◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 Bリーグ初の東大出身ヘッドコーチ(HC)を取材して約1年。B2ベルテックス静岡の森高大(たかひろ)HC(35)と毎週のように会うのが楽しみのひとつだ。

頭の回転の速さや記憶力の良さに感心するばかりでなく、丁寧に説明してくれるため、野球部出身の私には勉強になっている。

 特に語学力には舌を巻く。練習では選手に英語で指示を出し、隣にいる通訳が日本人選手へ日本語に訳す。「日本語で話すと、通訳されるまで外国籍選手がポカーンとしています。彼らに伝えるには、僕が英語で話すのがスムーズ」。なるほど、逆転の発想か。

 香川出身で高松高から東大に進学。母が教師でバスケの指導者だった影響で小さい頃に競技を始めたが、目立った選手ではなかった。卒業後は英語の教師になって母と同じ道を歩むつもりだったが「母校で教育実習をしていた時、生徒に比べてあまりに英語が拙くて恥ずかしかった」。語学力を高めるため米国へ留学。母から「勉強だけではつまらないからバスケの勉強もしてきたら」と言われ、ウエストバージニア大大学院でコーチ学を専攻したことで運命が変わった。

 本場でバスケを学び語学堪能な男がいる、といううわさがB1・A東京の関係者へ届き、誘われた。

A東京や日本代表でアシスタントコーチ(AC)を務め、有能な仕事ぶりが評判を呼んだ。「なぜHCをやってみようと思ったのか」と質問したことがある。「一流のACを目指そうと考えました。でもHCから見てどんなACが有能かは、HCをやってみないと分からないから」。その解答に思わず、納得した。(バスケットボール担当・塩沢 武士)

 ◆塩沢 武士(しおざわ・たけし)1993年入社。静岡支局でBリーグや高校野球など幅広い競技を取材。

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