お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃん(48)はバラエティー番組での活躍だけでなく、アイドルプロデューサーや小説家など多方面で才能を発揮している。大学時代にアイドルを目指し、松竹芸能に入所するも、なぜかお笑いトリオとしてデビュー。
TBS系「水曜日のダウンタウン」(水曜・後10時)で出会い、約2年間交際した20歳差のリチさんとの破局が話題になったクロちゃん。約半年がたった今もプロポーズで渡す予定だった婚約指輪を小道具にし、イベントに出演している。
リチさんとの出会いは「水ダウ」の番組内オーディション企画「モンスターラブ」。恋人になる前はアイドルグループのプロデューサーとメンバーという関係だった。そんなクロちゃんが芸能界を目指すきっかけは「かわいいアイドルになりたい」だった。
幼少期から「ドラゴンクエスト」が好きで、将来の夢は「勇者」。高校3年時の志望校調査では第1志望から第3志望まで「勇者」と書いた。高校卒業後は「仕事はしたくなかった」という一方で、すぐに進学もしなかった。「もう何年かすると勇者みたいな仕事ができるかもしれないな」というのが理由だったと振り返る。
漠然と子どもに関わる仕事がしたいと考えるようになり、短大を経て大学の児童福祉学部に編入。在学中の教育実習で転機が訪れた。
同時に不安もあった。2浪の末、短大を経て大学に進学したことから「(両親に)いっぱいお金かけてもらっているし、さすがに大学やめてアイドルになりたいって言ったら、ブチギレられるんじゃないかと思って」と回想。いまだにもらっているという仕送りが止まることが何より怖かった。
それでも、芸能界への憧れは消えなかった。23歳の時、「笑っていいとも!」の一般参加型の企画に出演が決定。生放送前、母と3歳下の妹に「僕のやりたいこと、これだから見てて」と芸能界志望であることを初めて伝えた。
放送後、不安は的中。息子が教員になると信じていた母親が「あんなことさせるために育てたわけじゃない」と激怒していることを、妹から電話口で伝えられた。恐怖で2週間ほど連絡できなかったが、仕送りの不安から、勇気を出して母に電話。すると「あんたが思ったことだから、いいよ」と思いもよらぬ答えが返ってきた。
その裏には父親の存在があった。「コックさんになりたかったけど、家が貧乏で自分が長男だったから」と夢を断念した父は、同じ長男という立場のクロちゃんを温かい目で見ていた。「あいつが初めて自分からやりたいことを言ったんだから、30歳までは好きなことをさせろ」と母親を説得していたと後に知らされた。
地上波デビューで自信をつけ、勢いのまま松竹芸能を受験し、合格。入所当時はアイドル部があり、デビュー前のレッスンでは「ボイストレーニングとか作詞とか教えてもらえるんだろうなと思ったら、なんでネタ持ってこーへんねんって怒られた」と、まさかの展開に。「だまされたと思って。やめますって言ったら『アイドルユニット組ませてやるからちょっと待ってくれ』と言われた」
その後、クロちゃんの元にデビューの声がかかった。当時話題だった「モーニング娘。」などを想像しながら待ち合わせ場所に向かうと、団長安田、HIROがいた。
2001年に「安田大サーカス」結成。イメージとはだいぶ違う形でデビューを果たした。異色のトリオは程なくブレイク。クロちゃんはピンでも活躍の場を広げ、「水ダウ」で“クズ”っぷりが知られるようになり人気に。プロデュースやイベントなどアイドルと関係する仕事も増えた。
しかし、芸能界入りの原点である「かわいいアイドルになる」という夢はまだかなえていない。来年で50歳になるのを前に「松竹芸能に入った時に、アイドルになりたいからと親を説得したので、自分が歌を歌いたい」と意欲を見せる。
一方で「しっかり金を使ってもらって、歌を出したいですね」とニヤリ。アイドルになるため、特別にボイストレーニングなどはしていない。
仕事も恋愛もどこか他人任せなクロちゃん。念願のアイドルデビューする日はくるのだろうか。
〇…3月に4つの短編からなる恋愛小説「クロ恋。」(双葉社)を発売。婚約指輪代163万円を取り返す宣言を度々してきたが「まだ全然回収しきれないので、もっと売れてくれないと」と切実な思い。今後はプロデュースするアイドルグループ「豆柴の大群」のイベントでも販売。映画化も目論み「自分の好きなギャルのタレントをキャスティングしたい」とニヤけていた。
◆クロちゃん 1976年12月10日、広島県出身。48歳。本名、旧芸名は黒川明人。趣味・特技はピアノ、社交ダンス、詩を書くこと、カポエイラ(ブラジル発祥の格闘技)。アロマコーディネーターの資格も持つ。