を勝ち抜き赤土の大会初優勝。続くイタリア国際も好調を維持し赤土自己最多の8連勝とした。

 昨年の2回戦で、全仏2連覇中のイガ・シフィオンテク(23)=ポーランド=に、最終セット5―3リードでマッチポイントを握った。

逆転で敗れたとはいえ、赤土で戦えるポテンシャルを見せた。今年こそ赤土での上位進出に期待がかかる。

 ◆大坂 なおみ(おおさか・なおみ)1997年10月16日、大阪市生まれ。27歳。3歳の時に大阪でテニスを始め、2001年に米国移住。18年全米オープン決勝でS・ウィリアムズ(米国)を破り、4大大会初優勝。その後も19年全豪、20年全米、21年全豪と4大大会を制した。自己最高の世界ランキング1位はアジア女子最高位。23年7月に長女シャイちゃんを出産した。180センチ。

 〇…1968年オープン化(プロ解禁)以来、女子史上初の4連覇に挑む赤土の女王シフィオンテクが今年、不振に陥っている。個人戦8大会に出場し、いまだに決勝進出がない。

得意の赤土も、3大会に出場し、マドリード・オープンの4強入りが最高。他の2大会は1試合勝つのが精いっぱいだった。今年から、大坂なおみを20年全米、21年全豪制覇に導いたフィセッテ氏がコーチに就任。新たな環境でプレーに磨きをかけているが、まだうまく機能していないようだ。歴史に名を刻む大記録を前に、強さを取り戻せるかに焦点が当たる。

 〇…23歳の内島萌夏が、赤土で大きな飛躍を遂げた。4日に閉幕したマスターズ大会のマドリード・オープン3回戦で、世界3位のジェシカ・ペグラ(31)=米国=を破り8強まで進んだ。日本女子がトップ3を破るのは2019年中国オープン決勝の大坂なおみ以来6年ぶりだ。自身初のトップ50入りも果たし、最も得意とする赤土で、上昇気流に乗っている。全仏は、昨年、予選を勝ち上がり初出場で4大大会初勝利を挙げた相性のいい大会だ。今年は堂々、本戦からの出場で、上位進出を狙っている。

 〇…西岡良仁は今年、左肩の痛みに悩まされている。

2月の米国の大会から3大会連続で勝ち星もありながら棄権や途中棄権。赤土シーズンに入っても、イタリア国際の1大会に出場しただけだ。それも、出場義務のマスターズ大会だったため、強制出場のような形だった。すでにパリ入りし、練習を始めているが「だいぶボールは打てるようになったが、まだ怖さがある」と、自身のSNSで不安を口にした。29歳と、充実の年齢だけに、できる限りの準備をして挑みたい。

車いす小田凱人&上地結衣、昨年パラリンピック金の地に戻ってくる

 〇…全仏と同じ会場で開かれたパリ・パラリンピックの車いすテニス金メダリストが、再び赤土の聖地に戻ってくる。男子シングルスには世界ランキング1位でパラ初出場初優勝の小田凱人(19)=東海理化=、女子シングルスには同1位でパラ2冠の上地結衣(31)=三井住友銀行=が、思い出の舞台で再び戦う。小田は全豪決勝で敗れた同2位のヒューエット(27)=英国=へのリベンジを、上地は5年ぶりの栄冠に挑む。

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