◆第92回日本ダービー・G1(6月1日・東京競馬場、芝2400メートル)
皐月賞馬ミュージアムマイルで日本ダービー・G1(6月1日、東京)に挑む高柳大輔調教師(47)=栗東=に、矢作芳人調教師(64)=栗東=、音無秀孝元調教師(70)、安田隆行元調教師(72)の師匠3人が“エール”を送った。
若き日の自分を見ているような感覚が何よりうれしい。
競馬への接し方も似ている。「あんなに海外志向が強くなるとは」と口にするように、24年テンハッピーローズの米ブリーダーズCマイル4着など、ここ3年で延べ10頭も海を渡った。その歩みは今年もフォーエバーヤングでサウジCを勝つなど、チャンスがあれば挑戦を続けた自らと重なる。「大輔は既成概念にとらわれないチャレンジャー。いい意味で感覚が違うんだよ。いかに普段通りの仕事をこなすかが大事なダービーでも平常心でいけると思う」と過去に2度(12年ディープブリランテ、20年コントレイル)勝った先輩は太鼓判を押した。
愛すべき人柄も知っている。「真面目なようで意外に面白いんだよ。北海道の牧場生まれだけど、『関西人かよ』みたいなね」。22年サウジCではテーオーケインズの枠順抽選直後、アラビア語で素晴らしいという意味を持つ「マシャラー」という言葉を壇上で連呼。
矢作調教師はホウオウアートマンを登録。3分の2の抽選だが、対戦する可能性もある。「うちが使えば、いいライバル」と前置きしたうえで、こう言葉を続けた。「自分が勝てないのなら、うちで修業した人にやっぱり勝ってほしいね」。DNAを色濃く受け継ぐ弟子の成長を見守り、互いを高め合う日々はこれからも続いていく。(山本 武志)
《音無元調教師は「常歩の大切さ」伝えた》
自身が培ったノウハウをすべて伝えた。音無元調教師が研修でともに過ごしたのは約3か月。「大輔には自分の考えは色々と教えましたよ。特に運動、常歩(なみあし)の大切さですかね」
教えは生きている。管理馬は坂路脇の角馬場を中心に、調教前後の運動にしっかり時間をかける。朝一番は坂路監視員が待機する「坂路小屋」から肉眼で、またはモニター越しに愛馬の様子をチェック。
ミュージアムマイルの強敵はクロワデュノール。馬上にはフリーになった07年から約7年、音無厩舎の調教を手伝ってきた北村友がいる。「大輔にはこれから何度もチャンスはあると思うし、いつも通りにやっておけばいいよ。友一の馬は強いと思うぞ」。調教師と騎手。二人の弟子が“競演”する祭典の舞台を温かく見守っている。(武)
《安田隆元調教師「とにかく真面目。仕事に几帳面でした」》
安心して、仕事を任せてきた。高柳大師が助手時代の05年から約12年間、所属したのは安田隆厩舎で、ダートでG1級4勝のトランセンドなどを支えてきた。安田隆元調教師は「とにかく真面目。出遅れたりする(遅刻する)ことはなかったし、仕事に几帳面でした」と当時を懐かしそうに振り返る。
高柳大師が調教師免許を取得した17年。安田隆師にとっては自身の息子で、同じく厩舎を支えてきた翔伍助手も試験に合格した。「一度に二人も助手が抜けるので大変でしたけどね。うちの息子と家族付き合いもしていたようですし、いいチームだったと思います」
息子翔伍師に続く戴冠へ! 昨年の日本ダービーは翔伍調教師がダノンデサイルで頂点に立った。そして、今年はもう一人の弟子が皐月賞馬を送り込む。「二人ともクラシックを勝つなんて誇りに思います。2年連続でダービーを勝つとなれば本当に夢みたいです」。再び歓喜の瞬間が訪れることを誰よりも待っている。(武)