WBO世界ウエルター級2位の佐々木尽が12日、東京・八王子市の所属ジムで王者ブライアン・ノーマン戦に向けた練習を公開した。過去の自身の等身大パネルをKOし、進化した姿をアピール。

ジムに現れた白蛇も吉兆と受け止め「ウエルター級日本史上初の世界チャンピオンになって歴史を変える」と力強く誓った。同級の日本勢の世界挑戦は6度目(5人目)で、国内での世界戦開催は1989年12月以来36年ぶりとなる。

 超異例のパフォーマンスを披露した。「過去の自分とスパーリングをしたいと思います」。佐々木はシャドーボクシングなどを行った後、リング上に自身の等身大パネル2体を並べた。まずは日本ユース王者のベルトを掲げた4年前のパネルと対戦。右ストレートでダウンさせ、右アッパーで追い打ちをかけた。続けて「こっちは1年前」と東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王者のベルトを掲げたパネルと対戦。左フック2連発で吹っ飛ばした。

 「やっぱり過去の自分は強くなかった。見ての通り動かないし、ディフェンスが甘い。あれじゃ世界では通用しない」とパネルに言いたい放題ダメ出し。

過去と決別すると「今はディフェンスも良くなった。あれ(過去)に勝ったから、やっと世界戦ができる。自分を超えないといけないと思った」と進化をかみしめた。

 “勝利の使者”も訪れた。今月2日、ジムの玄関前に体長1メートルほどの白蛇(コーンスネーク)が出現。古来より、白蛇は開運を運んでくる縁起のいい生き物と言われる。2001年生まれで巳年(へびどし)の年男でもある佐々木は「このタイミングですごくないですか。幸運をもたらすって感じで。『心配しなくても大丈夫だよ、勝てるから』ってあいさつに来てくれたのかな」と吉兆に声を弾ませた。世界戦のコスチュームも、巳年のラッキーカラーだという緑を基調にした。

 日本ボクシングコミッションのルールでは、ウエルター級の試合は10オンスのグラブで行われるが、今回はWBOルールにより8オンスのグラブを使用。佐々木は初体験だが「小さい方が素手に近くて、どこを打っても効かせられるイメージがあるので楽しみ」と追い風として受け止める。

「命より全然大切、ぐらいの思いでやっている。日本ボクシング界の歴史を変えてみせます」。勝てば現役最年少世界王者となる23歳が大一番に人生を懸ける。(勝田 成紀)

 〇…佐々木が地元・八王子市の期待も背負う。八王子駅改札前には3枚の巨大懸垂幕が掲げられ、駅構内の「つながルーム」には佐々木への応援メッセージを書くコーナーが設けられた。駅周辺の至る所に横断幕やポスターが掲示され、商業施設の大型ビジョンで試合の告知映像も流されている。ジム内には、母校・別所小の児童からの寄せ書きもあり、佐々木は「本当にうれしいです。力になります」と笑顔で話した。

 ◆白蛇は幸運の使者? 白蛇は古来より、希少性から縁起のいい生き物として信仰の対象とされている。金運・開運を呼ぶ神の化身として各地で様々な言い伝えが存在し、神社・仏閣で白蛇が祀(まつ)られている。

 ◆佐々木 尽(ささき・じん)2001年7月28日、東京・八王子市生まれ。23歳。

小学5年から中学3年まで柔道を習い、都大会2位。中学1年からボクシングも始める。ボクシングに専念するため定時制の八王子拓真高に進み18年8月にプロデビュー。20年12月、日本ユース・スーパーライト級王座獲得。23年1月、WBOアジアパシフィック・ウエルター級王座獲得。24年5月、東洋太平洋同級王座も獲得し2冠王者に。身長174センチの右ボクサーファイター。

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