日本相撲協会の諮問機関、横綱審議委員会(横審)が26日、東京・両国国技館で開かれ、夏場所で2場所連続優勝した大関・大の里(24)=二所ノ関=を、満場一致で横綱に推薦し、第75代横綱への昇進が確定した。審議は5分で終了した。
入門から最速記録を塗り替えまくった唯一無二の横綱が誕生する。会見した大の里は「本当にうれしい。少しは横綱への実感が湧いてきた」と感無量の表情を見せた。理想の横綱像については「日々勉強して考える必要がある」と抱負を述べ、3場所連続優勝がかかる7月の名古屋場所へ「横綱に似合うような心構えを作らないといけない」と引き締めた。
部屋の玄関には師匠の二所ノ関親方が現役時代につけた綱と横綱推挙状が飾られている。掃除の際に眺めており「綱や『品格力量抜群』と書かれた推挙状は横綱しかもらえないもの」と重みを感じ、憧れた。成績を残せなければ引退しかない最上位の地位だけに「楽しむ番付ではない。責任ある立場」と覚悟を述べた。
横綱土俵入りには不知火(しらぬい)型、雲竜型がある。雲竜型だった師匠とは「話を全くしていない」と話すにとどめた。優勝後に連絡をとった海洋高(新潟)時代の恩師、村山智明さん(46)はスポーツ報知の取材に「私から聞いたら、本人は『雲竜型がベースになると思う』と話していました」と明かした。一方で「両手を広げる不知火型は大きい人に映えるという話もしていました」。
当面の目標は打倒・豊昇龍。前日に自身初の全勝を阻止された豊昇龍の初場所後の昇進が刺激になったといい「僕に火を付けた。越えなければならない壁」と対抗心をあらわにした。名古屋場所からは2横綱となり、不戦勝を除いて1勝6敗の豊昇龍とは千秋楽の結びの一番でぶつかることになる。大の里は「ライバルというか越えなければならない壁だと思っている」と意気込みを語った。
スピード出世の「唯一無二の力士」は、28日の横綱昇進伝達式での口上は「今のところ考えていない」とした。昨年秋場所後の大関昇進伝達式での口上は「唯一無二の力士を目指す」だったが、同じ四字熟語は「もう使ってしまったのでそこまで深くは考えていない」と大の里。底知れない可能性を秘めた日本出身横綱が誕生する。
◆大の里に聞く
―横綱になる実感。
「全くない。部屋で昇進伝達式をできる喜びがある。綱を初めて締めた瞬間に分かるのではないか」
―口上は師匠と相談。
「新大関の時もリハーサルで親方に初めて披露したので、今回もしっかり自分で決めて明日のリハーサルで披露したい」
―横綱のイメージ。
「実際に木曜日(29日)に初めて綱を巻いた瞬間からいろんなものが込み上げると思う」
―しこ名の由来である元大関・大ノ里を横綱の地位に上げた意味合いも。
「(大ノ里の故郷である)青森・藤崎町で横綱になった報告できたら」
―地元・石川では輪島以来の横綱。
「雲の上の存在。少しでも近づきたい」
◆雲竜(うんりゅう)型 不知火(しらぬい)型と並ぶ横綱土俵入りの型。せり上がりの際に右手を伸ばし左手を胸の近くに当てる。綱の結び目は一輪。名前は第10代横綱・雲竜久吉に由来。